狙い定めるターゲット 「ビアポン ~世界一バカなスポーツ~」 ― 2011年01月25日 23時48分15秒
さあ、遂に未公開映画祭の最後の1本です。
ビアポンなるスポーツ?にかける若者達の熱き青春を焼付けた
「ビアポン ~世界一バカなスポーツ~」
についてのこと。
■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
http://www.mikoukai.net/035_last_cup.html
原題:Last Cup
2008年 アメリカ (84分)
監督:Daniel Lindsay
「ビアポン」、それは近い将来、銀河系に生きる全ての知的生命体を
熱狂の渦に巻き込もうと予想される、人類の類稀なる馬鹿と叡智を融合させた
熱き魂と魂を全身全霊を玉とカップと神の血に籠めて競いあう、
最強にして世界平和を実現することも夢ではない、かもしれない競技である。
まじめにちゃんと紹介するならば、ピンポンの「ポン」とビールの「ビア」、
それを組合わせて「ビアポン」と呼称されたスポーツで、
テーブルを挟んで二者が向かい合い、テーブルを先手陣地後手陣地に分け、
テーブルの上に三角形または逆三角形などにカップを並べ、
カップにビールをいれ、そのカップに向ってピンポンの玉を投げ入れればOK。
入れられた方はカップを取ってビールを飲まなければならない。
早く相手の多くのカップに入れてカップを取り除いた方が勝ち。
なんだか真面目に解説する方がずっとバカバカしく聞こえませんか。
起源は明確ではありませんが、1950年代に遡るといわれています。
元々大学の若者達が酒を飲んでいたところで生まれて現在までの間に、
なんとなくルールが決まったのか地方ごとにルールに差異があるようす。
Wikipediaにもページができていたので詳しくはそちらをご参照のほどを。
日本でもこの映画の影響があったのかわかりませんが、
2010年に「日本ビアポン協会」が設立されているとのことです。
凄いけどときにはバカが集まる国・アメリカ(どこの国もそうか?)では、
既に世界大会が開催されており、今回の映画はその大会にかける若者達、
その一点にすべてを燃焼しつくした熱き勇者たちのドラマである。
憎まれ者の"貴様の支配者"トーン。
ジムでダンベルを持ち上げる彼のプロレスラーの様な肉体は
果たしてビアポンには必要なものなのか!?
本戦では野獣と化したパフォーマンスで観客を刺激する。
母親にはもっと他にきちんとしたことをして欲しいと言われる。
心優しきふくよかなる戦士"その男ハメル"アイスマン
まだ学生の彼は製氷機に氷を補充しているからアイスマン。
野球ファンの彼は趣味と実益を兼ねた球場での仕事もしている。
彼はビアポンが自分を変えるきっかけになればと思っている。
ボルチモアの知将"ショーン・スクエア"ショーン。
チーム「ショーン・スクエア」を結成し、小学校から?経験を積むその実力は
個人戦でも9回の優勝経験という確かな実績を持つ。
しかし彼の凄さはそれだけではない、膨大な試合の記録を全てPCに記録し、
投げの角度・距離・諸々条件の分析を重ね確率を割り出し自らにイン・プット。
ビアポンに本気を賭けたプロ選手"フセインの大量破壊兵器"チャンプ。
普通の会社員など自分には合わないと豪語し、競技に全てを注ぐ。
WEBサイトでチャンプを名乗り、対戦を重ねる武者だ。
ビアポンこそ自分が最強最高になれる場と信じている。
以上、映画が特に注目する猛者ども。ちなみに""内はリング&チームネーム。
彼らの他にもステキなデカイことやりそーな?奴らが次々に登場。
挑発的なものからウィットなものシンプルなものまで様々。
あれかどうか知りませんが"ショッカー"なんてものまであります。
彼らを含めた約250組が己の力を誇示し賞金2万ドルと優勝の栄光を掴むため、
草も木も無い嵐吹き荒れるビールとカップとテーブルのジャングルに
流した赤い血も勝利のVを描くネバダ州メスキートで開かれる世界大会に挑む。
バカなことを真面目に考えた奴がいた、そう言われる様に、
最初はほんの些細な遊びだったものがいつの間にやら世界大会になる。
しかしそれでも、バカの精神は失っていないところが好ましい。
バカとシンプルを守り通し、寛容の精神で独特のオモシロさが生まれる。
あくまで酒を飲む遊びに興じる者ども、哲学者になる者ども、
人生を賭ける者ども、力の入れる方向を間違ってる者ども。
相手の集中力を乱すこともテクニックの一つとして認められるお陰で、
"アメリカン剣闘士"などは、相手のやる気を削ぐこと"のみ"に力を入れ、
みょうちくりんなコスチュームとパフォーマンスに情熱を燃やす。
女の子がお尻振って集中力を乱すのもOKなのだから、
さすが酒から生まれたスポーツでございまして、
世界一バカなスポーツと呼ばれるゆえんの一つかと思われまする。
賞金はデカイけども、それを目当てにしたりバカに徹しきれない者は、
最終的に栄光を勝ち取ることも、皆に受容れられることもない。
"雑言娼婦"という社会人コンビが周囲から罵倒され今ひとつだったのは、
彼ら自身がビアポンに集まった人々に対して壁を作っていたからに過ぎない。
社会人としての仕事を優先する彼らはある意味で正しいのだが、
自分達の肝心な素性は出さず、周囲と自分達は違うという意識がある限り、
実社会においても健全なコミュニケーションなのかは疑問が残る。
彼らよりもトーンやチャンプの方が余程好ましい。
妙な気分にさせられるのは、大会は熱狂に包まれてはいますが、
どこかに青春の残光の様な、はかない空気がふと感じられることです。
アイスマンは特にそうですが、自分が勝負できる場所と思いつつも、
これで人生は良いのだろうか?という自問自答を繰り返している。
それは、ほとんどの人の心の中に漂っている正直な想いではないでしょうか。
だからこそ、逃避も奮起も万感の想いもすべてひっくるめて、
思いのたけを籠めた祭りは夢と希望へ向ってヒートアップしていく。
明日になればさえない仕事の日々だとしても、今はいいのさ全てを忘れて。
学生達はこの一瞬を忘れまいとして、社会人はあの頃の情熱を思い出すために。
だからこそ、逃避も奮起も万感の想いもすべてひっくるめて、
思いのたけを籠めた祭りは夢と希望へ向ってヒートアップしていく。
明日になればさえない仕事の日々だとしても、今はいいのさ全てを忘れて。
学生達はこの一瞬を忘れまいとして、社会人はあの頃の情熱を思い出すために。
愛すべき奴らに、惜しみない乾杯を。
僕もバカを惜しみなく推進していきたい。
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