これで決まりか! 「オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE」2011年01月29日 23時55分56秒

平成仮面ライダーシリーズの最高傑作(当社比)「仮面ライダーW」にまた会える!

前年のMOVIE大戦に倣い三部構成でお送りする仮面ライダー劇場版、
放送中の「仮面ライダーオーズ」編、その前作の「仮面ライダーW」編、
そして二者が出会いともに戦う「MOVIE大戦CORE」編から成る、
「仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE」
についてのこと。

タイトル長いよ!


さて、会えると言っても今回は「W」レギュラーメンバーの登場は少ない。
「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」での
TV放送開始前の顔見せ的なゲスト出演から、
「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010」にて
第0話と言える「ビギンズナイト」とディケイド真の最終回での共闘を描き、
「仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ」における
物語も演技の成熟もTVシリーズの財産を全て積み重ねた集大成的構成に比べれば、
あくまでも主役をオーズに譲った後の今回はゲストの様相が濃い。

加えて今回は、「W」TV版以前の物語「ビギンズナイト」をさらに遡る、
主人公・左翔太郎の師匠、ヒロイン・亜樹子の父、
鳴海荘吉=仮面ライダースカルの誕生秘話が「W編」に入子の構造で描かれる。
このため、ライダーWおよび翔太郎&フィリップの出番はさらに少ない。
しかし、吉川晃司アニキの演じる鳴海荘吉が超絶的にカッコいい!

「W」は2009年の設定で、荘吉が電話で会話する幼少の亜樹子から考えても、
スカル編の時代設定は1990年代半ばぐらいにしか遡らないはずですが、
場末のうらぶれた探偵事務所と貴賓館風の舞台は大正浪漫の雰囲気すら漂う。
翔太郎は「長いお別れ」などのハードボイルドを好んでいるが、
荘吉のハードボイルド好みはさらに戦前まで遡りそうな勢いであります。

うっすらと顎を覆う絶妙な髭、一見すると気障で潔癖そうな白スーツの、
よくみると柔らかくしなやかかつ厚みと余裕を感じさせる、
まさに鳴海荘吉=吉川晃司その人を感じさせる素材と着こなし。
斜めに被った帽子から片方の目だけを覗かせる所作。
帽子を胸の前で軽く持つときの指の押さえ加減・・・。
そして過去から現在までのライダー全てに共通するべき要素、
優しさと哀しみを秘めたが故に力強い輝きを宿らせる瞳・・・。

これをもとにTVシリーズの翔太郎を振り返ればやはり、
初期~中期にはハードボイルドの表層に囚われていた感が強い。
戦いを重ねていくなかでフィリップにハーフボイルドと笑われながら成長し、
後期にはそれを彼なりのハードボイルドとして掴み取った。

それこそ鳴海荘吉の内面から滲み出るハードボイルドの「コア」ではないか。
上澄みのかっこよさを倣って追いかけるだけでは誰にも追いつけない、
清濁を併せ呑んだ先にある、人間としての成熟領域への到達。
それは、深く、静かで、そして力強い。

時間軸にして「W」の最古のストーリーとして描き出されたスカル編は、
その腹の底に響く様な重さを持って、Wの本を閉じる最終ページとなる。
最後のピースは嵌っていたが、さらに完全な形で補完されたという印象です。
「W」は近年の特撮シリーズでは役者の質が格段に高いと僕は思ってますが、
吉川さんが演じてくれたことはさらに幸福なことだと思います。

素晴らしきスカル編の反面、やや残念に思うところもなくはありません。
「オーズ編」ではTVシリーズの根幹のテーマ「人間の欲望」について、
日本史上最大の欲望を持った人物として織田信長を復活させるという、
「仮面ライダーオーズ ノブナガの欲望」を描いていきますが、
クライマックスのオーズ対鎧武者怪人のバトル演出は物足りない。

鎧武者怪人はノブナガであり欲望の悪しき側面の象徴。
一方で、明智光秀の子孫という設定でバレエに打ち込む明智よしの
という女性が登場し、彼女は欲望の清き側面を象徴する。

その対比は良いのですが、よしのがバレエを舞っている姿と
オーズと怪人のバトルのシーンを一つの映像に重ねる演出が、
おそらく欲望の光と闇の両面を描こうとしていると思われるのですが、
そのシーンはこちらへは良いシーンとしては響いてこなかった。

田崎監督は「仮面ライダー THE NEXT」でもライダーの激闘と
悲しき運命を背負った少女と、二つのシーンを併行する演出を試みましたが、
結果としては双方に対して感情移入しきれなかった様に感じます。

そういった試みは決してよせばいいのにというものではなく、
強力な念をを抱く二者が相乗効果で極限までお互いを高めることは、
成功した暁には伝説に残る名場面が誕生すると思います。
反面、二者ともに不完全燃焼か空中分解する危険も二倍になる。

今回はまた、それを補い帳消しにも果たせるはずだったラスト
「MOVIE大戦CORE」も、目玉の「仮面ライダーコア」の存在自体が曖昧で、
過去の仮面ライダーの記憶??がなにやらさっぱりわからない。
まあ、新ライダーと新フォームの見せ場として観賞すれば良いけども。
序盤の仮面ライダースカル編の出来が良かっただけに、
全体のバランスとしてはやや煮え切らないものが残ってしまう。

さて、劇場版・仮面ライダー次回作は40周年作品にして
ディケイドに続いてまたまたオールライダー大集合の超大作、
「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」
なんと4月1日公開と言いますからもうあっという間。

さすがに「W」の出番は少ないでしょうけど。
次もぶっちぎってもらいたい。
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