笑いと涙の擦り合わせ ~ 築城せよ! ― 2009年08月31日 22時47分56秒

「築城せよ!」は不思議な映画です。
「無念の最期を遂げた戦国武将の霊が現代に蘇り、
役所のダメ職員、建築の親方、ホームレスに憑依し、
悲願の築城を町の住民とともに成し遂げようとする。
しかし、なんと城の建材はダンボールだった・・・。」
さあさあ、皆さんはこの設定からどんな映画を想像しますか?
まともな現実的な路線の映画ではないですね。
コメディで、さらに一流ではない怪しげな笑いを。
では、もう少し味付けを。
「この町では戦国時代の武将・恩大寺の遺した遺跡があり、
その保護を求める住民と、工場誘致を推し進める町長との間で
長い長い戦いが繰り広げられていた。
観光資源も産業も乏しい町なので、町長の言い分ももっとも。
しかし、それ以上に反対する住民には郷土に生きる誇りがあった。
そこへ蘇った恩大寺の霊は、最初は住民と衝突するが、
築城に賭ける熱意を共に分かち合い、活気を取り戻していく・・・」
さあどうです。これに確執する父と娘の歩み寄りやら、
淡い恋心やら、ホームレス流の人生哲学やらも盛り込まれている。
ははあ、これは思いっきり笑ってちょっぴり泣けて・・・。
と、来ると楽しみにする人はどのくらいいるのでしょうか?
私はちょっと不安になります。
それというのも、最近の若い監督が撮る、
「笑い×泣き」映画にはちょっと難があるものが多いから。
例えば宮藤官九郎の映画は私は好きではあるものの、
「真夜中の弥次さん喜多さん」も「舞妓Haaaaaaan!!」も、
昼ドラの「我輩は主婦である」にしても、
最初は思いつかないような笑いで楽しませてくれるのに、
中盤からいきなり泣かせに移行してしまうのには戸惑う。
こちらはもう笑いたくて来ているので泣かせられたくはない。
今日はカレーならばカレーで、揚げパンを付けなくとも良い。
一つの作品で様々なことを網羅したいという
意気込みは当然持っているでしょうし、野心旺盛なのは結構。
ところが、その擦り合わせがどうにも下手な人が多い。
最近の若手監督にも顕著でどっちつかずというのが見られます。
なので、「築城せよ!」も不安を抱きながらも
怖いものみたさで鑑賞して来たのですが・・・。
これが不思議なことに、実に気持ちが良い映画のです。
変な映画であることには変わりありません。
極端に涙を煽っているわけでもない。
ただ、見た後にすーっと、気持ちよくなれる映画で、
しかし、その理由を説明しようとするととりとめもなくなります。
敢えて言えば、前述の擦り合わせが絶妙で笑い所も泣き所も、
自然に現れていて、誘われている、もっと言えば命令される
そんな感覚を感じることなく入っていけるのです。
不親切な映画でもないし、もちろん演出も力が入っています。
意図的に止めている感触もありません。
そういう、"あざとい"計算が感じられないのです。
それはもう、作り手の感性と現場の巡り合わせによるもの、
という他はないと思います。
だからこそ、クライマックスを飾る天守閣のシャチホコを掲げ、
神々しすぎる朝陽に照らされ、崩れ落ちる城に舞うヒロイン、
そのシーンが不思議と"良い"。変な場面なのですけど"いい"。
広間に描かれる鴉の力強さや、そびえるダンボールの城、
新人俳優の力演、ベテラン俳優の妙演、見所は様々あるけども、
「築城せよ!」の魅力はその全体の心地良い感触に他なりません。
古波津陽、その名前をどこで苗字と名前に区切るのかも
分からなかった新人監督のお名前、しかと胸に刻みました。
「不灯港」の内藤隆嗣監督といい、
やっと、よき喜劇を撮れる若手が出てきますか?
私の今年のMyベスト10邦画部門にノミネート決定です。
皆のものぉ!鑑賞せよ!!
「無念の最期を遂げた戦国武将の霊が現代に蘇り、
役所のダメ職員、建築の親方、ホームレスに憑依し、
悲願の築城を町の住民とともに成し遂げようとする。
しかし、なんと城の建材はダンボールだった・・・。」
さあさあ、皆さんはこの設定からどんな映画を想像しますか?
まともな現実的な路線の映画ではないですね。
コメディで、さらに一流ではない怪しげな笑いを。
では、もう少し味付けを。
「この町では戦国時代の武将・恩大寺の遺した遺跡があり、
その保護を求める住民と、工場誘致を推し進める町長との間で
長い長い戦いが繰り広げられていた。
観光資源も産業も乏しい町なので、町長の言い分ももっとも。
しかし、それ以上に反対する住民には郷土に生きる誇りがあった。
そこへ蘇った恩大寺の霊は、最初は住民と衝突するが、
築城に賭ける熱意を共に分かち合い、活気を取り戻していく・・・」
さあどうです。これに確執する父と娘の歩み寄りやら、
淡い恋心やら、ホームレス流の人生哲学やらも盛り込まれている。
ははあ、これは思いっきり笑ってちょっぴり泣けて・・・。
と、来ると楽しみにする人はどのくらいいるのでしょうか?
私はちょっと不安になります。
それというのも、最近の若い監督が撮る、
「笑い×泣き」映画にはちょっと難があるものが多いから。
例えば宮藤官九郎の映画は私は好きではあるものの、
「真夜中の弥次さん喜多さん」も「舞妓Haaaaaaan!!」も、
昼ドラの「我輩は主婦である」にしても、
最初は思いつかないような笑いで楽しませてくれるのに、
中盤からいきなり泣かせに移行してしまうのには戸惑う。
こちらはもう笑いたくて来ているので泣かせられたくはない。
今日はカレーならばカレーで、揚げパンを付けなくとも良い。
一つの作品で様々なことを網羅したいという
意気込みは当然持っているでしょうし、野心旺盛なのは結構。
ところが、その擦り合わせがどうにも下手な人が多い。
最近の若手監督にも顕著でどっちつかずというのが見られます。
なので、「築城せよ!」も不安を抱きながらも
怖いものみたさで鑑賞して来たのですが・・・。
これが不思議なことに、実に気持ちが良い映画のです。
変な映画であることには変わりありません。
極端に涙を煽っているわけでもない。
ただ、見た後にすーっと、気持ちよくなれる映画で、
しかし、その理由を説明しようとするととりとめもなくなります。
敢えて言えば、前述の擦り合わせが絶妙で笑い所も泣き所も、
自然に現れていて、誘われている、もっと言えば命令される
そんな感覚を感じることなく入っていけるのです。
不親切な映画でもないし、もちろん演出も力が入っています。
意図的に止めている感触もありません。
そういう、"あざとい"計算が感じられないのです。
それはもう、作り手の感性と現場の巡り合わせによるもの、
という他はないと思います。
だからこそ、クライマックスを飾る天守閣のシャチホコを掲げ、
神々しすぎる朝陽に照らされ、崩れ落ちる城に舞うヒロイン、
そのシーンが不思議と"良い"。変な場面なのですけど"いい"。
広間に描かれる鴉の力強さや、そびえるダンボールの城、
新人俳優の力演、ベテラン俳優の妙演、見所は様々あるけども、
「築城せよ!」の魅力はその全体の心地良い感触に他なりません。
古波津陽、その名前をどこで苗字と名前に区切るのかも
分からなかった新人監督のお名前、しかと胸に刻みました。
「不灯港」の内藤隆嗣監督といい、
やっと、よき喜劇を撮れる若手が出てきますか?
私の今年のMyベスト10邦画部門にノミネート決定です。
皆のものぉ!鑑賞せよ!!
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