贅沢なオタク映画2007年11月04日 23時51分31秒

日曜も働いておりました。楽な仕事でしたけどね。
おかげで帰りに映画を観てしまいました。
そして明日は休みです。そして明日も映画です。

それはそれとして今日はまた9月初旬の過去に戻り、
クエンティン・タランティーノ監督の
「デスプルーフ in グラインドハウス」に参りましょう。

<物語>
デスプルーフとはイカレ殺人鬼スタントマン・マイクが
手塩にかけて改造した、運転手が絶対に死なない車である。
彼は女の子達を口説いては最後に殺人車で
彼女等が乗る車に激突し快楽を楽しんでいた。
だが、ある日彼がある女の子達にちょっかいを出したのが運のツキ。
彼女等もまた恐怖をものともしない
アドレナリン全開スーパーウーマンだったのだ!


という冗談のような話で構成された本作は、
「よく撮ったもんだ考えたもんだ、こんな映画」と
もちろん誉め言葉として捧げることができる
間違いなくタランティーノのキャリアに輝ける渾身の作。

「グラインドハウス」とはアメリカで60年代~70年代に数多く存在した
B級あるいはZ級映画を2~3本立て、いわゆる抱合せ方式で
上映していた映画館で当然地方や場末の寂れた映画館。
グラインドという言葉自体、いわゆるエッチな語源があり
転じてポルノ映画も当然これでもかと上映。
普通の作品にしてもとりあえず流しとけ、的なもので、
グラインドハウス用に適当につくり、
とりあえずアクションとハダカ出してりゃいいよ、
な企画ともいえないようなもので作られた作品。

しかし、逆に「裸だしてればいい」ような制約の少ない現場は
ときにスタッフの暴走を促しとてつもない快作を生み出します。
ほとんど失敗するんですけど。
日本でもそんな歴史はあり、B級やポルノ映画ばかり適当に何本立てで
制作しまくった中から世に出てきた監督もいます。

それらは映画の裏歴史でありながられっきとした土になっています。
それゆえにグラインドハウス映画に讃辞を捧げ復活を試みようという
タランティーノがロバート・ロドリゲスと組んでぶち上げた企画。

ただ、人によってB級の定義ももはやあいまいで、
かつて酷い扱いを受けたものが監督の出世とともに再評価されたり、
難しいことは考えずに飲み屋のネタにするぐらいが正しいようで
もろもろの裏話に映画オタクが最も饒舌になる分野でもあります。

タランティーノのそんなオタクぶりが本作では存分に発揮され、
「あったあった!そんな感じのやつ」というシーンが満載。
しかもそれに凝り過ぎるあまりパートが長くなり
オイ!ここまでがフリかよ!と叫んでしまいます。

前半の女の子達は登場は長いけど殺されるだけ。
エッチだけが印象に残ります。
後半でデスプルーフとマイクをボコボコにするスーパーヒロイン登場、
なわけですが、この子達の昔の映画のスタント秘話を披露する
会話はもはや映画オタクの会話です。
タランティーノの吹替えのようなものです。

とにかくそんな感じで好き放題詰め込みまくった暴走のおかげで
分けの分からぬ昂揚感に包まれ、分けもわからず快感なのであります。
「キル・ビル」より遥かに面白い本作はスーパーガールズの
リーダーはキル・ビルでユマ・サーマンのスタントをやった人。
アクションは1000%カーチェイスですが、
一人がボンネットにしがみ付き時速100キロ以上で
車同士ガンガン体当たりを本当にやるという大迫力の映像。
これを見るだけで満足。他は忘れていいです。
そんな映画。もちろん誉め言葉。


本作はアメリカではロドリゲスの監督作と二本立てで、
まさしくグラインドハウス形式で上映されたもの。
しかもわざわざフィルムの劣化や音飛びまで再現しているのだから、
もはやキ○ガイと言えましょう。そんなメイキング話が面白いのです。
それはやっぱりオタクによるオタクのための映画でしょう。
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