演技の底力2008年12月04日 23時01分53秒

スティーブン・キング原作、
ジョン・キューザック&サミュエル・L・ジャクソン共演
「1408号室」についてのこと。

<物語>
幽霊が出る場所に調査に行き、泊まると出ると言われるホテルには
実際に泊まってみてその体験から本を書くオカルト作家・マイク。
ある日、彼の元へNYのドルフィンホテルから「絶対に1408号室に
入ってはいけない」と書かれた葉書が届く。
1+4+0+8=13という不吉な数字。
真偽を確かめるため新聞記事等を調査すると、
不可解な死を遂げた人間が何人もいることがわかる。
さらにホテルの現支配人に迫ると、開業以来、
部屋に宿泊した56人全てが1時間以内に死亡していることがわかり、
現在は常に、塞がっている部屋という扱いをしているという。
マイクは支配人の静止を聞かず部屋に宿泊するのだが・・・。


スティーブン・キングの映画史上、№1ヒット
と言われても、海の向こうのことなわけで、
さらに「名も実も得た巨匠の面白い原作が
必ずしも面白い映画にはなるとはかぎらない」
とは、キングのためにあるような言葉なので、
毎回不安半分、期待半分で観に行っております。

近作の「ミスト」が良かったのと、ジョン・キューザックならばと
今回はやや期待傾向で観に行きましたが、
怖がることはできましたので良しとしましょう。

キング原作のホラーの映画化で私が良いと思うのは
「ミスト」「ミザリー」などの人間の心の闇を覗きこむような作品。
そこで怖がらせないと大体にして失笑してしまいますので。

今回は心理描写については仕掛けの演出よりも
ジョン・キューザックの演技が全てという感じがあり、
時折、オイオイと言いたくなりそうな恐怖仕掛との
執拗なせめぎ合いだった気がします。

そんな仕掛けの中でちょっとゾクッとしたのが、
ジョン・キューザックが1408号室の鍵が壊れて閉じ込められ、
向かいのビルの窓の奥に立っている人物に助けを求める場面。
何度呼びかけても反応が鈍い相手。苛立つジョン。
声だけではなく身振り手振りも交えて説明しようとする。
すると、相手も何やら身振り手振りを始める。
と、そこで何かおかしい・・・と気づく。
相手が行っている動き、それは自分のジェスチャーと同じ。
右手を挙げれば同じ手を上げ、ゆっくり振ると向こうもゆっくり。
鏡ではない。確かに窓は開いている。顔はよく見えない。
しかし、あれはもう明らかに「自分」だ。
そう気づいた時の、自分の分身がいるような得体の知れない不安。
そして希望が消えていく喪失感、焦燥感。
この映画の名場面としたいです。

もっともこのシーンの直後には唐突な演出がやってきて、
これまた苦笑いしてしまう破目になるのですが。
夢オチめいたものまで登場して密室ホラーでやれることは
大体やっているような感があります。
演技と演出できわどいところで踏みとどまっています。

1時間以内に死ぬという設定ならば、
もう少し上映時間と作品内時間をリンクさせる演出が
あればさらに臨場感がでたかもしれません。
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