若き二人の友情パワー 「スタスキー&ハッチ」2010年10月04日 23時46分41秒

先日、夜中に放送していた2004年の映画
「スタスキー&ハッチ」についてのこと。

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スタスキー&ハッチ

本作は1975年~1979年にアメリカでTV放送され好評を博した刑事ドラマ
「刑事スタスキー&ハッチ」のリメイク、あるいは劇場版であります。
ドラマ版は1977年に日本で吹替版が放送されました。

内容はタイトルの通り、スタスキーとハッチの若い刑事二人の活躍を描く
痛快娯楽ポリス・バディ・アクションドラマ。
"バディ"というのは相棒のこと。ドラマの愛称は「スタハチ」。

2004年映画版はスタスキー役をベン・ステイラー
ハッチ役をオーウェイン・ウィルソンが演じます。
新コンビを結成することになった性格正反対の若き二人の熱い刑事が、
互いにぶつかり合いながらも友情を高めあい、麻薬がらみの事件解決に挑む!

約30年の月日があっても、現代版というわけではなく観れば一目瞭然、
70年代の懐かしき香り漂う映像が飛び込んできます。
なんだかやたらゴミが撒き散らされている裏通り、狭苦しいデカ(刑事)部屋、
ブラインドの奥で青筋立てて頭抱える黒人ボス(声が内海賢二なら完璧だった)
ピチピチギャル(亀仙人か!)のチアリーダー、ジャンパー&ジーンズ・・・。
映像は良し。しかしバディ物の肝は何より主役二人の友情に他なりません。

バディものは必然的に主演二人が刑事、少なくとも片方が刑事になるのが多い。
どちらも刑事でないというのは探偵や新聞記者などになります。
物語の筋は概ね、刑事事件が発生してその解決までの活躍を描くので、
二人で行動するのは刑事が必然的でもあるのでしょう。
また、二人の日常生活での付き合いを描くのはバディとはあまり言いません。


「刑事スタスキー&ハッチ」以降のバディものですぐに思いつくのは
僕の場合、エディ・マーフィ&ニック・ノルティの「48時間」と
メル・ギブソン&ダニー・グローヴァーの「リーサル・ウェポン」。
80年代のとくに前半は良きバディものの時代だったように思う。
もちろんこの他にも沢山のバディものが映画・ドラマで登場します。

48時間 [DVD]
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リーサル・ウェポン [DVD]
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近年でバディものというと、外国映画では「Taxi」シリーズ、
日本ではその名もずばり水谷豊&寺脇康文・及川光博の「相棒」でしょうか。
2000年以降のバディもの最高傑作は「仮面ライダーW」であると堂々言おうか。
いまこそ、バディものの完全復活を!

共通するのはバディと呼ばれる二人はお互い正反対の凸凹タイプということ。
これが最重要。彼ら彼女らは気が合うとか、ウマがあうソリがあう、違う。
よく飽きずに喧嘩もする、殴りあう、お互いに困らせもする。
しかし、心の中で「こいつは絶対に信頼できる」と揺るがない一点がある。
だから殴り合えるわけで、逆に殴りあうからどんどん絆が深まるとも言える。
そして穏やかな日々の中で培われる関係ではない。
きつい状況下をともに潜り抜けることで一心同体になる。
そう、凸と凹はぴったり合わさって「□」になるのだ!

似た者同士で上手くいく例はもちろんあります。
その一方で、全く違うタイプで上手くいく例も存在するということがある。
生物学的に種の生存のためと考えればむしろ理に適っているかもしれません。
お互いに弱点となっているものをお互いの強みで補い合う。それが二人で一人になる。
二人が同じタイプの場合、万一踏み外すと一緒に転落していくけども、
タイプが違えばどちらかが強力なブレーキになり食い止めてくれることもある。
同じタイプならば力が増幅されるのではというのももちろん。
しかし、違うタイプで背中預けあえるほど互いを信頼できる関係の場合、
それぞれの立つ足場が強固になり、それぞれの力をより一層出せることもある。

もう一つ付け加えるならば携帯電話は登場しない。無線はある。
しかし、二人は基本的に常に二人一緒に行動します。

バディものというのは人間同士の信頼とはなんぞやという問いの
回答の一つを提示して見せてくれる。


ベン・ステイラー&オーウェン・ウィルソンの二人は、
この頃既に公私ともに仲の良い名コンビであるため、
スタスキー&ハッチの様なバディものには申し分ありません。
バディ誕生から始まっていくため、中盤までゆるい感があるものの、
後半の追い上げは見事に決まる。特に真っ赤なグラントリノが効く。

クリント・イーストウッド監督の「グラントリノ」ではグリーンのボディでしたが、
「スタスキー&ハッチ」のグラントリノは真っ赤なボディに白のラインが入る。
二人のうちスタスキーの愛車ですが、二人乗って大ジャンプのときは二人のもの。
大切にするがピッカピカに可愛がるのではない、飛んだりはねたりぶつけたり、
まさに二人の体のように体当たりでぶつかるのが車の宿命。
「テルマ&ルイーズ」でもがっしり手を握り合い、車は跳んだ!

このグラントリノが終盤、海に沈んで浮かび上がらなくなってしまうのですが、
ラストでオリジナル版のスタスキー&ハッチの二人が登場して、
自分達の赤いグラントリノを受け渡すという最高の演出が心にくい。
しかも、車を渡すのを若干渋るのが良いのです。
はたしてお前らに任せられるかな・・・?といわんばかり。
それは車だけではなく、この作品をということ。
リメイク版のスタッフ&キャストの謙虚な姿勢の表れだと思います。


ベン・ステイラーは製作にも関わっています。
彼が主演する映画はいまや彼が製作に関わる場合がほとんど。
そして公私ともに交流関係が非常に広くスターのカメオ出演も
彼の力によるところが大きく、その友だちの輪は"フラットパック"と呼ばれている。
何より彼の出た映画からは、ベンが他の皆と嬉しそうに仕事をしているのが伺える。
そんな誰かと繋がっていたいベンだからこその「スタハチ」かもしれません。

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刑事スタスキー&ハッチ
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