肥大する諸刃 「カジノ・ジャック ~史上最悪のロビイスト~」 ― 2011年01月11日 23時52分23秒
2006年に収賄罪で有罪となったロビイスト、
ジャック・エイブラモフについて追った
「カジノ・ジャック ~史上最悪のロビイスト~」
についてのこと。
ジャック・エイブラモフについて追った
「カジノ・ジャック ~史上最悪のロビイスト~」
についてのこと。
■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
http://www.mikoukai.net/039_casino_jack_and.html
原題:Casino Jack and United States of Money
2010年 アメリカ (112分)
監督:アレックス・ギブニー(第89回アカデミー賞受賞監督)
ロビイストというのは政治家などの権力者に接近し、
企業や団体の利益のための交渉をするような人物・職業。
社会に貢献するときもあれば個人と団体の利益になることもあり、
その駆け引きのなかで多額の金が動いていく。
彼らがいるメリットは力のない個人や団体の主張を有力な人物に届けられること、
デメリットは金や縁故の力を悪い方向に使われると政治の腐敗の要因になること。
アメリカのロビイストは3万人と言われ、登録制で会社も設立されている。
日本でもロビイストという言葉は馴染みが無いけども、
縁故や金が政治を左右したことが古来より存在しているわけですが。
デメリットは金や縁故の力を悪い方向に使われると政治の腐敗の要因になること。
アメリカのロビイストは3万人と言われ、登録制で会社も設立されている。
日本でもロビイストという言葉は馴染みが無いけども、
縁故や金が政治を左右したことが古来より存在しているわけですが。
吉と出るか凶と出るか、それは当然、ロビイストの倫理観に左右される。
前述の様に、人道的理念の元に行動すれば弱き者の強い味方になる存在、
しかし、金と権力の陥穽に堕ちれば悪法を罷り通らせる汚れとなる。
だがここで厄介なのは、容易ならざる相手だが、相応の対価で
やることはやってくれるという、倫理や感情は置いておき、
利益を天秤にかけて判断する合理的人間も存在するということ。
本当の駆け引きはそんな人間が関わることであり、
だからこそ要注意マークがついている人物であったとしても、
人脈と資金が豊富なロビイストに依頼は集まっていく。
皆、操れると思いながら操られしまう。
エイブラモフはそのなかでも最悪かつ最強のロビイストだった。
既に学生時代から弁舌、ディベートに長けた彼は交渉術に磨きをかけていく。
同時に早くから政治家に対して覚めた目を持ち、金こそ力だと思っていた。
僕は過ちを犯す多くの人は最初は綺麗な理想と志を持っていて、
現実の厳しさと悪魔の囁きに心を囚われて行くというものだと思っている。
しかし、エイブラモフは捻じ曲げられたのではなく当初から
コントロール術を理解し、その使いこなしに快楽を感じていたようです。
先住民団体からの金を横領して自分の利益とするための詐欺を行ったり、
利益の元となる企業の工場を守るために議員達にリゾートバカンスを提供し
金の力で盲目にさせ、共和党の奥深くに入り込んでいった。
ありあまる金で共和党議員が無料同然の食事をできるレストランも経営する。
ジョン・マケイン氏(2000年に対ブッシュと共和党大統領候補指名を巡り戦い、
2008年に対オバマ戦を戦った共和党の大統領候補)が
党内の腐敗にメスを入れたとき、あまりにエイブラモフの影響を受けた者が多く、
自分が大統領候補になり得ない程に首を切らねばならなかったそうだ。
まさに歴史を揺るがしかけた人物だったというわけだ。
エイブラモフは共和党のトム・ディレイと懇意の関係になるが、
彼が他宗教に厳しいキリスト教福音派であるのに対して、
エイブラモフが厳格なユダヤ教に影響を受けていたというのは面白い。
どちらも思想の上では対立しうる立場だというにも関わらず、
一番結びつきを深められた要因はやはり金だった。
宗教勢力は支持と金を集める地盤に過ぎなかった。
共和党支配をゆるぎないものとするために手段を選ばなかったとも言うが、
先住民達に対する彼の罵倒の記録がメールなどで残っている。
それを見ると理知的・人道的な人間とは思えない。
本当に身も心も清潔な人物からあのような言葉はでないはずです。
人間の正体というのは本当にそのように単純なものです。
心正しくないからこそ力を集められたのでしょうか。
心清きものには力は集まらないのでしょうか。
面白いのはスパイ小説などが好きだったということ。
これまで何度も目にするが、道を誤る人間は何故か空想好きな傾向にある。
エイブラモフはロビイストになる前に映画界に身を置いていたそうだ。
彼が1989年のドルフ・ラングレン主演のアクション映画
「レッド・スコルピオン」のプロデューサーだったと今回の作品で知った。
ラングレンが演じる旧ソ連の特殊部隊所属の主人公が
アフリカの反共産勢力の主導者を暗殺する命を受けて現地に行くが
彼らを知り理解していき、ついには祖国に弓引くというもの。
映画は当時、アフリカ民族会議を批判するプロパガンダのためのものと
言われたそうだが当時のエイブラモフを知る人によれば、
自分を主人公に投影しただけの、ただの俺サマ映画だったようだ。
そう聞くと猛烈に観たくなってきたのでレンタルショップに行ったが、
ラングレンの名とともに何処かへと去ってしまっていた。
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