「岡田劇場一五〇年」と「北の港のニューシネマパラダイス」2011年05月31日 23時06分16秒

「岡田劇場一五〇年」という本があります。

今回の震災で津波で流された石巻の映画館「岡田劇場」が
平成15年に150年の歴史を刻んだことを記念したときに、劇場の応援団体
「岡田劇場がんばれ会」によって編纂された、おそらく日本で最も、
岡田劇場の歴史について仔細に記され、そして150年受継がれた想いを、
一冊の本にあらん限り籠めた、唯一無二の本に違いありません。
(この本は一般に流通しておらず、がんばれ会に問い合わせる他ありません。)

岡田劇場の館主の歴史、劇場に通った人々の思い出語り、
ゆかりある有名人(例えば美空ひばり、三波春夫先生、ジャイアント馬場、
石ノ森章太郎、由利徹、鶴田浩二などなど)とそのエピソード、
そして映画と興行にかける岡田劇場の想い・・・。
どれをとっても、日本映画史に刻まれるべきものであり、
また、次世代に受継がれていくべき精神の結晶であります。

今回、不思議な縁あって岡田劇場さんに協力することになり、
非常に役に立っているのがこの「岡田劇場一五〇年」です。

正直なところ、僕が岡田劇場さんのことを人に説明するよりも遥かに、
的確にかつ魅力的にこの本が語っており、ぜひこの本を読んでください、
と実際に差し出して回っている次第です。

もうひとつ、岡田劇場について、自分の勉強になった資料は、
地元のミヤギテレビが1992年に制作したドキュメンタリー番組、
「北の港のニューシネマパラダイス」という番組です。

今から20年近く前の番組で、石ノ森漫画館も建っておらず、
シネコンすら少なくとも宮城県内には存在しなかったもので、
映画の斜陽期のほぼ底の部分という状況で作られたものだと思います。
古い番組ですが、これが幸運なことに僕の叔父が録画していたのでした。
ハンパない収集癖を持つ叔父に大変に感謝しています。

この番組は、映画にどんどん人が入らなくなる時代のなかにあって、
人々に映画を見せることを絶やすまいと、映画館の無い地域に、
積極的に映写機を担いで持っていって上映会を行う活動が、
映画を見る人々と岡田劇場の思いを追って丁寧に記録されています。

それに代々の菅原会長・社長親子の想いも縦糸として貫かれ、
過去から未来へ受継がれる貴重なDNAとして、
これもまた日本映画界にとっての宝というべき輝きを放っています。

一昨年だったか、かつて賑わった炭鉱町の映画館が、
やはり岡田劇場の様に巡回上映会の活動を熱心に行っており、
とくに子供達に映画を見せることを大事に想うという
その映画館の姿を丹念に記録した番組があり、
記録する側も、記録される側のどちらについても、
志を同じくした人々が日本のどこかに確かにいることを思い出させます。


この本とこの番組に触れれば、映画ファンはもちろん、
日本であっても海外であっても想いは同じになると思いたい。

大事なことは、これは在りし日の過去の記録ではないということです。
この本と番組に籠められた想いは、現在も着実に生き続け、
そして、以前にも増して力強く歩みだそうとしているのです。

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