日本の文化の未来2009年03月18日 22時08分00秒

全国の女子高生が待ち望んだかは知らないが、
多分、全世界で期待していた人は少ない、
麻生総理の支持率すらも下回りそうな勢いと思われ、
昔のシルベスタ・スタローン映画を鑑賞する
批評家の気持ちが分かった様な分からんような。
遂に来た「ドラゴンボール・エヴォリューション」。


さっきまで長大な記事を書き上げたところで
UP前にPCがフリーズしたことすらも、
フリーザ様が「いちいちカンに触るヤローだぜっ!!」と
映画の出来に激怒した呪いなのではないかと思える。

さっきの書きかけの記事こそ魔封波で電子ジャーもろとも、
海の底深くに葬り去られたか??


映画の出来たるや、もはや語る必要はないでしょう。
突っ込みや憤怒については私が言わずとも他の人が言っている。


「地球が静止する日」があるならば、私が静止する日もある。


それにつけても漫画や小説原作の映画化は、
もはや主流で映画オリジナル脚本を探すことの方が困難な昨今、
原作ファンから非難轟轟という映画は未だ少なくは無い。
その一方で、原作よりも強い感動を植え付け、
映画史に名を残し時代のアイコンになろうという映画もある。

今回の映画は長大な原作を1本に
(三部作構想があるようですが)纏めるタイプ。
日本では現在、「20世紀少年」がこれに取り組んでいます。
どれを捨てていくか厳しい選択を迫られるタイプです。

ところが出来上がった尺がなんと87分。短い!
いや、アクション映画では標準。セガール映画等でもスタンダード。
そこにドラマ性に厚みを持たせると、「ダークナイト」等のように、
120分前後の上映時間まで延ばすことになります。

では「ドラゴンボール」はアクションに特化したのか。
答えは全くノー。アクションの質自体もノー。CGのセンスもノー。
とにかく褒められるところを探すのは困難。

原作と映画を大きく変えても、芯がブレなければ納得もするもの。
では「ドラゴンボール」の芯はなんでしょうか。
おそらくアクションなのだと思う。全体から見れば。
強い奴が現れて、倒れて修行して、傷つきながらも勝利する。
そこに、不屈の闘志と仲間との絆という情念があった。

ただ、それが興奮を生んだのもフリーザ編までのような気がします。
後のセル編・魔人ブウ編はただ、ドラゴンボールらしいバトルだけを
場つなぎ的に展開させていったようなもの。
なんだかフュージョンやポタラでいきなりパワーアップして・・・。

「ドラゴンボール」がバトル漫画の様を呈してきたのは
最初の天下一武道会からだったと思うのですが、
まだピッコロ大魔王編は情念的な
感情の昂ぶりをもって読める期間だと思います。
そこを選んだのは良い。しかし、それは活かせなかった。
ピッコロ大魔王を倒す「つらぬけーっ!!!!」
「はじき返してくれるわーーーっ!!!!」というシーン。
大猿が悟空にダブり、ピッコロを貫く。
スローモーション、ストップ、音の無い世界。
おそらくそのシーンは再現した「つもり」だった。多分あれは。
しかし、情感は全く無かった。
これまでも散々観てきた、上っ面だけの
無味乾燥なアクションがあっただけだった。


しかし、擁護はしないがその「ドラゴンボールめいたもの」が、
漫画版後半の雰囲気を醸しているように感じるのは私だけでしょうか。
そこから考えるのはこの漫画、映画に対する少年ジャンプの姿勢です。

人気があればあるだけ連載を延長し、
作者が着地点を見つけたくても無理に引き延ばすと見られる体制。
鳥山明が「もうちょっとだけ続くんじゃぞ」と、
マジュニア編の最後で行ってから連載が終了したのはいつのことか。

「北斗の拳」もラオウ編以降は原作者達ですらも
何をどうやっていたか分からなかったという。
そして出来上がったのは、連載当初とは別物のような、
歯磨きのチューブの絞りカスみたいなものだった。

集英社はなんでもバトル漫画にする?
とまことしやかに囁かれたのはドラゴンボール以降のようにも思う。
段々ネタが尽きてきて、バトルにも意味が無くなっていく。
戦う意味を見失った従順な兵士のようなものか。
あくまで、噂も含めた話でのことですが。


その果てに生まれたドラゴンボール実写映画版は
なるべくしてなったのではないでしょうか。

漫画は日本の文化の誇れる一角である。
それは間違いないのですが。
それを守るはずのそもそもの著作者達は、
海外でこの文化を正しく伝え、破壊されないよう、
細心の注意をもって大事に育てて送り出すべきで、
それができないと判断したときには、
どんな契約締結条件があろうとも、
連れ戻す姿勢を持つべきではないでしょうか。

「ドラゴンボール・エヴォリューション」を鑑賞して、
映画の出来云々よりも、それを少し真剣に考えてしまうのでした。
鳥山明は苦汁の果てになんとか生み出した、
いかにも大人めいたコメントよりも、
堂々と激怒するべきだったのではないでしょうか。
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