本当に幸福にするための戦い 「イエスメン」「イエスメン2」2011年01月05日 23時24分32秒

さて今日は二本立てで行きましょう。
何故ならば未公開映画祭の作品中、この2本がシリーズ関係にあるから。

「イエスメン ~大資本と戦うお笑いテロリスト~」
■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 http://www.mikoukai.net/015_the_yes_men_1.html
原題:The Yes Men
2003年 アメリカ(83分)
監督:ダン・オルマン

「イエスメン2 ~今度は戦争だ!~」
■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 http://www.mikoukai.net/016_the_yes_men_2.html
原題:The Yes Men:Fix The World
2009年 フランス・アメリカ(90分)
監督:マイク・ボナーノ&アンディ・ビックルバウム


「イエスメン」、それは、大企業や政府の悪行と戦うため立ち上がった
マイク・ボナーノ&アンディ・ビックルバウムのコンビと、
その支援者達によって構成された集団、その名も"お笑いテロリスト"。

「1」も「2」も彼らの行動を追っていく形式は共通ですが、
「1」が第三者視点で彼らを追っていくのに対して、
「2」はイエスメン自身が監督しているためかより主観的になり、
ほんの些細な"つくりもの"も織り込まれています。

彼らの主な手口?はこうです。
自分たちの利益追求の欲望のために貧困層を苦しめる悪い奴ら
(大企業・政府機関など)のなかから標的を決めたら、
その偽サイトをインターネット上に立ち上げる。
言っておくが流行りのフィッシングサイトなどというケチなものではない。
"しかるべきところ"から連絡が来るのを彼らは釣り糸を垂れる様に待つ。
そして餌に食いついてきた"国際会議への出席依頼"や、
"講演会の依頼"を承諾し、その組織の人間になりすまして現場へ。
そして、そこで組織の人間としての論理を展開しながら、
彼らの"悪行"をときに大真面目に、ときにおバカに暴露していく。

簡単な例を挙げると、企業の公害被害を被ったがなんら補償されない人々に、
企業の人間になりすまし、私達は彼らの救済のためにお金を出します、と言い切る。
それもBBCに出演して。本物の企業側は大混乱、株式市場にも多大な影響が出る。

「1」ではWTO(世界貿易機関)の人間に成りすまして会議に出席、
大企業・経済大国に味方する彼らの論法で突き通しながら、
遂にはWTOのやり方は間違っていたので解散しますと発表する。

そんなことが可能なのか?例え思いついても実行できるのか?
バレたら物凄い罰を課せられるのではないのか?

イエスメンにはそんな躊躇いも恐れも無い。
BBCにバレた時の彼らの行動は実にしたたかです。
「企業が今も人々を苦しめているのは揺ぎ無い事実です。
我々はそのためにこのような手段で戦っているのです。」
自分達の正義を確固たる自信を持って推し進める類まれな度胸、
そして善でも悪でも貪欲にネタにするマスコミの性質を熟知しています。

最近よく思いますが、正しかろうと間違っていようと
自信を持って突き進む人は人々を魅了するのではと考えています。

救済されるとぬか喜びさせられた人々はもちろん失望と憤慨を感じますが、
彼らも、忘れられかけた問題を再び注目を浴びるようにしてくれた、
公の場で広く第三者に知れ渡ったので加害者側も相談のテーブルに
座らざるをえない状況を作り出してくれたことには感謝すると理解を示します。
実に痛快でかつ、意義のある活動だと思います。

その一方で、天下のBBCや、企業・政府の上層部などなど、
一流の大学を出たりそれなりに勉強をしている人々ばかりのはずなのに、
何故簡単に騙されるのか、とそこから見えてくるのは、
我々が以下に人を見た目で判断することが多いかということ。

パリッとしたスーツに身を纏い、話の内容に限らず自身に溢れた話ぶり、
それらしい名刺やIDカード、凝ったプレゼンテーション映像などなど、
それでとりあえず、私はWTOの人間です!と言い切れば信用される。
もちろん、多岐に渡る専門分野の知識に秀でてるからこそ成せる技。

さらに恐ろしいことに、ウ○コで作ったハンバーガーや、
どうみても股間の男性シンボルにしか見えないモニターテレビなど、
とても本物とは思えないキ○ガイ発言やアホな資料を見せたりするのに、
それを見た会議や講演の参加者達は沈黙や憤慨こそすれ、
イエスメンが偽物とは思わないということに驚きます。
それもある種の滑稽さの露呈です。

そして、イエスメンを見た目で偽物と気づかずに信用するということは、
すなわち、本物の企業側の人間達が言っていることであっても、
その地位や名声、身なりなどから、冷静に考えれば変なことを言っているのに、
多くの人は綺麗な言葉や優しい言葉に騙されてしまう危険があるということ。
それも見通して早く間違いに気づけと暗に語ってるのでしょう。

彼らにとっては笑いは人々を楽しませて幸せにするというレベルではない。
滑稽かつ危険な社会のシステムを笑いで注目させることで改善を促し、
人々に安心して暮らしていける"本当の幸せ"をもたらすこと。
彼らの様な自身と行動力があれば、世界は本当に変えられる、
そんな勇気と希望を感じさせてくれる作品です。

イエスメンはあなたの支持によって活動を続けられます。
この未来を切り拓く笑いに満ちた二人を是非応援しましょう。

さて、ここからは1月25日の未公開映画祭終了まで、
未公開映画祭ネタで最終日まで突っ走ります。
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