子供達のためにできること 「ビーイング・ボーン ~驚異のアメリカ出産ビジネス~」2011年01月15日 23時31分27秒

先日は避妊の教育についてに映画でしたが、
今回はアメリカのアブナイ出産事情、
「ビーイング・ボーン ~驚異のアメリカ出産ビジネス~」
についてのこと。


■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 http://www.mikoukai.net/036_the_business_of.html
原題:The Business of Being Born
2008年 アメリカ (87分)
監督:アビー・エプスタイン


この映画の舞台はニューヨーク。主人公は二人の女性。
リッキー・レイクは1人目の出産を病院で行ったがその処置に危機を覚え、
2人目は助産師の介助の手を借りて自然分娩で生むことに決める。
アビーもまた映画の撮影中に妊娠しており、
二人はアメリカにおける病院出産と助産師事情を調べていく。

序盤に次のようなデータが流れます。
アメリカでは新生児の死亡率は先進国で2番目に高い。
アメリカはすべての先進国で母体死亡率が最も高い。
助産師による出産は妊婦全体の70%という日本に対して、アメリカは8%未満。
アメリカの自宅出産率は妊婦全体の1%。

アメリカでは一般の人々の間も病院での出産が当たり前という認識、
さらに近年は帝王切開を前提に出産しようとする風潮があり、
2005年には3人に1人が帝王切開していたとのこと。

しかし、病院ではベットと分娩室の回転率を上げて金を稼ぐため、
薬で陣痛を誘発し麻酔を繰り返し腹を切り開き、
その投薬と圧迫の影響は母体に深刻な負担をかけている。
しかも、出産にも関わらず出産を見たことの無い外科医が手術を行い、
それによって胎児にも母体にも危険の確率が増加している。
さらに生まれた赤ん坊には身体的・精神的障害の発生率が高まるという。

アメリカは助産師は手術室に立入禁止など、病院との長き対立がある。
映画によると1900年の初め頃に病院は、黒人助産師の写真の差別的広告で、
「こんな人に子供を取り上げて欲しいですか?」と否定したらしい。
助産師との関係以外にも色々と重なった問題がありそうです。

以降、出産は病院という傾向にどんどん傾いていったところ、
1970年代のヒッピー文化を中心として再び自然分娩が勢いを盛り返す。

その後に登場したのが、病院でよくやる"お腹の中の赤ちゃんの映像"です。
断言されませんが、これはお産の経過を細かくチェックすることよりも、
あなたの赤ちゃんの姿を早く見たくありませんか?という、
親の心理に巧みにつけこんで病院に妊婦を呼び戻そうという画策に思えます。
こうして病院はお産で金を稼ごうとどんどん躍起になっていく。

それだけではない。人道の見地からアメリカの病院出産の歴史を追うと
病気や後遺症を生み出す危険な薬と診療、拘束着を着せられた母親など、
過去の精神病患者の扱いに等しい酷い扱いがこれでもかと出てくる。
何故その間違いに気づかなかったのが不思議なほどで、
出産をただ子供を取り出すぐらいにしか考えていない姿勢に背筋が寒くなる。
さらに保険会社による助産師への冷遇も病院出産に拍車をかけていく。

この映画は病院での出産ほど危険なものは無いと諭す。
もちろん、アメリカの事情であって日本のものではない。
しかし日本でも自然分娩と自宅出産を進める声があります。

帝王切開が増加したのはセレブ達のスケジュール重視の計画的出産。
ここでは母親の都合で赤ん坊が出る日を決められてしまう。
本来子供を守るべき立場にある母親の思いが欠けてると言えないだろうか。
それを一般の女性達がマネをするようになってしまった。
帝王切開は手を尽くした後の最後の手段であるはずだった。
(この映画は帝王切開の必要性も示してくれる。)

僕の考えでは、帝王切開の手術跡が残りにくくなっているのではと思う。
昔は一生消えないような跡が残ってしまっていたはずだ。
でなければ体の見た目を誰より気にするセレブが積極的になるはずがない。
映画を見ながら、ならアンジェリーナ・ジョリーあたりが自然分娩すれば、
などと思ってたら次のシーンでは映画の中でも同じことを言っていた。
やはりアンジーの影響力はセレブの中でもトップクラスのようです。

この映画が差し出す、自然分娩が本当に必要な理由があります。
それは、自然の出産によって親子の絆が育まれるのだと。
生まれた子を直ぐに抱きしめることにより、母と子に深い安堵が訪れ、
母と子はお互いを認識し、幸福感に包まれるのだと。
エンドルフィンが大量に放出されることによる作用らしい。
これが病院で子供から直ぐに引き離されると、逆に不安感が襲う様です。
そして病院出産では子育て放棄する母親が多いという。


そのため、アメリカの様な状況ではないとしてもこの映画を見ると、
女性は自然分娩による自宅出産を必ずしたくなるはず。
男性は自然分娩を必ず勧めたくなるはず。

映し出される数々の赤ん坊の産声を聞いていると自然に和んでくる。
インタビュー番組「アクターズ・スタジオ・インタビュー」のゲストが
必ず受ける質問"好きな音は?"に"赤ん坊の声"と答えるのがよくわかる。

この子供達の未来を拓き祝福するならば、自然のお産が求められる。
自然のお産を経験した母親達はみな輝いており、あふれる愛を放っています。
そう、それは家族だけではない周囲の人々をも温かな愛で包んでいく。

かくいう僕は、病院で帝王切開で生まれたクチです。
しかし親の愛情を感じなかったとは思いませんし、心から感謝しています。
Loading