バウアーに七瀬とか篤姫とか2008年12月15日 23時17分24秒

「ナニコレ珍百景」、ゴールデンに移ってからあまり観ていませんな。
深夜帯のときは大好きだったのですが。
過去の珍百景の再放送とかやっていますでしょ?
あれがどうもただの水増しにしか見えないところとか、
いろいろ準備不足でただゴールデンいってしまった感があって、
見る気テンションが下降しているのです。
人気出てきたから、ってだけじゃいけないです。


「24 -TWENTY FOUR-」シーズン6。
キネマ旬報等でクオリティの下降を指摘するような評がありましたが、
実際に見てみるとやはり面白い(評でもそれは言っている)。
第1話で、大統領に就任したのがパーマー大統領の弟だったことに、
素直に「ああ、この人がなったのかあ」と安心したのがジャブ。
今テレビで放送中の部分はジャックとその父親との対決。
その前にはジャックの弟との対決があって、
やっぱり肉親の呪縛というのはドラマを盛り上げるなと再確認。

この父親、演じてるのはジェームズ・クロムウェル。
映画では「グリーンマイル」の刑務所長役や、
「LAコンフィデンシャル」の悪の黒幕など、
温厚な役から悪の顔を裏に隠す役まで幅広い俳優。
今回も刻まれた皺に複雑な過去と哲学を滲ませる好演。

しかし回を追うごとに募る思いは、
「ああ、これをドナルド・サザーランドが演じていたらなあ」ということ。
もちろんドナルドはジャック役のキーファー・サザーランドの実父。
明らかにドナルドを当て書きして描かれていることが分かります。
抑えた表情に時折不気味な含みを醸し
複雑で絶対的で巨大な壁となる父親という存在は、
ドナルド・サザーランドにこそ相応しいはず。

実際、ドナルド本人にオファーはあったのだけれど、
息子キーファーを殺そうとする役ということで断ってしまいました。
悪役はこれまでにもやっているけれども、
息子思いで知られるドナルドらしいエピソード。


NHKで木曜の8時から放送していた「七瀬ふたたび」。
これもキネマ旬報でちょっと褒めていたドラマ。
1975年の筒井康隆原作のSF小説の映像化。
(小説はこの作品の前後に1作ずつ、シリーズとされる作品あり)
1979年に映像化され、一部で約30年ぶりの映像化、
などというようなことを言われていますが、
1990年代に2度映像化されています。
内容は超能力を持った主人公・火田七瀬と同じく
超能力をもった仲間達、あるいは敵対する者達との
アクションやミステリーを交えた群像ドラマで、
筒井康隆風の青春ドラマの側面も強く持っています。

そんなことはさておき、主演の蓮佛美沙子が良い。
映画「犬神家の一族(2006年版)」「バッテリー」に出演していますが、
やはり印象深く魅力を発揮したのは我等が巨匠・大林宣彦の
「転校生~さよなら、あなた」での主演、
女の子になってしまった男の子役に他なりません。

しかし今回はそれを上回っている!(当社比)
大林マジックがなくとも魅力はひきだされていると思います。
蓮佛美沙子の魅力とは?それは神秘性ではないでしょうか。
美少女であることは確かなのですが、溌剌とした健康美人でもない、
アキバ系ロリ系萌え系でもない、溢れる知的美人でもない。
キネマ旬報で指摘していたのはその憂い顔で、
薄幸で消え去りそうな雰囲気が火田七瀬のイメージにあっています。
ただ、それ以前に上記に挙げたタイプに当てはまらない、
なんだか分からない神秘性が魅力なのではないかと思います。

「れんぶつ・みさこ」というやや読みにくい音の名前は逆に印象深い。
「蓮」の花に「佛」、「美」しい「沙」の「子」。
沙は川底や浜の粒子の細かい砂を指す漢字で、
転じて洗練されたというような意が込められることがあるそうな。
苗字の方に倣えば沙は梵字に当て字されることもあります。
名前が体を成したか、体が名を考え出させたかはわかりませんが、
実にいい名前だと思います。


最後は大河ドラマ「篤姫」について。
仕事から変えると丁度夕飯を食べながら見る程度の感覚でしたが、
気づかぬうちに世間でも有名になっていて、なるほど、
民法でも企画を立ていていたのはそういうことだったのですか。
堺雅人の快演・怪演は新聞にも出ていたそうですが、
私は篤姫役・宮崎あおいと、小松帯刀役、瑛太の関係に注目でした。

少女と少年時代の淡い恋心は取り立てていうこともなく、
身分の違いが歴然としてきてからは喜劇関係になりますが、
後半の各々の確固たる志が定まってからは凄まじい。
互いの分を弁え立場は異なれども深い信頼が感じられ、
最終回前の回での一橋邸の陽だまりの中での碁の対局で頂点に。

「私はあなたをお慕いしておりました」と帯刀。
「知っておりましたよ」と観音菩薩のような笑みを浮かべる篤姫。
では、あの時に想いを打明けていれば、あなたは・・・と帯刀。
未練たらしさも感じるもののこれぞ、男としては当然。
一縷の希望であり、そのしこりを溶かさねば前には進めぬ。
そこで一瞬篤姫が無表情の中に慈愛を込めた微妙な表情に変わる。
「それを聞いてどうしようというのですか?」確かに。
この後、篤姫は会心の一言とともに、
数分前よりも格段に輝く神々しい笑みを見せます。

このシーンは恐ろしいまでに素晴らしい。
主に理詰めか勢いのTVドラマにおいて
映画でなければ、しかも今ではフランスあたりでなければ
できそうもない大人(精神的に)な愛の描き方。
脚本と二人の役者の相乗作用であることは確か。
かつての月9のトレンディなど素粒子レベルに粉砕する一撃。

篤姫と帯刀の大きく深い想いと絆。
かようにありたいものと思うのでありました。
難しいんですけどね。
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