熱き血潮2008年12月22日 23時48分58秒

「ブロードウェイ♪ブロードウェイ/コーラスラインにかける夢」
についてのこと。

ブロードウェイミュージカル「コーラスライン」とは、
1975年の初演から1990年の千秋楽まで6137公演、
当時最長のロングラン公演記録をたて、
1976年のトニー賞・最優秀ミュージカル賞をはじめ9部門獲得。
(データ:ウィキペディア調べ)
この映画は2006年に再演された時の
オーディションを記録したドキュメンタリー。

ミュージカル「コーラスライン」の内容は、
ブロードウェイの舞台に立つオーディションに挑む若者達の物語。
しかし8人の採用枠に入ったとしても彼らがつかめるのは、
役名も無い脇役「コーラス」の1人でしかない。
それでもスターへの小さく大きな一歩と信じて、
彼らは夢を人生をかけて狭き門に挑んでいく。
「君たち自身を知りたい」という演出家の前で、
彼ら彼女らは過去と現在を明かし情熱をぶつけていく。

ミュージカルのオーディション風景をミュージカルにするという、
入れ子構造ながらも、夢に賭ける若者達の姿が、
観客それぞれの境遇や人生を重ねて観られることから、
他の劇中劇作品には無い瑞々しい輝きを誇る金字塔です。

とは言え、1985年にマイケル・ダグラス出演、
リチャード・アッテンボロー監督で製作された同名の映画化作品では、
この設定をいまいち理解していなかった私は、
コーラスラインという舞台に出演するための若者達の青春ドラマ、
と思い続けていたのでした。
それでも夢に全力で挑む溢れるパワーに深く感銘を受けるには十分。


さて、今回のドキュメンタリーはその「コーラスライン」に
出演するためのオーディションに挑む若者達の記録なので、
まさに若者達のコーラスラインにかける生の情熱の記録なのです。
だから彼らの喜びも哀しみも赤裸々なもの。
本当に過去を背負い、現在に生き、未来を夢見るもの。

もちろん、夢を掴む者ばかりにドラマがあるわけではなく、
悔しくもオーディションに落ちてしまう若者にもカメラを向け、
それもまたこの世界の一角を作っていることを示します。

「これはまさに僕らの物語なんだ」と参加者の一人が語る思いは、
全くその通りであり、また社会で自分の役割や居場所を求める
全ての人々に捧げる言葉だと思います。
この社会はあらゆるところでオーディションが行われています。
芸能に関わる事のみならず、就職、契約、競技、あるいは恋愛。
ほとんどの人々は絶えず、人に評価され選別される目に晒されます。
それだけに、「コーラスライン」の狭き門に挑む一途な想いが、
叶わない無念さも叶った歓喜の歌も、
熱く心を揺さぶるのではないでしょうか。

また、このドキュメンタリーはかなりドラマ的なストーリーを形成し、
感情を刺激して出演者を輝かせるための編集となっています。
こういう作品を観ると、実際のことを記録するドキュメンタリーも、
やはり作家の意思を強く反映する創作物としての側面も
持っているのだと改めて認識させられます。
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