静かに復讐す2007年03月31日 20時33分18秒

いよいよ3月も終わり。人の移動が多いこの時期、私の職場も大変。
栄養補給で乗り切らなければ。栄養と言えばまず趣味。
フランス映画「あるいは裏切りという名の犬」を鑑賞。

<物語>
パリ警視庁の二人のベテラン警視。
仲間からの信望厚く正義感のレオと野心と利己心が強いドニ。
正反対の二人だがかつては共に戦った親友、
また今のレオの妻カミーユを巡り競った過去を経て、
現在は次期長官の座を競うライバルとなっていた。
しかし、現長官を含めて空気はレオに流れつつあった。
そんな折、現金輸送車強奪事件が発生。
その手柄で逆転するためドニの野心が燃え上がり始めていた。
やがて事件の先に待つ裏切りが二人の間を決定的に引き裂く。


フランス映画と言えば眠くなるようなゆったりドラマを想像しますが、
昔は男の美学を存分に漂わせるサスペンス映画も代表でした。
最近この仏犯罪映画とえば「ブルーレクイエム」ぐらいしか
劇場で鑑賞できたことがありませんで、
それも昔の雰囲気とはやはりちょっと違いました。

しかし今作は実話をモデルにクラシック時代の
ノワール(犯罪)映画のツボをかなり押さえた作り。
ゴシック調の背景に黒を基調とした色調の男達。
紫煙と硝煙が煙り、語りの少ない男達の世界を演出。

ダニエル・オートゥイユ&ジェラール・ドパルデュー演じる、
レオとドニの人物像は説明だけではよくある図式であるものの、
スクリーンに映る彼らは人生の積み重ねからくる
滲み出る男の哀愁と色気に満ちています。
(ポスターの写真だけで物凄い渋みです。)

型にはまって動かない人物像ではなく、
微妙なブレを感じる厚みのある人間です。
日本で言えば、イメージは既に完成されているのに、
内面は深く深く拡がっていることを感じる
高倉健さんのような世界です。

こういうドラマは結末も大抵、哀しみに彩られており
映画館を出た後「うーむ」と唸ってしまうのですが、
この作品は裏切り者は死に尚且つ最愛の娘とともに
新しい土地へ旅立つという、なんとも胸のすくような終わりで嬉しいです。

男の哀愁と色気と言えば香港の「インファナル・アフェア」がありますが、
あれは現代ノワール映画の男達です。
ベテラン達が演じる今では古典世界の男達のドラマ、
まだこんな作品ができるのかと驚きました。

さてさて早速ハリウッドが動き出し、
ロバート・デ・ニーロ&ジョージ・クルーニーでリメイク進行中。
もちろん良い俳優であることは間違いありませんが、
原典に対する敬意を払った作品になることを願います。
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