未公開映画祭(3) 「ビン・ラディンを探せ! ~スパーロックがテロ最前線に突撃!」2010年12月07日 23時43分06秒

未公開の映画の中においても、見知った名前があることはよくあること。
そんな名前を見つけた「松嶋×町山 未公開映画祭」第3弾はこれだ!


「ビン・ラディンを探せ! ~スパーロックがテロ最前線に突撃!」

■作品紹介
 http://www.mikoukai.net/003_where_in_the_world.html

 原題:Where in the World Is Osama Bin Laden?
2008年 アメリカ (93min)
 監督:モーガン・スパーロック


モーガン・スパーロックという名前にピンと来た方はオメデトウ、
あなたは結構な変な映画好きの素質があると思います。
いや、そうでもないかな(どっちやねん)。

彼の名を日本に知らしめた一本のドキュメンタリー作品、
それが2004年に劇場公開された「スーパーサイズ・ミー」。
これはスパーロック自身がその身を持って検証した記録で、
30日間1日3食をマクドナルドのメニューで済ませてたら、
人間の身体はどうなってしまうのだろうか?を実証したもの。

スーパーサイズ・ミー 通常版 [DVD]
スーパーサイズ・ミー 通常版 [DVD]

実際にどうなってしまうのかは作品をレンタルで観て頂くとしまして、
その後、スパーロックは豊富なアイデアで数々のドキュメンタリーを撮影。
「刑務所で30日間」「不法移民と30日間」「無神論者と30日間」
「ニューエイジ体験を30日間」「アウトソーシングを30日間」
「人工中絶論争を30日間」etc・・・

基本的には自分自身が身を持って検証するというスタイルで、
件の「スーパーサイズミー」では医師、栄養士さんを依頼して望む姿勢と、
それをそのまま笑いに持っていくセンスを持ち、
肥満事情等の派生事項に対する考察も交えるなど、
ただのおふざけ企画とは違う何かを感じさせてくれるのですが・・・
やや胡散臭い様にも思えるのもまた魅力でもあります。

一時期はそれらのDVDがTUTAYA等でも1コーナーを形成するなど、
スパーロック旋風が吹き荒れたものですが、あの人はいま。

と思ってたところにこの映画でした。
タイトルの通り、アメリカを飛び出して彼は中東に飛び、
ビン・ラディンを捕まえることに挑んでいたらしい。

彼には子供を授かり、それによる彼の中での意識の変化があり、
子供の未来のためになることはなんだろう?安全な世界を作ることだ。
それには?色々考えてビン・ラディンを捕まえることに至ったそうな。

さあどうですか。胡散臭さがまた漂うではありませんか。いいなあ。
そういう本気で言ってるのかネタで言っているのか微妙な線が。


さて、冒頭から「これを本気で探している人達(ビン・ラディンを)が観たら
ブチ切れるだろうなあ」と思わせる悪ふざけ場面の連続でございます。
ビン・ラディンにM.C.ハマーの"倦怠期です"もとい「U Can't Touch」を踊らせ、
ビン・ラディンを倒せ!格闘ゲーム映像をわざわざ作成する悪ノリ。
そしてあらゆる予防接種を受け、語学と護身術を学び、いざ中東入り。

ふざけてるのはほんの少しなんですが、軍の人達は青筋たてちゃうかもなあ。
米政府を生ぬるいとか避難してるわけでも嘲笑してるわけでもないのですよ。
そういうところがスパーロックの誤解されやすいところかもしれません。
まあ、僕はむしろそんなところが大好きですけどね。

ドキュメンタリーは二種類に分けた場合に、
記録対象を静かに見つめできるだけ干渉しない方法、
記録対象と積極的に関わることで反応を捉える方法
という分類があると思います。
対象となるものにどちらが適してるか、どちらの手法が優れているかというよりも、
撮影者のパーソナリティによって適不適があるのではないかと最近思います。

スパーロックは後者(自分自身を投げ打った体当たりですからね。)ですが、
今回はインタビューの仕方によってもその方法が現れていると思います。
彼は現地で、地位のある人物から道行く一般市民まで様々な人物と
インタビューを重ね、自分自身をも相手に晒していく。
その中で強硬な人達からは追い払われることもありますが、
概ねは穏やかに笑顔を交えながら溶け合っていく。

スパーロックの持ち味はそんな人懐っこさにあると思う。
じっと静かに捉え続けるやり方は彼の性分に合わないのだと思う。
なんでも自分の身を持って体験し、その身体と心で感じたことを"真実"と思う。

ときとしてそれは強い思い込みを招く危うさもあるのですが、
今この現在、誰かが伝えてきた情報を100%信頼して"真実"と思うことに
比べれば、彼のやり方と信念は見習うべき点もあると思う。

今回彼の辿り着いた答えは、ビン・ラディンは見つからなかった(当然だが)、
しかし、その途中で出会えた中東の人々は、-みんなテロリストと思っているが-
実際に会って話をすれば素敵な人々だった、というものでした。
それは人によっては、何を今更、今頃気づいたのか、と陳腐に映るかもしれませんが、
これは、その身を持って経験したと答えだということが重要なのだと思う。

無論、現地に行って観なければ分からないという思いに駆られて旅たち、
危険な目にあった方もいたと思いますので、スパーロックの挑戦を誰もが
できるとはいえませんが、とくにアメリカに住む人間が行ったということでは注目。

これからも体当たりし続けるでしょうスパーロックに乾杯。
でも、子供と奥さんに心配かけちゃ駄目だぞ!

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