スーパーマリオ誕生25周年に寄せて・・・「スーパーマリオ/魔界帝国の女神」2010年10月19日 23時40分42秒

スーパーマリオコレクション スペシャルパック
スーパーマリオコレクション スペシャルパック

ちまたのみならず既にCMでもネットニュースでも流れている話題。
それが、キノコ喰らいのヒゲデブオヤジ、もとい、マリオが活躍するゲーム
「スーパーマリオブラザーズ」の誕生25周年。
マリオというのはマリオ・ヴァン・ピープルズではないですよ。

任天堂のファミリーコンピュータ・・・ではなくアーケードゲームで
1981年に産声をあげたこのキャラクターは、その後いくつかのゲームに登場し、
1985年に発売されたファミコンソフト「スーパーマリオブラザーズ」の
メガヒットによって任天堂の顔ばかりか、FCゲームを代表するキャラクターへ成長。
現在に至るまで関連ゲームが作られ続け続けています。

ならば、僕も小学校からマリオと時代をともにした世代として、
ささやかに祝おうじゃないかと「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」のVHSを鑑賞。
ゲームが海外でもヒットしたことに注目したアメリカが製作した実写版マリオで、
CMを除けば唯一の実写マリオ作品かと思われます。


触れない方がいいですか?

いわゆるこれはマリオにおける黒歴史であり、触れてはいけない作品であり、
今世紀未だDVD化はされていません。といえばわかると思いますが、大コケしました。
約50億円の制作費をかけ半分も回収できず、日本での配給収入は3億円とのこと。
同じ年、スピルバーグが「ジュラシック・パーク」でメガヒットを飛ばし
日本でも83億円の配給収入があったと考えれば落差は物凄い。
なお、この近年は日本の映画館全国入場者数が戦後最悪を記録していると付け加えましょう。

ヒットしなかった理由は作品を見れば一目瞭然。
設定が映画用に書き換えられたことは百歩譲りましょう。
そういうことはこの作品に関わらず、よくあることです。
それによって名作になる作品も数あるのです。


まず、一番最初にタイトルが表示されるシーン。
あの、スーパーマリオのファミコンのBGMが流れます。お、なかなか良いじゃない。

実写映像が始まりミステリアスなシーンが流れて、ブルックリンの街へ。
キノコの国ではありません。この我々の世界です。

ソファの上でテレビ見ながらさえない野球帽のヤセ男が腹の上のナッツをバリバリ食ってる。
隣の部屋でヒゲデブのオヤジが電話に向って叫んでる。そして、ヒゲが野球帽に言い放つ。
「ルイージ!!」当然、叫んだ方はマリオに決まってる。
この瞬間、日本人の誰もが「失・敗」の2文字を頭に刻んだことだと思います。
おそらくルイージ史上最も酷いシーン。しかしながらこのルイージ、
本作のヒロインであるデイジーと良い仲になるのだから扱いが悪いとも言い切れません。

幻滅したヒゲとヤセは置いておき、そのデイジーは映画の救いであります。
この女の子は実は、マリオの宿敵クッパの支配する異次元の姫様なのであります。
異次元というのはかつて恐竜を絶滅させた隕石が落下したとき、
何匹かの恐竜達は次元を越えて別次元で進化したのです。
クッパはデイジーと彼女の持つ隕石の欠片を手に入れ、
哺乳類が支配するこの世界と異次元世界を融合し全ての支配者になろうとしているのです。

ああ!恐ろしい!

それを阻止できるのはブルックリンの配管工のマリオ&ルイージ兄弟だけ!
わくわくして来ますねぇ。しません。
ちなみに、デイジーが何故必要かはいまいち曖昧です。

さて、化石発掘調査をやっているデイジーのホットパンツの発掘調査姿がよろしい。
ルイージが言う前に僕が「イカした娘だ」と言いました(バカ)。
活発で勝気なタイプの女性でございまして、サマンサ・マシスという女優が演じてます。
ドイツ系の父とオーストリア系の母の血を引いてるそうな。
僕の好みの女優さんはドイツ系の流れを引いてる人が多いです。
たぶん、彼女が出演していなければ一段と低い評価になったことでしょう。
まあ、出てても高くないですが。

デイジーは次元を超えてやってきたクッパの手下にさらわれ異次元へ。
マリオとルイージも異次元に飛び込みます。その先は恐竜人達の世界へ!
しかし、特殊メイクのお金が無いのか?
巨額の制作費はどこへやら、住民はほとんど人間だ!
恐竜人はクッパとその手下数名だけしかいません・・・。
異次元の街もダウンタウンと香港の街を合わせたような狭苦しい雑多な空間で
何がなんだかわかりません。おそらく頑張って作ったデストピア社会なのでしょうが。

さらに衝撃は続く。

デイジーの父親である、異次元世界の真の王様はクッパに姿を変えられています。
何に?キノコ。可愛い!とんでもない。
ビジュアルはピーナッツバターをでろんでろんに塗ったくったボールのようなもので、
「あなたのお父さんよ。」と紹介された日には一生のトラウマになります。
どうやらでろんでろんは茸の菌糸らしいです・・・。

しかし、デイジーは凄い。
助けに来たマリオとルイージに「私の父よ」とにこやかに紹介します。
一国のプリンセスとなるべき人は器が違います。感服。


世界観に大きな改変が加えられていると紹介する文章がありますが、
僕はこの映画は、配管工・キノコ・恐竜その他をリアルに作りすぎたのだと思います。
たぶん「アリス・イン・ワンダーランド」の様なメルヘン発想に行き着くことができず、
言葉をそのままに実写にしてしまったのです。
そう、ゲームとアニメの幻影にだまされているのは我々の方です!
あんなヒゲデブオヤジがカッコいいわけないのです。
まして可愛くもないのです!そうですとも・・・。

付け加えるならば、小型の怖い恐竜が出てきて「ヨッシーだ。」
などと紹介されるのもリアル嗜好の果てです。
ええ。このヨッシー、ピックで首を刺されて「ピギーッ」などという
哀れな声をあげる破目になってしまいます。南無。

さて、後半30分ぐらいになると、もうどうでも良くなってきます。
クッパが哺乳類をサルに退化させる逆進化銃なるものを振り回したり、
マリオの必殺武器がゼンマイ巻きのボム兵爆弾や回転する大キノコ、
ルイージがDr.中松のジャンピングシューズの様な靴で跳んだり・・・、
もう、帝国のセットを無茶苦茶に壊し回っているだけ。全く美しくない!
それまで何とかこの映画を楽しもうとしてきたことが全てどうでもよくなります。
これほど観客をどうでもいい気持ちにさせる映画もそうそうありません。


見たいですか?見たくないでしょ?マリオ役はボブ・ホスキンス。
近年は「ヘンダーソン夫人の贈り物」でジュディ・デンチの相手役を務めた渋い俳優です。
そして、クッパはあの名優デニス・ホッパー。
先ごろ逝去されましたが、追悼文に「スーパーマリオ」を紹介していた記事もありましたね。
ちゃんと作品は観た方が良いですよ、見ていて紹介していてもそれはそれで問題ですけど。

しかしまあ、こういう作品はなぜか忘れられずに、
時が経てば何かの弾みでまた見てしまうのです。
こんなことを書いていること自体、既にそのヒドイ作品に対する歪んだ愛なのです。
本当になんの足しにもならない作品は、こうなることすらなく、
異次元の彼方に葬られていくのでした。

スーパーマリオ生誕25周年おめでとうございます!(←遅い)
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