蝕む病魔 「アンダー・ザ・スキン ~ライム病との戦い」 ― 2011年01月16日 23時12分10秒
さあ、未公開映画祭の作品も残すところあと、10本になりました。
1月25日のWEB配信終了日に最後の作品の記事をUPして完了します。
それまで観賞と執筆に走り続けますよ!
では今日は39本中、観賞30本目の作品です。
1月25日のWEB配信終了日に最後の作品の記事をUPして完了します。
それまで観賞と執筆に走り続けますよ!
では今日は39本中、観賞30本目の作品です。
ライム病。
聞きなれない病名ですが、アメリカでは深刻な社会問題となっている病気。
「アンダー・ザ・スキン ~ライム病との戦い」
についてのこと。
■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
http://www.mikoukai.net/038_under_our_skin.html
原題:Under Our Sikn
2007年 アメリカ (102分)
2009年アカデミー賞 ドキュメンタリー部門 ノミネート候補作品
監督:Zahava Wilson
ライム病は1975年にコネチカット州オールドライムで発見され、
次いで1981年に病原菌であるボレリア菌が発見される。
この病原菌は、鹿に付くシカダニ等を媒介して人体に感染する。
人体に入り込んだ病原菌は神経や内臓にも入り込む危険性を持っており、
症状は強い倦怠感、極度に疲労し易い、頭痛、四肢が麻痺、精神錯乱など
神経系症状が強く見られ、場合によっては健康な人間が、
一夜にして車椅子と介助が必要な程に症状が進むこともあると言います。
病気が発症した人々を本当に苦しめるのは、医師達の無理解だという。
ライム病の治療にはガイドラインが作成されており、
医師会はそれに則ってライム病か否かの検査を行い治療を進めている。
だが、ライム病であるにも関わらず他の病気と診断され、
ライム病であっても有効な治療が成されないケースが頻発しており、
ガイドラインに従う医師会と独自の研究と治療を進める医師達との
患者を巻き込んだ対立がアメリカで起きているというのが今回の映画。
ライム病の発病者と言われている人々の住まいを見ていると
郊外の自然に囲まれた地域に多いように見えます。
その町に住む家族たちの誰かしらが感染しており、
地図が瞬く間に真っ赤に染まるイメージが浮かぶ。
つまりその地域では特殊な病ではなくなりつつあるという。
にもかかわらず、有効な治療がなく、病気が完治しないケースや、
最悪の場合は死に至るケースがある。
ガイドライン主義の医師はそれらのケースを、"ライム病ではない"と否定する。
ライム病が治っていないと思われる症状は別の要因から現れているのだと。
そこで問題なのは、医師達のなかには精神的に病んでいるとか、
注目を集めたいだけだなどと患者を中傷する輩がいるということ。
それは医師として以前に、人間の資格を問われるのではないか。
そりゃあ、病院には色々な患者が来てなかには思い込みの患者もいる。
だが医師ならば、何故症状が治らないか真剣に向き合うのが当然でしょう。
もし自分ではもうお手上げだというのならば、
他のより詳しい医師に紹介するのが次に取るべき道であるはず。
実際に、独自の治療法によって何千人もの患者を救っている医師がいる。
患者達はその救世主にすがる様に遠く離れた病院へ何時間もかけて通う。
だがここでもガイドライン側の医師達は過ちを犯し、
患者達を回復させている医師の治療でもガイドラインに沿わないから、
不正な医療行為として認められない故、医師免許を剥奪するというもの。
それ故にライム病に手を出さない、ライム病と診断するのを避ける医師がいる。
馬鹿な。何故、患者のために協力して本当に有効な治療法を見つけないのか。
ガイドラインの作製者たちには製薬会社と保険会社が一枚噛んでいる。
もちろん、この深き利権問題も医師達の態度を左右している。
そしてもう一つ、この状況は何かに似ていないでしょうか。
僕は中世の魔女狩り裁判を連想してしまいました。
医療や科学が認知されていない頃、ハーブや薬の治療が教会勢力に怪しまれ、
危険な状況に陥った人々が少なからずいたという。
現代においても、自分達の見解の過ちを認めることができず、
新しい発見に懐疑的な了見の狭い人々が権威を握っているとは言えないか。
医師にしろ、企業にしろ、何と向き合わなければならないのか。
病気について問題について、人間と人間が向き合えているのならば、
もし性善説があるならば必ず問題は改善に向ってくはずなのに。
くだらないプライドと金の影響力が大きく狂わせている。
これは患者の生死に関わる問題だというのに。
病気はシステムとマニュアルを使って治すのではない。
本当の治療は、医師が患者と人間として向き合って
相手を思い遣って治療を進めねばならないのではないででしょうか。
この社会への"病原体"の蔓延こそ早急に取り組むべきです。
本当の治療は、医師が患者と人間として向き合って
相手を思い遣って治療を進めねばならないのではないででしょうか。
この社会への"病原体"の蔓延こそ早急に取り組むべきです。
長期にライム病を患う患者の一人の、ある女性の言葉が耳に響く。
「これだけ長く病気にかかっていると人生について考える。
(人生に)"意義"が欲しくなるの。」と。
僕の場合は腎臓病ですが、ほぼ自分の年齢と同程度付き合っている病気です。
幼い頃は気にしませんでしたが、この年まで毎月病院に通い続けていると、
この病気とつきあうことの人生における意義はなんだろうかと、
思わず、天は何故この枷を与えたのだろうかとまで考えてしまう。
特に昨年、入院を伴った再発のときはそうでした。
意義はあるはずです。今は見えなくとも必ず。
だからこそ今も戦い続けているのですから。
最近のコメント