挑戦の狼煙 「スーパー・ハイ・ミー~30日間吸いまくり人体実験~」2010年12月14日 23時28分15秒

人の身体には未知の力が秘められている。
さて、その力はいかなる挑戦により発揮されるのか?


今日のドキュメンタリー映画は、
「スーパー・ハイ・ミー~30日間吸いまくり人体実験~」
原題:Super High Me

■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 http://www.mikoukai.net/020_super_high_me.html
監督:マイケル・ブリデン
2007年 アメリカ作品 (89分)


 吸いまくりって何を吸いまくるのさ。と、最初は煙草かと思いきや、
マリファナとのことでして、そりゃあ、タイトルにズバリ示すのは
この日本では憚られるのかなあ。

 そのタイトルと言えば聡明なる映画ファンの皆々様ならば、
「スーパーサイズ・ミー」を想起させるはずでありまして、
僕も最初はこれは日本側でパクリ邦題でつけたのかなあと思ったら、
「(スーパーサイズ・ミーを観賞して)30日間ハンバーガー食ってるだけで
映画になるならオレもやるぜ、30日間マリファナ吸いまくり。
タイトルは『スーパー・ハイ・ミー』。」などと言っており、
元からパクリかよ!と判明。

 大勢の前でそんな公言をしてしまったのは、マリファナ芸人のダグ・ベンソン。
マリファナ芸人とは?その名の通り、マリファナネタだけで芸をするらしい。
アメリカでもあまりいないらしいけども。ただ、流石の彼も最初は及び腰、
毎日毎日マリファナばっかりというのも未体験ゾーンの様でございます。

 毎日ではないにしても常用している人がやっても仕方が無いので、
彼はまずは30日間の脱マリファナ・禁葉生活を始めることにする。
その健康体の状態を基準として、マリファナ過剰摂取状態のときに
どのような身体的精神的変化が観られるかを検証するのがこの映画です。
医療用に使用されるマリファナは果たして人体に無害か害か?

 映画の前半部はこの禁葉生活を追っていき、後半部はいよいよ、
朝起きたらマリファナ、寝ても覚めてもマリファナマリファナ~を吸う。
そして医師の健康チェックや知能・記憶力テストを受けながら、
ダグは観客の前に立ち、芸人としてステージの仕事もやっていく。

 さてマリファナとは僕も身体を侵蝕する毒薬かと思っていましたが、
この映画の結果を見る限りは身体的には影響はあまりなく、担当医師も
「極めて健康体」との評価を下しています。ただし、計算などの面では
混乱が見受けられる(本人のそもそもの計算能力を考慮する必要はある。)

この辺りについては映画本編よりも、終了後にくっついている
町山氏の解説の方が「ほーお!」と唸ってしまったわけですが、
結果としては、我々の期待?とは裏腹にすこぶる健康なご様子。

 芸人が直観力と想像力を引き出すために薬物を摂取するというのは
よくある話で、ジョン・ベルーシなどの凄まじい逸話がありました。
ただし、今回のダグ・ベンソンが過去の偉人クラスの超高高度の芸を
披露できたかといえば、アメリカンコメディが嫌いでない僕にもよく分かりません。
その辺りは笑いの文化の違いを超えられないことが要因かもしれません。

 というのは、この人の禁葉状態と常用状態の違いがあまり伝わってこない。
芸が特別に面白いかと言えばそうでもないし、つまらなすぎるかとも言えない。
もう少し普通の人が挑戦すれば違った結果になったもしれないけれども、
それはそれで色々問題で、それこそ未公開どころかお蔵入りかお縄かもしれない。

 また、そもそもの火付け役「スーパーサイズ・ミー」との比較を考えた場合、
件の監督であり挑戦者のスパーロックは数々の検証の真偽はどうあれ、
その対象に対する馬鹿馬鹿しい検証を大真面目にやる姿勢がまず笑いになる。
さらに、アニメーションやときにおちょくりときにすっ呆けた巧みな編集で、
随所にセンスを発揮して同じことをやり続ける場合の転がし方が上手い。

 これに対して「スーパー・ハイ・ミー」はそもそもが上澄みを掬った
パクリ企画であるわけですが、それにしても映像の躍動に乏しく、
またこれと言って爆笑させるギャグが飛び出すわけではなく、そして、
マリファナに対する社会的政治的医学的な見解などの考察も中途半端です。

 最終日を迎えようとしたとき、突然に麻薬の一斉取締りが開始されるという、
ハプニングを挿入、場面は一点、たちまちマリファナ狂想曲の様を呈するものの、
そこでメッセージを刻みきれなかった感があります。


 思えば「スーパーサイズ・ミー」では観賞前から我々は頭のどこかで、
「あんなものが身体に良い筈は無い」という先入観を抱いており、
徐々にスパーロックの身体が蝕まれていくにつれ「それ観たことか!」と、
あれは、ある種、"不謹慎な期待"を持っていたのではないでしょうか。

 それに対して今回の「スーパー・ハイ・ミー」もまた怖い怖い結果を予想しつつ、
観賞してみたら、事実は意外に怖くなかったお化け屋敷ように、
肩透かしを食らったという感があるのではないでしょうか。
マリファナよりもそんな鑑賞者心理の方が怖いと思ってしまった。考えすぎか。

 しかし、町山氏も解説するとおり、マリファナがやる気を減退させ、
性に対して奔放的になる副作用もあるので、やはり身体的では無くとも、
街の環境や治安的な維持のためには肯定とは言い切れないだろう。
そして、この映画はあくまで一人の症例です。

 アメリカでは連邦法で禁止、13の州で医療用マリファナは合法とのこと。
この映画でカリフォルニアで撮影され、しっかり使用許可が取れました。

 良い子の皆はマネしちゃ駄目だぞ!
 マリファナでなくともなんでもやりすぎは良くないぞ。
 そして僕はほぼ毎日映画ドラマアニメ観まくり実験。
 それっていつもどおりじゃん!
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