躊躇いと後ろめたさ2007年11月11日 23時17分40秒

今年はTV・映画ともに密かに戦争の再検証が多いです。
今回の作品は「特攻」です。

<構成>
亡き叔父が特攻隊員として訓練を受けていたことを知った
日系アメリカ人監督リサ・モリモト氏が
元特攻隊員達の生存者の証言の記録を試みた。
共同制作を担当したのは日本出身在住のアメリカ人、
日本映画の英語版字幕の第一人者リンダ・ホーグランド氏。
アメリカと日本の間の複雑な鏡のような奇妙な境遇の二人が
微妙な距離から純粋な日本人では描けないドキュメンタリーを制作する。


最初に特攻隊員を知ったのは原爆と同じく
漫画版「はだしのゲン」だったでしょうか。
確か出撃した後になって母親に会いたくなった隊員が
故郷の空へ命令違反を犯して戻った話があったと思います。

その後、森村誠一の小説「青春の証明」で
青春の日々を奪ったこと、軍部の愚行が書かれているのを読み、
そこで設備の貧相さ、無茶苦茶な作戦にも触れたのでした。

敵に突っ込まずに帰還した生存者達は
「死んできます」と言った反面表に出られず、
外出の自粛以外にも軍によって外から隠されたといいます。
そんなバカバカしい対処も日本人の悪癖です。

特攻作戦の襲撃を受けた米軍兵士の生存者達の証言からも
まともな神経では考えられない恐怖を感じたことが受取れます。

日本の一部で美化される「神風」「特攻」が
欧米においては狂信的自爆テロと同一視される傾向がある
ということも我々が知るべき事実です。

「俺は君のためにこそ死にに行く」でこの話は脚色せずに
証言をまとめたドキュメンタリーにするべきだと感じましたが、
本作が一つの応えになったと思います。

想い人のために死んだ人、逆らえなくて死んだ人、
どちらも本当のことだったのでしょう。
配属になった部隊も上官も赴いた戦地も違えば
戦争に対して全く異なった意識を持つことも当然です。
ただそれをどちらかにまとめることはできません。

「負けて残念がっていたのは後方にいた人達だ。
前線の兵士達は皆、戦争が終わって良かった、
これで家に帰れると安心していた。」
と、他のあるドキュメンタリーで証言していた方がいました。
当然のことでしょう。ですからあの時代を体験せずに
あの時代を擁護する人は胡散臭い。
TVで熱く語る人もTVに向ってあれこれ言う人も。

私は戦争に関して知ることは求めますが語ることには躊躇いがあります。
実感としてないのに必要以上に語ることへの後ろめたさです。
「ヒロシマナガサキ」でも感じた想いですが、
憤りも哀しみも憐れみもごちゃまぜになった、
ただ確かなのはやってはいけないという想いだけです。
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