鋼鉄の男2008年10月19日 23時47分55秒

やっとこさ「アイアンマン」を鑑賞することができました。
原作は言わずとしれたマーベルコミックスの同名コミックス。

<物語>
巨大軍事産業の社長にして天才的頭脳を持つトニー・スターク。
彼はアフガニスタンでの米軍への新兵器のお披露目の後、
テロ組織に拘束され、彼らのためにミサイルを作れと迫られる。
彼らの御用達兵器はトニーの会社の製品ばかりだった。
トニーは爆弾による負傷で、共に囚われていたインセンの製作による
車載用バッテリーを使用した生命維持装置が必要な身体となるが、
かねてより開発していた動力装置「アーク・リアクター」を
自分の身体に埋め込み、新たな生命維持装置とする。
さらに、アーク・リアクターと連動するパワード・スーツ「マーク1」
を開発し、テロ組織のアジトを壊滅させ脱出に成功するのだった。
アメリカに帰還したトニーは兵器開発をやめると宣言、
「マーク1」の改良を進め、「マーク3」を完成。
パワードスーツを装着し、テロ撲滅に挑むのだった。


パワード・スーツは男の憧れです。
また、アイアンマン「マーク3」のデザインが
最近のアメリカにしてはかなり良いデザインです。
もちろん、原作は40年以上前にコミックで世に出ていますが、
元のデザインはより身体に密着した、どちらかと言えば、
それこそタイツ姿の男にちょこっと仮面とパッドが付いた様なもの。
今回の映画版でリファインされたデザインの
未来的光沢感溢れるメタリックボディは秀逸。

見ていて、かつての実写メカ「ロボコップ」を思い出しました。
あれは警官のデータをインプットし、警官時の記憶が断片的に蘇る
哀しみを背負ったロボットだったものの、
外観的には一応人間時の顔も移植し、パワードスーツにも類似。
今回の「アイアンマン」同様、同じ技術体系で開発された
巨大ロボットと対決することになるものの、
全シリーズ通してロボコップのアクションが遅く、
また遅さを逆手に取った「ターミネーター」的な恐怖演出もなく、
若干、いやかなりフラストレーションが溜るものでありました。
そこからの技術とセンスの進歩はなんと素晴らしいことか。
CG使用とは言っても、アイアンマンのスーツは実際に作成され、
それを着て演技をこなしているというのだから。

原作は私は読んでいませんが、
冒頭のアフガンでの体験は原作ではべトナム戦争だったそうです。
タイムリーなシチュエーションに変更したとのことですが、
どちらの戦争もアメリカの正義にということに対して
人々の心に疑問を投げかける戦いであります。

トニーは億万長者になり米軍の絶対の信頼を得るまで
兵器を開発したところで、テロ組織にその兵器が渡っていると知るや、
突然兵器開発を止めると宣言し、以降、心を改めようとします。
何を調子の良いことをという人もいるでしょう。
しかし、トム・ハンクス主演、マイク・ニコルズ監督の快作
「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」でも触れられたように、
アルカイダに至るまでの武装組織に支援をしたのが米国であるように、
兵器の流れは開発した者の出身国には留まりません。

トニーのある種の純で恥知らずな方針転換は、
今、アメリカのみならず日本にも政治家にも企業家にも
求められることではないでしょうか。
いまさら調子の良いことを言われても胡散臭い。
でも、そのままの行いを続けて弱者を痛めつけることを許すか。
ならば恥を恐れず罵声を浴びる覚悟で道を戻らなければ。
少なくもそれだけの力を持っているのならば。
信頼は行動よりも遥かに遅いスピードで取り戻すもの。
まずは、行動なのではないでしょうか。

「マーク1」のデータから改良された宿敵「アイアンモンガー」にしても、
これはトニーが自分の蒔いた種の落とし前をつける上での、
ターニングポイントなのかもしれません。


俳優陣も素晴らしい。何しろアカデミー賞受賞者、ノミネート者が揃う。
ロバート・ダウニーJrはもちろんですが、
トニーの秘書にして全幅の信頼を寄せるパートナー・ペッパー演じる、
グウィネス・パルトローが美しく聡明で力強い。
(どうですこの宣伝チラシのポーズの決めようは!)
やんちゃ坊主のトニーをバックアップし、
かつ大人の恋の機微を醸しだす強き女性。
彼女の思慕と尊敬が籠められた旧式アーク・リアクターが、
窮地に追い込まれたトニーを救い、分の悪い戦いに挑む
燃えるシュチュエーションまでの用意周到さといったらもう!

「セブン」で公私共にパートナーだったブラピを振り、
友人との友情を壊してでも役を手に入れた
「恋に落ちたシェイクスピア」でオスカーを取ったこの女優の根性たるや
そりゃ、子育て中のところを引っ張り出す価値はあります。
「スカイキャプテン」ではアンジェリーナ・ジョリーの前には
一歩譲ってしまったのですが。まあ、アンジーでは仕方が無い。


基本的には単純明快がアクション娯楽大作。
「ダークナイト」や「インクレディブル・ハルク」「スパイダーマン」
に比べればウェットな要素が無いわけではないけれども影に隠れます。
しかし、シンプルな中に正しいこと、やってはいけないことを、
我々は常に見つけ出し学び取ることができたはずです。
「アイアンマン」はそんな上質の肉を切り分けたように口当たりが良い。

なお、パンフでは詳しく解説されているのですが、
「インクレディブル・ハルク」のラストにもトニー・スタークが出演し、
今作のラストには「アベンジャーズ」よりニック・フューリーが登場。
「アベンジャーズ」はマーベルコミックスのヒーローが
クロスオーバーして共演するオールスター漫画。
この「アベンジャーズ」が2011年実写映画化に向けて
企画進行中であることは聞いていましたが、
それに登場するハルク、アイアンマンの準備が今回のものとのこと。
しかも「アベンジャーズ」完成前にキャプテンアメリカ等々も
実写映画して満を持して公開に望むというのだから、
まったくお金と自信のあるところは考えることが違います。
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