それぞれの映画愛のかたち~ インディーズ映画上映会「Bang!」2012年11月09日 12時09分56秒

はずかしながら、帰ってきました(以前にも何回か言ったような・・・)。

本当に久し振りのブログ更新となりました。
気にはなっていたのですが、今年は夏前から本当に忙しくほぼ休止と腹をくくっていました。
それにしても、何の予告なしにパッタリと中断はいけませんね。
コメントをくださった皆様、今日はじめて読ませていただきました。
何ヶ月も見ていなかった状態でお返事できず申し訳ありませんでした。

4月4日の更新より半年以上、自分の環境がいろいろ変わりました。
最近それがようやく落着いて軌道に乗りかけてきたところです。
その話はおいおいするとしまして、今日から3日間、友人のイベントをお手伝いします。
Bang!

仙台駅から徒歩数分のところにある、街なか映画館「桜井薬局セントラルホール」。
明日、そこを会場にインディーズ映画の上映会「Bang!」が開かれます。

上映作品
「ENCOUNTERS」(ゆったり版) 監督:飯塚貴士
「へんたい」 監督:佐藤周
「夏に生れる」 監督:村上賢司
「フジカシングルデート」 監督:村上賢司

とくに、アクション、ホラー、ファンタスティック!特撮が好きな人にはたまらないラインナップです。
どれも国内外の映画祭で上映・受賞経歴ありのツワモノ揃い。
そして、監督は全員当日ご来場。
さらに、三池監督作品などの批評で活躍するライター、トム・メスさんがトークに登場。
各々のあふれんばかりの映画愛が炸裂すること必至。
楽しみでたまりません。
映画お好きなかたはディープにお楽しみを、映画ビギナーのかたは未知の世界をのぞいてみましょう。

「ENCOUNTERS」(ゆったり版)は、2011年の仙台短篇映画祭での上映より10分長い30分版。
映画祭で見たよ、という人もまだ見ぬ真実に触れるときです。

日時、タイムテーブルは以下の通り。

2012年11月10日(土) 19:00開場/19:20開始

タイムテーブル
19:00 開場
19:20 第1部上映開始
20:20 トークその1
20:50 (休憩)
21:00 第2部上映開始
22:45 トークその2
23:20 終了予定
※途中入退場可。ただし、23:00になった途端、ビルのセキュリティシステムが作動し、
ビル外からシアターへの入場は一切不可になるとのこと!

↓作品詳細、監督プロフィール、予告篇、チケット情報はこちらから。
http://aogp.web.fc2.com/bang01.html

東京都内にて、仙台短篇映画祭311映画制作プロジェクト作品『明日』公開中!!2012年04月04日 23時47分18秒

昨年、仙台短篇映画祭にて
仙台短篇映画祭 311映画制作プロジェクト作品『明日』
というオムニバス作品が公開されました。

昨年3月11日。
あの大地震でボロボロになったメディアテークのシアターとともに、
仙台短篇映画祭実行委員会でも、9月の映画祭開催ができるのか、
そもそも開催しても良いものなのか苦悩の日々が続いていた。

そのいきさつは映画とともに制作されたパンフレットに掲載された
実行委員と、映画監督・冨永昌敬監督のそれぞれの原稿に詳しいが、
その意気消沈のなかで、「映画を作りましょう」という話がでてきた。
監督ひとりひとりに映画を作ってもらい、それを繋げて一本の映画にする。
尺はひとり、3分11秒。

これまで仙台に縁のあった監督達に呼びかけるとぽつりぽつり、
そして瞬く間に快諾の反応がかえってきた。
もちろん、気持ちの整理が付かず、いろいろな事情で制作を断念した監督もいた。
その気持ちも痛いほどに感じられた。

最終的には41人の監督が結集した。
尺はエンドロールも入れてなんと137分。超大作と言っても良い。

それぞれの作品は仙台だけではなく、岩手、福島への想いも籠められている。
こんなにも想ってくれている人達がいるという、
日本に「キズナ」という言葉が広がる少し前のこと、
それを実感する出来事のひとつだったと思う。


そして開催された昨年の仙台短篇映画祭ではかつてない盛況となった。
会場での反応は様々だった。笑いもあり、涙もあり、正直「?」もあった。
それでも、日本中が何かを考えていたときに、ここでもまた、
ひとつの会場に多くの人が集って、そこから何かがまた生まれそうな、
そんなグツグツ煮立つような感覚があったのだ。

まだ奇跡は続く。
その後、各地から上映オファーが寄せられ、既に海外での紹介もなされた。
日本国内では20箇所以上の映画祭や映画館で公開されている。
そして、現在。

関東圏内では、各地の映画祭での上映のほかにも、
先日まで、映画館キネカ大森、横浜ブリリアショートショートシアターで、
現在は、東京都内の2つの映画館で3月31日より、
「ポレポレ東中野」、「トリウッド下北沢」にて公開中となっている。

ポレポレは明日で終了してしまいますが、
トリウッドの方では5月末までの長期公開予定。
ゲストも連日のように来場して、熱い想いを語って頂いています。

ぜひ、都内に近いかたはこの作品を観てください。
そして、この映画が作られた経緯の奇跡も感じて頂けたらと思います。

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〇ポレポレ東中野
3/31~4/6迄  21:00より
・東京都中野区東中野4丁目4‐1
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
3/31(土)
今泉力哉監督(『Mother said.I sing.Wife listens.』監督)
境 千慧子監督(『夜は明ける』監督)
遠竹真寛監督(『春江』監督)
朴美和監督(『ちょうちょ』監督)

4/3(火)
真利子哲也監督(『スポーツマン』監督)、佐藤良祐監督(『Carnival』監督)

4/4(水)
鈴木太一監督(『ベージュ』監督)、小出ミカさん、太田正一さん(『ベージュ』出演者)
日向朝子監督(『一枚の履歴書』監督)
冨永昌敬監督(『妻、一瞬の帰還』 『武闘派野郎』監督)

4/5(木)
堀江慶監督(『3・12』監督)

〇下北沢トリウッド
3/31~5月末迄※予定 12:30より
・東京都世田谷区代沢5丁目32‐5 シェルボ下北沢2F
http://homepage1.nifty.com/tollywood/
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光と空気のなかで ~「NINIFUNI」2012年03月30日 23時13分16秒


フォーラム仙台にて公開中の、
真利子哲也監督による中篇作品「NINIFUNI」についてのこと。

一人、車を駆り国道を直走り、やがて浜辺に辿り着いた青年。
その同じ浜辺にアイドルグループ"ももいろクローバー"の
PV撮影隊がやってきて、天真爛漫な笑顔をカメラに向ける。
撮影は快調に進み、青年の車が発見され・・・。

「NINIFUNI」=「而ニ不ニ」、仏教用語で「二つであって二つでない」。
深い含みを持っていると考えたくなる題名に反し、
上記の様に映画のプロットはシンプルに聞こえます。

しかし、実際の作品からはある人たちは激しい衝撃を受け、
またある人たちは自分の奥底に何かを静かに積もらせていった。

経産省・映画産業振興機構が主催となった「コ・フェスタPAO」のなかで、
若手映像作家3人がそれぞれ中篇作品を制作する「moviePAO」。
元々、そのなかの一篇として制作された本作は話題を呼び映画祭等で公開され、
"ももいろクローバー"が本人役で出演していることも重なって、注目を集める。
そして、遂に本作単独での一般劇場公開の運びとなりました。

なお、この若手映像作家3人の、他の2人とその作品は、
久万真路監督の「ファの豆腐」と、黒崎博監督の「冬の日」です。
「NINIFUNI」が群を抜いて素晴らしかったかどうかは、
他の2作品を鑑賞していないので、わからないですが、
「NINIFUNI」が印象に残る作品だということは確実に言えるでしょう。

何が残ると言えば、鑑賞した方々が皆驚嘆する、
主人公の青年役の宮崎将の台詞無き怪演の佇まいや、
ももいろクローバーの瑞々しくまた溌剌とした魅力、
それは疑いようが無く、山中崇に注目した見方も全く同感であります。
しかし、僕はもう一人の主役、この作品に映し出された「風景」が強く焼きついています。

前作「イエローキッド」は狭い空間での描写の多さに加えて、
登場人物達にひたすら肉迫していくドラマが印象に残っており、
それゆえの閉塞感、窒息感、焦燥感がこちらを包み込んだ。
それもまた作り上げた空間と空気感があればこそなのですが、
心の内奥に見る側の意識は向い、周囲の風景には向いませんでした。

「NINIFUNI」は前作の息の詰まる空間の印象から、
全く対照的で広大な世界へ、風と光の中へ開放してくれたかのよう。
画面奥に向う寂れた国道、遥か向こうに工場なのか霞んで見える荒地、
青天というに相応しいが寒々とした広大な空、etc・・・、

風景、空気、太陽の光、風、波・・・それなくしては、
宮崎将と、ももいろクローバーたちの、
風が吹き抜ける穴も、水と太陽に負けぬ眩しさもここまでなかったでしょう。
撮影場所と時間が違ったなら、今回と同じように演じたとしても、
当然ながら全く違った作品になったはずです。

例えば、「砂の器」で悲劇の親子の人生を描き出すシーンが、
日本の美しき自然と陽の光りとが絶対不可欠なものだった様に、
本作は、その風景と人物と漂う空気が一体となって作られたものだと思います。
波からは「大人は判ってくれない」ではなく、「晩春」を思い出した。

風も光も空気も、人間の都合などお構いなしに瞬間瞬間で変わり行く。
その瞬間を演技とともに掴みとれるかは、天気待ちや人工の雨や風、
ライティングをしても、最後は時の運が大きく作用すると思う。
「NINIFUNI」にはそんな幸福に巡り合ったような風景がいくつも登場する。
というよりもほぼ全編がそうであると思います。

キャンパスに描いた絵に空気感を表現するとき、人物を中心からずらし、
小さめに描き、風景の面積を広くとる方法がある。
技法ではあるが、人は空間の中で生きているという理でもあると思う。
だから映画の登場人物達も、美しい風景のなかでどこかざわつき、
輝きながらもときに寂しく、ゆえにある者は生き、ある者は退場する。

僕らはその風景から主人公の見ているだろう世界も感じ、また、
彼らの行く手に広がるほんの少し先あるいは遥か未来とも感じとる。
映画は一瞬を映像に焼き付ていくにもかかわらず、
それは、よせる波とさらわれる砂の様に少しずつ変わりゆく。

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