日本の礎2007年03月01日 22時11分17秒

3月1日は「スーパーロボット大戦W」の発売日でもありますが、
映画の日でもあります。そんな日に休日とは行くしかありません。
五十嵐匠監督作品「長州ファイブ」を鑑賞。

<物語>
時は幕末、尊皇攘夷が血気盛んな時代。
長州の若き藩士達は西欧の技術を体で学ぶ必要を感じ、
1863年、藩主毛利敬親の黙認の下に英国行きの船で密航する。
ロンドンに到着した5人はその文明と技術力の高さに度肝を抜かれる。
そしていつしか藩のためならず日本国のためを考えるようになる。
山尾庸三、井上勝、遠藤謹助、井上馨、伊藤博文。
異国にあっても勤勉であり祖国を変える気概に満ちた彼らを
英国人は敬意をこめて「長州ファイブ」と呼んだ。


パンフレットを見て驚きますが、本人達と松田龍平達の
それぞれが同じ構図で取られた記念写真が実にそっくり!
生き返ったのではないかと思うくらい見事なキャスティングです。
しかし、単にそっくりさんを集めただけではないことは直ぐに分かります。

五十嵐匠監督は名前こそ一般人にはメジャーとは言い切れませんが、
監督の描き出す実在の人物は我々の心を熱くする力に満ちています。
役者と本人が最後には重なり合うのが素晴らしい。
浅野忠信は一ノ瀬泰造になり、榎木孝明は田中一村になり、
そして松田龍平は山尾庸三へと確実に変貌していきます。
もちろん役者自身の実力もありますが、
これほど揃うのは監督の演出の賜物であると思います。

時は日本国が世界に飲み込まれる動乱期。
20歳~27歳までの若者達が死も異世界も恐れず、
「俺達が行かねば帰らねば日本は無くなる」と言わんばかりの
想いを背負って大陸の向こう側まで行ったことに改めて凄いと思います。

5年の計画のうち半年で帰国する伊藤博文と井上馨ではなく、
最後まで貫徹する山尾庸三を中心に物語は進みます。
山尾は東大工学部の基礎を築き造船技術を伝え、
井上勝は鉄道開発に、遠藤謹助は造幣に尽力します。
これらの活躍は現状、学校教科書ではほとんど聞かない歴史です。

ちなみに伊藤と馨は決して逃げたわけではなく
欧米の力を知らずに戦おうとする無謀な日本を止めるべく帰国する。

富国強兵に闘志をも燃やす希望溢れる若さだけでなく、
その中でやがて日本も経験する工業発展の暗部、
「持つ者、持たぬ者」を垣間見ることも織り交ぜるのは流石。
別に現代だから挿入されたエピソードではなく、
山尾の盲・聾唖者教育支援への貢献として歴史上に残るものです。

伊藤博文と井上馨のその後に私個人は疑問はあるものの、
今回初めて知る5人の情熱に心動かされるものがあります。
現在の主流の歴史ではありません、
しかし、確かに現在の日本国の基礎を造った歴史です。
もっと多くの人にこの作品が鑑賞されることを願います。

主役を食う2007年03月03日 23時43分39秒

同名ミュージカルの映画化「ドリームガールズ」を鑑賞。

<物語>
1960年代、仲の良い女性ボーカルグループ3人で結成した
「ドリームメッツ」はクセ者マネージャー・カーティスの
プロデュースによってデビューを果たす。
当初はデトロイドのスター、ジェームズ・アーリーの
バックコーラスとしてだったが、後に独立。
ローカルからメジャーへと人気が上昇する中、
カーティスの戦略が影響しエフィー、ディーナ、ローレルの
3人の間に微妙な亀裂が生じていく。


ミュージカル映画は名作と呼ばれるものであっても、
ジャンルに親しんでいない人にとっては唐突に歌い出したり、
音楽パートだけうるさいという印象が少なくありません。
しかし本作においては音楽業界が舞台という設定も有利に働き、
音楽とドラマと演出が自然に融合し、
むしろミュージカル映画と言うことも忘れてしまいます。

とにかく、声は抜群だがルックスで損をするエフィー役の
ジェニファー・ハドソンと、ソウルが炸裂するアーリー役の
エディー・マーフィーの歌唱力とパワーに圧倒されます。

しかし一方で主演・ジェイミー・フォックスとビヨンセに輝きがない。
役柄もそれぞれプロデューサーと歌声に個性の無いディーナという
控え目にする必要がある役ですが、それにしても助演に食われ過ぎです。
確かビヨンセは自分の演技の才能に驚いたと自画自賛していましたが、
たとえそうだとしてもハドソンとエディーの方が段違いに上です。

そんなわけで主演と助演のパワーバランスによって、
どうも据わりの悪い感があります。
エフィー&アーリーを主役と見ればあまり問題ないですが。
実際、その他音楽シーンや演出は華やかで楽しいですし、
ソウルが満ちた歌は鑑賞後も頭の中に鳴り響きます。

音楽業界の裏側もさることながら、その裏にさらに
黒人が白人社会で勝つためのドラマが秘められています。
熱きソウルを燃やす黒人パワー、
もともとのリズム感のよさや民族的な特性よりも、
アメリカという地で生き残るために必要な力である、
そんな魂の燃焼を感じる映画でした。

ただ、やっぱり惜しいかな画竜点睛・・・かも。

みやぎの芸術2007年03月05日 03時13分29秒

映画の鑑賞にちょっと余裕ができたので、
宮城県美術館特別展「アートみやぎ 2007」を鑑賞しました。

「みやぎ」とついている名の通り、
宮城県出身または在住の芸術家の作品を集めた展示です。
知名度についてはよく分かりませんが、
申し訳ありません、あんなに空いていたのは久しぶりです。
おかげでゆっくり鑑賞できましたが。

全体的に前衛的な傾向があるので好みが別れると思いますが、
その中では及川聡子さんという方の絵画は一般向けでしょうか。
葉や雪のタッチがクリスタルのような透明度があって、
寒い朝をガラス細工に閉じ込めたように幻想的です。

樋口佳絵さんの絵はインパクト抜群で何やら
学校生活と子供についての社会性を帯びている気がしますが、
ちょっと怖い感じでトラウマになりそうです。

木伏大助さんの絵は往年の映画ポスターの複製画。
大映や松竹のスタア映画などが多く嗜好がよく分かります。
渥美清などの似顔絵なら負けませんぞ、なんちって。


世の中いろいろな活動をしている方がいるものだと改めて思います。
食べることとか考えなければ大抵の活動はできるのかなと、
ちょっと創作活動の火が揺れ始めました。


ところで、宮城県美術館はもうしばらくすると一年ほど
空調工事のため休館になるそうですよ。
宮城県は美術館が少ないのに。
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