そして、また2007年11月25日 22時13分23秒

仕事日はプライベートに割く時間が1時間も無いような状態。
近日、増員される人員に期待です。
今は休日に仙台フォーラムで映画を2~3本観て
ni vu ni CONNU cafeで食事とティータイム、
cafeでお菓子を買って帰り自宅でパンフ読みながら食べる
という過ごし方が唯一、私の心に栄養を与えてくれます。

では今夜は「サッドヴァケイション」
青山真治監督の最新作、私の贔屓の浅野忠信主演です。

<物語>
密航の手引きをしていた健次(浅野忠信)は
中国孤児の少年を引き取ろうとしたことから追われることになり、
運転代行に職を変え、知的障害者のユリと3人で暮らしていた。
ある時、運転代行で送り届けた運送会社社長・間宮の会社兼自宅で、
間宮の妻・千代子(石田えり)を目撃し、健次は驚愕する。
彼女はかつて健次を捨てて家を出た母だったのだ。
健次は間宮の会社で働くことになるが、
その胸には母への復讐心を燃やすのであった。


この物語は青山監督の過去の作品
「EUREKA」「Helpless」から話が続いています。
私は「Helpless」は未見ですが、
健次はその主人公で、本作の過去は「Helpless」にあたるとのこと。
「EUREKA」からは役所広司が面倒を観ていた梢(宮崎あおい)が登場。
もちろん観ていなくとも話が分かるように作られているものの、
片方でも観ているとやはり感じ方が違うと思います。

この映画の感想で「女は強い」「母は強い」という言葉をよく耳にします。
しかし、私はむしろ「強い」よりも「怖い」と感じます。
それも「強さ」や「畏怖」あるいは「敬意」とも異なる、
「得体の知れなさ」や「おそろしさ」に近いものです。

ただ、妖怪や狂人の怖さではなく、
言うとおりにしていたら自分がまるまる取り込まれて
自己を失う可能性があることへの本能的な抵抗から来るものだと思います。
子が親に対して潜在的に持つ、反抗期に突出する感情とも思えます。

ある精神科医はこう言います。
愛は危険性を孕んでおり必ずしも良い方向には働かない。

千代子の母性が、健次に対して優しすぎて怖い。
海のように深いとも形容される母性も、
その深淵を覗けないほど深ければ怖い海へと変わります。

健次が弟の命を奪うまでに至るのは、
その怖さを感じて包まれまいとして、
霧を振り払うように抵抗した結果ではないでしょうか。
さらに我が子を我が子により殺された千代子が、
健次の恋人・冴子のお腹の子に我が子を重ねることになると、
優しさが暴走を始めます。
間宮が放った平手打ちも、彼も恐ろしさを感じ、
やはりその得体の知れないものを振り払おうとした手ではないでしょうか。
演じる石田えりのかなりの力はかなり大きいです。

そんな恐ろしさを感じさせつつも映画は
特に健次が母を越えるでも理解するでもなく、
はぐらかすようにラストを迎えます。
殺伐とした話もありながらメルヘンチックな微笑ましさを与えつつ。

まあ、人生もそんなものかもしれません。
はっきりした決着はなく、次の出来事が積み重なっていく。
激動の変化の後にゆったりとした流れに変わる。
健次が父となり親の年になり、感じ方が変化するのかもしれません。

出会いが変える2007年11月25日 23時17分40秒

そういえばこのブログのテンプレを変えてみました。
鯛焼きが美味しい季節になりましたね。
鯛焼きをどの部分から食べるかで性格を占う占いもあるそうですよ。

続いての作品は「ミス・ポター」。
ピーター・ラビットの原作者、ビアトリクス・ポターが、
最初の本を出版し、湖水地方の自然を保護する活動を始めるまでを
ラブストーリー風に綴る作品。

<物語>
1902年、封建的な時代の風潮を残すイギリス。
上流階級ではあるが、ポターは自分の仕事を持つことを望んでいた。
彼女の夢は動物と自然を物語の主人公にした本を書くこと。
失敗すれば諦めるだろうと、両親は出版社を探すが、
引き受けた出版社の編集者ノーマンはまだ経験の浅い新参者。
要は失敗しても大して損害は無いだろうと周囲に軽く見られたのだが、
出版するとベストセラーとなり、次々に続編を出版することに。
そしてポターとノーマンは互いに想いを寄せていく。


ハリウッドスターのジョン・ボイドが、
「スターに成れるか否かはチャンスがあるか無いかの差だけだ」
と言っていましたが、正にこれは人と人との巡りあいが
大きな変化を生むという話であります。

ミス・ポターは人柄も良く夢を抱き、後年は自然保護の礎を築く立派な人。
ただ、自分の道を進むあまり縁談を断り倒し、
気づけば年齢的にもというところまで。
「ブリジット・ジョーンズの日記」のレニー・ゼルウィガーが
演じるものだからこのあたりが妙にリアル。

彼女の才能が世に出るにはノーマン(ユアン・マクレガー)
との出会いが必要だったのは確かで、
後にノーマンを失い悲しみにくれる時が来ても、
そこに救い主となるパートナーが現れます。

彼らとの出会いが無ければ、ピーターラビットも命が与えられず、
イギリスの自然を保護する動きは大きく遅れていたかもしれません。
志はよし、されど一人では願い叶わず。
想いが強いから人を呼ぶのかは定かではありませんが、
ミス・ポターが単なる夢見がちな箱入り娘で終わらなかったのは、
二人の人物との出会いであったことは間違いありません。
人生のみならず世界を変える出会いは確かに存在します。

主役はスター二人ですが、ピーターラビット達はあの絵のまま
アニメーションでかわいく動きます。
そういえばアメリカ映画ではあまり無いアニメーションで新鮮。
チェコなどの欧州の雰囲気に近いです。

社会性、歴史性を含みつつも鑑賞後に暖かな余韻が残り、
定番の恋愛映画とは数段上の質に仕上がっています。
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