あの男2009年03月03日 22時06分51秒

今日の休日も朝から仙台コロナワールド(泉ではない)、
セントラルホール、TUTAYA、と動き回りました。
過去3番目の暖冬、とか新聞では報じながらも
またなんか寒くなってきましたね。明日は雪ですってよ。


しかし、気温の寒さなど人生の寒さに比べれば大したことはない。
人生に嵐吹荒れる男の真実と虚構の映画、
「その男、ヴァンダム」についてのこと。

ヴァンダムとは、もちろん、ジャン=クロード・ヴァン・ダム。
かつて空手チャンピオンの名を引っさげて
ベルギー・ブリュッセルから渡米し、下積みから
1980年代、ハリウッド・アクションスターに上り詰めた男。

しかし、寄る年波には勝てず、体の動きは鈍り息も切れる。
良い仕事も減り、作品は劇場公開されずパッケージのみ。
4度に及ぶ結婚・離婚。積み重なる慰謝料。
娘の親権を巡る裁判の弁護料も払えない。
ついには金を払わなければ降りる!と弁護士がキレる。
気の乗らない作品のオファーを受けてギャラを前借りし、
郵便局に送金してもらい、下しに行ったら強盗に人質に捕られた!

腐ってもアクションスターなら強盗の2、3人なんて軽く・・・
おいおい!パシリに使われているぞ!
しかも、住民と警官はどん底のヴァンダムが
ヤケになって襲撃したと思い込み・・・


というのは映画の中の"虚構"のヴァンダム。
しかし、郵便局強盗疑惑と一部を除いて限りなく"現実"のヴァンダム。
ちょっと、現実のヴァンダム像を誤解しないか不安になるほど。
でも、ヴァンダム自身が製作総指揮を務め、
監督との厚い信頼関係を築いたと言うのだから感服の自虐。
いやいや、自虐を力に変えた繭からの羽化と言ってもいい。

もっとも、鑑賞しに行った動機としては落ち目のスターの
この面白すぎるシチュエーションを観たいという
極めて野次馬根性的な失礼なものであるのですが。
それでも、かつては「ユニバーサル・ソルジャー」
「ダブルインパクト」「サドン・デス」「ハード・ターゲット」等々、
1990年代半ばまでのアクションと言えば
意識しなくともヴァンダム兄貴に触れる機会は多く、
つい先日もTVで放送していた「ファイナル・レジェンド」を
結構面白く鑑賞していた次第でもあります。

ゲーム作品の映画化の「ストリートファイター」には、
「ドラゴンボール」に対する鳥山明並に「えっ?」と思ったものですが。


単にアクションスターの寿命を延ばすならば、
カメラワークやCG技術による"修正"手術でなんとかなる。
ジャッキー・チェン、スティーブン・セガール等は最近はこれ。

全盛期に伝説を作り上げた人間は強い。
シルベスター・スタローンは人生そのものが映画の奇跡となった。

アクション以外にも活動の場を見出した者。
シュワルツェネッガーは政治家・実業家等の活動が広い。
ブルース・ウィリスは元々がコメディアン。
前述の俳優達もプロダクション経営なり後進の指導なりに務めている。

ヴァンダムとて、脚本を書き監督も務めた経験があります。
しかし、彼の場合なんと言っても仕事のそれ以上に、
私生活を巡る"あれやこれ"が仕事の足も引っ張っています。
私の鑑賞動機も失礼なものでしたが、
ちょっとヴァンダム兄貴に対する愛着も出ました。
ゴシップを巡る周囲の奇異の目が変わることが
ヴァンダム兄貴復活の鍵ではないでしょうか。


現在、世界各地でアクションスターは枯渇状態。
毎度毎度、期待の新人と言われる小童が、5年ぐらいで忘れる。
スポーツ選手のような短距離勝負なので、最初の2~3年が勝負。
脂の乗っているジェイソン・ステイサムもあと10年で、
今のヴァンダム兄貴の年に迫る!

「48歳、そろそろアクションがきつい」とは、
何もアクションスターのみならず、アラフィフ・アラフォー・アラサー
節目近づく年には誰でも抱く不安であります。
一般人も笑ってはいられないのですよ。
力を着実につける後輩は追い上げてくる。
人生において様々な重荷・足枷・垢が付いてくる。
普通の人には「プロジェクトX」のような栄光もないのだよ。
ただ、霧の中を歩き続けるのみ。

ヴァンダムの現実とダブる独白シーンを、笑わずに共感して観よ!
そして心の中で拍手し、握手を交わせ!

ナルシズムなどと野暮なことを言いなさんな。
クレーンでセット外に上昇するのは少々鼻白むものの、
自己の歪みも含めて男が人に心情を告白するとき、
その後ろに多大な勇気と踏ん張りがあるのです。
その男の、言葉では語られぬ部分をも含んだ
告白を真剣に受け止めましょう。

ヴァン・ダム!男だ!
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