静流河深

皆さんは買い物をいつも幾らぐらいするでしょうか。
クレジットカードをどれぐらい使用するでしょうか。
趣味には？食費など必要最低限のものには？
僕には真に耳の痛い話であります、
「イエスのショッピング　～買い物やめろ教会の伝道～」についてのこと。

■「松嶋×町山　未公開映画祭」作品紹介ページ
　　http://www.mikoukai.net/019_what_would_jesus_buy.html

原題：What Would Jesus Buy?
2007年 アメリカ （91分）
監督：　ロブ・ヴァン・アルケメイド

クリスマスまで一ヶ月の年末大商戦、プレゼント選びに勤しむ人々。
買い物客で賑わう大都会や郊外の大型施設で白いスーツで人々に訴える牧師。
ビリー牧師が呼びかけるのは「クリスマスに買い物をするな！」。
彼に賛同する聖歌隊ともにウォルマート、ディズニーランドへバス大移動。
人々に、プレゼントを贈るな！と訴えかけます。
「イエスは人々にこんな浪費を望んでいない！クリスマスの意味を考え直せ！」

この映画の中では詳しく語られてはいませんが、
ビリー牧師は本物の牧師ではなく、自称であり、
「買い物やめろ教会」も教会ではなく活動組織ということのようです。
どうりで、クレジットカードに悪魔祓いをしたりパフォーマンスがきつめで、
目を剥いてテレビに「覚悟しろ！ミッキーマウス！」と、狂信者的な見た目ですが、
彼の言っていることは間違ってはいないと思います。

「クリスマスには浪費する価値ありよ」という女性、
自分が貧しいかった分、子供には物を与えたいという母親。
物を与えること自体が愛情だと思う人々。
プレゼントに想いを籠めることは否定はしませんが、
よくあるアメリカのクリスマス風景で、
ツリーの前に何個もプレゼントとなるとクラクラしてきます。

本当に与えるべき愛情はなんだろう。

映画は、現状をイエス・キリストが見たらなんというか？
主は買い物をなさるだろうか？無駄な物を買ってはいないだろうか、
お金があって買うならばまだしも、カード負債を抱えながらも
クリスマスにあらん限りの消費をする人々に問いかけます。
彼にとっては大量の消費を生み出す源、ミッキーは悪魔の子なのです。

キリストはお金儲けをする人に対して唯一怒ったといいます。
ビリー牧師の信念には、キリストの信仰に纏わる部分がありますが、
同時にその大量消費から生まれる労働と経済の歪みをも憂いています。
プレゼントになる商品を作るための途上国に作られた工場。
その工場で低賃金、劣悪条件で過酷な労働を強いられる10代の少女。
愛情を籠めて贈られるその商品を作った彼女は、
自分のおかれている底辺の環境に"死にたい"と呟く。

アメリカで服を買う少女達に"生産国は？"と問いかけ、
彼女たちは調べ始めると、企業はノーコメント、無視。
ネットで調べるとバングラディッシュと出てきて、
労働者達のおかれた実態を突きつけられ言葉を失う。

そして、プレゼントの箱、包装紙、リボン等々の大量のゴミ。
小学校以下の子供達へのクレジットカードの刷り込み、
祭りの影で負の産物が送り出されていく。

僕とてクリスマスの意味を理解しているわけでもなし、
アメリカよりも日本での方が一層、本来の意味と離れていると思われますが、
確かに、この時期には妙な衝動が人を突き動かし、浪費をしやすい。
この映画を見ると、誰かに贈るプレゼントは、物か心か今一度問いかけ、
自分で使うものは、必要なものかを今一度考えるようになると思います。
高価であること、数が多いことを最上とするのは良いことなのだろうかと。

昨今では人にあげるよりも、自分へのプレゼントによりお金を裂くそうな。
そして後になってみてそれを見返したときに、気づくこともある。
自分のお金を無駄にするだけならばまだ良いかもしれないけども、
この映画を観ると、その無駄になった買い物をするためにも、
工場で働く人々の血が流されてることを思い出さざるをえません。

この辺りに関しては、同じく未公開映画祭の作品
「ウォルマート　～世界最大の巨大スーパー、その闇」
「マックスト・アウト　～カード地獄ＵＳＡ～」を併せて観ると、
また多くのことが伝わってくると思います。
不買よりも、と僕は言いましたが確かに立ち止まって
自分に問いかけることは必要です。

僕も"生きていくために本当に必要なものか"と言われると、
純粋に「生きるため」には必要の無いものが多い。
せめて無駄にだけはしない様に気持ちを締めていきたい。
まったく身につまされる話でございました。

それにしても本題からは外れますが、この映画に登場する玩具の売れ行きで
ゲーム機が日本と比べてアメリカでのX-box360の盛況なことときたら！。