戦うことの意味 「ニューヨークお受験戦争 ~それは保育園から始まる~」 ― 2011年01月07日 23時46分19秒
「ニューヨークお受験戦争 ~それは保育園から始まる~」
についてのこと。
についてのこと。
■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
http://www.mikoukai.net/033_nursery_university.html
原題:Nursery University
2008年 アメリカ (90分)
監督:マーク・H・サイモン、マシュー・マカー
アメリカでは2000年以降、第三次ベビーブームが起こり幼児数が増加。
加えて成功を掴む町・ニューヨークでは将来良い学校に入れる様に、
子供を良い保育園に入園させるためのお受験戦争が勃発しているとのこと。
本作は8ヶ月に渡り戦争を戦い抜いた親子達に密着したドキュメント。
アメリカでベビーブームが起こったわけには触れられていないものの、
第一次は第二次世界大戦後、第二次はベトナム戦争後と
定義されていることを考えるとやはりイラク戦争の影響なのか?
第一次は第二次世界大戦後、第二次はベトナム戦争後と
定義されていることを考えるとやはりイラク戦争の影響なのか?
それはさておき、ニューヨーク・マンハッタンで繰広げられる戦争。
日本でお受験が話題に上っていたのはいつの日か?
ちなみに滝田洋二郎監督が映画「お受験」を発表したのは1999年。
以降、隣国の韓国でも熾烈なお受験戦争が繰広げられていたと聞く。
なお、お受験と言った場合、単なる入学試験の競争ではなく、
幼稚園や小学校の受験の低年齢層の受験でなおかつ、
子供よりも親の方が熱心な場合を指すことのようです。
この映画には主に5組の親子が登場。
裕福な家庭のトニーとシンシアの愛娘ジュリアナ。
夫婦ともに高学歴のロディとハイディの息子ジャクソン。
ハーレムに住み学費に悩むクリスとキムの息子のキーロン。
シングルマザーのアリータの双子、フランチェスカとジアン。
(彼女は全米史上最高齢の57歳での双子の母親となった。)
ごくごく一般家庭のワイアットとスネハの娘のレイラ。
仕事と収入や家庭環境、教育に対する考えの違いはあれど、
こども達への愛情は同じ様にひしひしと伝わってきます。
どの夫婦もみんな良い夫婦です。
この映画が特に密着する、マンデル保育園は
定員20人に対して1日だけで500件の希望。
全日クラスで学費はおよそ2万ドル。
もちろん、後々の大学入試の内申書に良いと言われている。
はあ~、とため息つくしかない。
さらに悩める親のための入園コンサルタントなる職業も。
面接のときのアドバイス、NGワード、入園願書の書き方から、
心理面のケアをすることもお役目のご様子。面談7回で4000ドル。
最初のアドバイスを受けていたハイディは言葉を失う。
そのまま仕事があると言ってそそくさと出て行く。
彼女は他の親よりも比較的冷静な感覚を持っています。
願書の電話受付開始日には夫婦がそれぞれの電話の前に待機。
「願書をください」というだけのを、繋がるまでひたすらかけまくる。
さながら人気アーティストのチケット予約開始日の如く。
電話よりも行った方が良いと思う親は門前払いされる。
トニーなどは職場のデスクからかけているのですが、
これも土地柄か職場でも「ああ、お受験ね」と許可されるのでしょうか。
そんな様子からもある意味、このニューヨークのお受験の異常さが伺えます。
周りから許容され、認められている、適応する体制が整っていることが既に。
トニーとシンシア、特にトニーは熱心で受験ガイドブックを熟読し、
願書の表現の一字一句にまで拘ってシンシアに窘められる。
15校の面接に行くと言い出して12校にしてと止められる。
最終的には7園に願書を提出します。
他にも説明会に出席して終われば挨拶に行ったり愛想を振りまき、
迷惑にならない程度に保育園に電話をかけて覚えてもらったり。
落ちても手紙を書いて自分の子供をアピールしようと必死。
中には裏工作をして入園させようと企む親までいて事件になるというから。
良い保育園も人員と予算と施設規模があるのならば、
入園希望者はできるだけいれたいと思っている。
しかし現実には面倒を見られる子供の人数は限られてしまう。
それぞれの保育園が、フランス語を教えるとか独自の教育方針を持ち、
大学受験を見通して将来に適応した保育園を選ぶのだから、
保育園を増設して受入れ可能児童を増やせば良いという問題ではない。
大学の入試制度から見直していかねばこれは変わらないでしょう。
熾烈な戦いを潜り抜けた5組の親子はそれぞれの切符を手にします。
希望の保育園に入園できた親子、奨学金を受けられる親子、
エリート保育園ではないが子供達の笑顔が絶えない保育園に通う親子、
引っ越し先の新天地でお受験戦争から解放される親子・・・
皆それぞれ、落ち着くところに落ち着いて幸せそうです。
この映画、少しケチをつけるとすれば、親子も保育園も良い人ばかり、
最終的には良い結果ばかりということで、これでは物申しているのか、
それとも戦い抜いた先には良い結果があると勇気づけているのか。
落ちこんでいる人、無機質な合否判断を下す保育園もあるかもしれないのに。
社会の歪みとなっている部分がなかなか見えてこない。
成功を掴む街、ニューヨーク。成功を掴めない者もまたニューヨーク民です。
まあ、そんな映画の欠点?も子供達の笑顔を最後に見せられては、
もうどうでも良くなってしまうのですがね。
ただただ、この子達の幸せを願っております。
お父さんとお母さんが必死に戦い抜いたことを忘れないで欲しい。
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