猛る鬼神・麗しき戦女神 ~「マチェーテ」2010年12月01日 22時20分05秒

年内は劇場ではウルトラマンゼロと仮面ライダーしか見ない!と言ったものの、
「マチェーテ」がこちらで公開されるとなれば話は別だった。
年末&正月映画の大作もお上品なミニシアターをぶっ飛ばしても見たいのはこれだ!


■「マチェーテ」
  http://www.machete.jp/

「マチェーテ」は互いに兄弟の契りを結んだ(嘘)ほど仲の良い
クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスのコンビが、
かつて俺達が興奮したようなB級映画をつくっちまおうぜ!と、
溢れるガッツと純粋に歪んだ愛と欲望と本能を叩き込んだ
グラインドハウス企画で製作された「デスプルーフ」「プラネットテラー」の
本編開始前に劇場で流れた"B級映画風のフェイク予告編"として製作されました。

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その後、どうせだから「マチェーテ」を"ちゃんと"作品にしようぜ!と、
ロドリゲスが再び気力注入を開始し、あーだこうだ色々あって完成したのでした。

「マチェーテ」は主人公の名前ですが"山刀"の意味もあり、
家族を麻薬王に殺されたメキシコ連邦捜査官マチェーテが復讐に燃える、
山刀でバッタバッタと切り刻み銃でドタマをぶち抜く、ただそれだけの映画。

それだけの映画に、ロドリゲスの盟友ダニー・トレホが主演を演じるはともかく、
ジェシカ・アルバとミシェル・ロドリゲスのWヒロインに、
麻薬王役にスティーブン・セガール、悪政を敷く政治家にロバート・デニーロ等と、
頼もしくも如何わしき面々が顔を揃えられては観に行くしかないではないか。

タランティーノはグラインドハウスの後、如何わしくも前線に躍り出て
どこかB級を高みに押上げ奉ろうとしている様に感じられるのですが、
ロドリゲスはあくまでBはBだ、それ以上でもそれ以下でもないの精神で、
棚の隅でホコリを被る怪しげな作品を作り続けている様に思える。

さて、決して美男ではないがちょっとの可愛さと溢れる漢のフェロモン全開の大男
「マチェーテ」を初めとして、神父をやってる彼の兄も、
セガール一味もデニーロ一味も容赦なく敵を奈落に葬り去っていく。
もはや哀愁や美学すら無用と言えるけども、ただただアドレナリンが溢れシビレル。
逃走するデニーロが黄色いタクシーを走らせるなんつーのには失笑するけども、
そんなものは物の数ではない!と、僕らを刺激するヒーローは!


ミシェル・ロドリゲス、表の顔は労働者相手のタコス屋。
しかし、裏では伝説の"架空"の女闘士を作り上げ、メキシコ不法移民達を
助けるために組織活動を繰り広げるスーパーウーマンだった。
その彼女は一度、悪の自警団の狂気の銃弾に倒れる。

やがて、敵の本拠地にマチェーテがメキシコの同志達を率いて大乱戦になる、
そこへマチェーテが物語の冒頭で担ぎ込まれた病院の救急車が到着。
男性医師が仲間の手当てに、セクスィナース二人から悪漢共に銃弾の贈り物、
そして、後部の扉が開くとそこにはミシェルの姿が!

まあ、予告編で既にバレバレですけどね。
監督が死なないと言ったらどんなキズを負っても死なないでいい、
これぞ物語性もリアルもへったくれも無いB級精神ね。

灼熱の太陽と乾いた土煙と死の香りを運ぶ硝煙に浮かんだ、
気だるげなマナコとシャープな頬のラインに鬱陶しげに突き出る下唇、
その姿は美しき黒髪に褐色の肌、眼帯・上半身ビキニに二挺の獲物をかざし、
大地に降り立つとともに悪党どもに鉛玉と血の雨を降らせる!

ああ・・・、美しい・・・・(涙)。

なんと美しき戦女神!ああっ!!
今年のスクリーン・クイーンはアナタ様に決定!
前年は「チョコレート・ファイター」のジー・ジャーでしたが、
やっぱな!(←いろいろ深い深い含蓄をお察しくださいませ)
表は未だサラ・ポーリーとヴィッキー・チャオ嬢を崇拝ですが、
裏の麗しき女神はミシェル・ロドリゲス様です。
今回のあなたでご飯3杯いけます!!(←死んでくれ)

まあ、これです。何か1つたまらなく自分を刺激するものがあれば、
それは間違いなく自分の中では名作として燦然と輝き続ける。
昨日の「マッド・ムービーズ」と併せて敬意を表して。


最後になりますが、マチェーテの兄さんが教会で敵と対決する場面で、
アヴェマリアの美しき教会歌が流れ、戦いの末に彼はイエスのもとへ。
この曲を自然や歴史、人の愛を引き出すことに使いつつも、
何かを根本的に間違えたがためにときとして醜悪ささえ漂わせる作品がある一方、
この血と暴力と殺戮とエロスに満ち満ちた「マチェーテ」で流れる
アヴェマリアの調べに乗せ死への片道切符を手にした神父が向う先、
墓標に手向ける献花としてなんと美しく品に満ちていることだろうか・・・・。

この星の明日のためなのか2010年12月02日 21時31分22秒

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さてさて、「スーパーロボット大戦L」が発売してから一週間。
仕事と映画とその他なんたらかんたらに埋もれつつも間隙を縫って
地球を救う使命を帯びて人に隠れて悪を切っています。


このシリーズは来年でいよいよ20周年。
15周年記念のCDアルバムを買って
水木のアニキと握手して頂いてからもう既に5年ですか。

来年の20周年に向けては何かいろいろ企画を用意しているとの発言が
バンダイナムコゲームスよりありましたので、
イベントや感謝祭はもちろんのこと、いよいよそれは
当然に来たるべき据え置きゲーム機での新たなる開戦、
「Z」以来の本来のというとおかしいですがそういう作品でしょうか。
もうWiiの「NEO」も番外編的な扱いとみて良いでしょうか。
(まあ何が番外なのかはもうはっきりしなくなってますけどね。)

僕自身とシリーズの付き合いは「第3次スーパーロボット大戦」からなので、
20周年ではないのですが一応はシリーズ全作と付き合ってきました。
あの頃はこんな長寿シリーズになるとは夢にも思わず。
一時期はライフワークにもなっていたもので、今でも愛する想いは変わりません。
(コミックやアニメ方面はカヴァーしきれていないです・・・あくまでゲームだけ)

この作品がアニメーション文化に影響を与え、そこから僕も影響を受け、
それを介した様々な人との出会いもまたあり、
やがて人生における大きな割合を占めていることは確かです。
(人それを、人生を狂わされたと言いますが。)


そんなわけでなにかブログでしていこうかなと思う今日この頃。
全然たいしたことではないですけど、それはまた、来週もこのチャンネルに。

シリーズ・VHS観賞(仮題)第2回 「アステカ・アドベンチャー/ 宇宙の秘宝」2010年12月03日 23時30分39秒

さて、レンタル落ちVHSを観賞していこうという、シリーズ第2回。
なんだかラーメンの麺も具も食い尽くしたスープの海から
一欠けらの麺を掬うような心境になってくるんだなあ(?)。
今回の作品はまあパッケージとタイトルからクラクラしてきます。

「アステカ・アドベンチャー/宇宙の秘宝」
原題: TOP LINE
1987年作品 92分

<キャッチ>
宇宙からの"目"があなたを見つめている!

「ロマンシング・ストーン」「ターミネーター」「エイリアン」の
すべての面白さを満載!!"どんでん返し"が連続する
SF・ホラー・アドベンチャーの極め付き!!

地球はすでに支配されている!?
スクープを掴んだばかりに宇宙規模の大事件に
巻き込まれたジャーナリストの運命は

「アステカ・アドベンチャー/宇宙の秘宝」なんだか
「宇宙の秘宝/アステカ・アドベンチャー」なんだか
このロゴの形だと副題の方が本題の様な気もする。
そもそも"アステカ・アドベンチャー"という聞いたことない響きにゾクゾクします。
しませんか?しないでしょうねえ。

なんともパッケージ表面からして如何わしさ満載でございます。
一番右下にいるのはゾンビではありません。ロボットです。
ええ、これが「ターミネーター」的部分なのだと思います。
って、3作品の面白さが詰まったなんてそんなことはハナから信じません。
宣伝のためにやりたい放題つけられたキャッチを本気にするもんですか。
そんな最強超獣ジャンボキングみたいな映画は存在しません。

若い人には「ロマンシング・ストーン/秘宝の谷」が分からない人もいるかも。
ロバート・ゼメキス監督&マイケル・ダグラス主演の冒険映画で、
南米のジャングルで巨大エメラルド争奪戦を繰り広げる話ですが、
覚えているのは悪い軍人がワニに手首を食いちぎられるというシーンだけ。
映画が埃をかぶったのはその後のダグラスの素行だろうなと思ったら、
BDが発売されていて「ロマンシング・ストーン」に乾杯などという
特典映像までついていたのには面食らった。確かに作品は面白いのだけど。

脱線しましたが、「ロマンシング・ストーン」はまあ舞台がコロンビア
という共通点から来たものでございましょう。
あと、アステカ文明のナイフを発端にした冒険映画というところ。

ストーリーをザクッと。
主人公のジャーナリストがアステカのナイフを友人から入手して
その発見場所の洞窟に行くと、そこには地球外の技術で作られたUFOの様な船があり、
こいつは特ダネになるぞと思ったら、周囲で奇怪な殺人事件が発生し、
主人公は警察からは殺人容疑で指名手配され、謎の敵からも狙われる。
特ダネをモノにしてUFOの存在を世界に発表したいところですが、それどころではない。
ヒロインと共にコロンビアのジャングルと村を駆け回る逃走劇!!
黒人の子供達に追われるんだか一緒に走るんだかなんだか意味不明なシーンもあるけど、
序盤の方はミステリアスな事件と、カーチェイスありと進んでいきます。

ところが「ターミネーター」を"3倍に薄めたような"くだんのロボットが現れます。
シュワちゃんなら怖いけどランス・ヘンリクセンは怖くないなあという様なもんです。
シュワちゃんは業火に焼かれて人工皮膚が溶けた正体を現し、
このロボットはロケット花火が顔に突き刺さって皮膚が溶けた正体を現す。

シュワちゃんは崩れた半分から覗く機械骨格の赤い光の目が不気味。
アステカのロボットは崩れた半分から覗く緑や青の配線と作り物の目玉。
その目玉が飛び出し気味に動くのだけど、ジェイソンに殺される被害者の
「ビヨヨーン」と飛び出す目ん玉そっくりにしか見えないよ!

襲われる主人公達は恐怖に怯えてるけれども、
ロボットが赤い服を着ているおかげで猛牛に突撃されて
胴体真っ二つの手足バラバラの首チョンパになってしまう。
おいおい、脆すぎないかい?

命からがらの逃走劇の果てに彼らの前に現れたのは離婚した元妻。
彼女は実は"エイリアン"であり、彼女達は1万2千年前から地球を開発し、
既に地球人の上層部に成りすまして入り込んでおり、
真に地球を支配しているのは自分達だというのでした。
1万2千年前にもう地球を乗っ取ってしまうことは考えなかったのかなあ。

だが、エイリアンとして現れるのも彼女一人きりで、ロボットも二体で規模が全然。
しかも自分からやってきて(主人公も虚を突かれてる)全部ばらす。
元妻はそれほど主人公を助けてくれるわけでも画面に頻繁に登場するわけでもなく、
"どんでん返し"のための意外性などこれっぽっちも用意されていません。
地球規模の陰謀を発表する重大な舞台がボートの夜の船室ではなあ。


主人公のアンジェロを演じるのは「続・荒野の用心棒」を初め、
マカロニ・ウェスタンで有名なフランコ・ネロ。
なのにもうパッケージの写真が小っさいですねえ。
もうフランコ・ネロじゃなくてゲテモノを前面に出して売ろうとしていたようです。
監督は「ジャンゴ/灼熱の戦場」のテッド・アーチャー。
その作品も1987年の作品であり、「アステカ・アドベンチャー」の音楽の端々に
マカロニと言えばの、口笛の音が散見されるのは偶然か必然か。

劇中、音楽は静かに流れ、コロンビアの青くも寂しげな空の下、
繰り広げられる逃走劇と謎のロボットとの対決においても、
この不思議な曲調の音楽が作品全体に奇妙な雰囲気を醸し出している。
音楽はわりと宇宙的神秘的で良いなあと思ったら、
エンドクレジットでウルルン滞在記の様な気の抜けた曲が流れてすっこけてしまった。
それが僕にとっての"どんでん返し"です。

何がいけなかったのだろう?お決まりの予算不足なのか?
大量のエイリアンとロボットとSFX効果を投入すればもっと先に行けたのだろうか?
いや、ジャングルと宇宙人とロボットがそもそも融合しないことに気づくべきか。
主人公の憶測妄想で突っ走って真実は全部敵に喋ってもらうという構成が無理か。
後に残ったのは奇妙な音楽と、そしてチープな配線剥きだしのロボットであった。
デロデロに溶解した暗がりに浮かぶ深緑のエイリアンはちょっとトラウマになるぞ。

壊れたロボットを観て呟くヒロイン。

「誰にも造れないわ」

「ロマンシング・ストーン」「ターミネーター」「エイリアン」
全てをあわせた究極のエンターテイメント、誰か造れるものなら造ってください。
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