信念も自己満足も貫き通せ 「ロック・スクール ~元祖白熱ロック教室~」2011年01月06日 23時48分29秒

どこぞのハーバード白熱教室の様な名前の作品、
「ロック・スクール ~元祖白熱ロック教室~」
についてのこと。


■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 http://www.mikoukai.net/028_rock_school.html
原題:Rock School
2005年 アメリカ (93分)
監督: Don Argott


本作はフィラデルフィアで子供にロックを教える音楽教室の校長で
元ロックバンドメンバーのポール・グリーンに密着。
教育現場とステージに立つ子供たちの成長を追う。
子供達の技には大人たちも舌を巻くようになります。

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彼とそのロックスクールはジャック・ブラック主演のコメディ映画
「スクール・オブ・ロック」のモデルとなったとのこと。
あの映画のジャック・ブラックも無茶苦茶でしたが、
(まあジャック・ブラックは大体イカれてるのですけどね。)
実在のポール校長も負けてはいません。

プロローグの後、「羊たちの沈黙」のマネを初めるところから始まる。
しかもグリーンは「オレ、教員免許が無いんだ」などと、
茶を噴出すようなコメントをいきなりぶちまける。
彼の教え方は「駄目!ヘタクソ!馬鹿野郎!」とスラングを
小学生の子供相手に容赦なく連発し、本人曰く涼しい顔で、
「このヤロウと思わせてやる気を起させるんだ」と、
どこ吹く風かうそぶいているかのスパルタ式(?)。

まあ、ロックのイメージに助けられているのだろうと思う。
ピアノ教室やバイオリン教室なら殺されてるかもしれん。
(親には丁寧らしいのがこれまた。)

ポールはスタッフに対してもヒステリックに皆の前でも罵倒する。
しかし、彼の良いところはそのまま放っておかずに
後できちんとフォローを入れるところです。
本人はアメとムチと言いますが、技巧や駆引きではなく
本人が相手に愛情を持っているのが良く分かる。


ロックスクールに揃って通うエイサとタッカーの母親は
かつて自分もロッカーになりたかった過去を持つ。
故にポールへの理解も深く、彼女も厳しい言葉を使いますが、
名言は「正しいと信じてるからどう思われても平気」。
ポールにも共通しているこの振切れ方が大事です。

自分は正しいことを言っているという様な輩は多いけれども、
一方でネガティブな不安を感じている者がほとんど。
そういった人々はあと一歩のところで相手を動かすことができない。
相手から「ああこの人もそんなものか」と思われてしまう。
貫通しない弾傷はじゅくじゅくと回復を遅らせて双方にダメージを残す。
まっすぐにただ打ち貫くのみ、その精神が大事だ。

ポールの名言は「自己満足でやってても構わないと思う。
楽しそうにやっているそいつを見て、皆が幸せになれれば良い。」
実にポジティブなプラス思考で賛同できる考え方です。
実際、ポール自身が俺サマ思考で自己満足の固まりだ。
子供に自分の好きなロックを教えて、子供達をビッグにする。
それらは彼の野望と壮大なプランに根ざしている。

自己満足を悪い意味にしかとれない人は、ある意味で狭量だと思う。
欲望という言葉と同じで上手く作用すれば人間の成長を著しく促す。
(自己満足も欲望もレッテルとして思考を止めて使える"便利な言葉"だ。)
自分を高めるために自分を奮立たせ、やるべきことをやれば良い。
自らは満足することができるのだから当然本人は充実感がある。
きっかけも第一の到達点もそれで良い、いずれ分かちあうことを覚える。
その喜びがなければ、大抵の人間は挫折するのではないだろうか。
誰もが人に向けた高尚な使命感を持って貫き通せるものではない。
それを素直に楽しいと思えるか疎ましいと思うかは受け手の心ではないか。

ただ誤解してはならないのは、ポールが子供を本当に愛していること。
子供に夢を掴んで欲しいと、ロックの魅力を存分に知って欲しいと願う。
そこに必ず、子供達の素晴らしき世界が開けると信じているから。
多分に歪んだ愛ではありますが、不健康な愛ではありません。

ポールのありあまる熱意と相容れることができず、
寂しい行き違いに至ってしまった生徒・ウィルもいます。
ウィルは音楽の鑑賞者であることを選ぶ。
内向的でありやや年長者である彼は冷静に観ていた。
別に彼はこの映画の批判者でもアンチテーゼでもない。
ただ、ポールもウィルもある瞬間に併走した愛おしき人です。
彼らの出会いが後々に生きてくることを信じましょう。


ちなみにこの映画の後、ポールのロックスクールは全米約50都市に
スクールが設立され、子供達とスターが共演する等で大成功だそうな。
またまた調子に乗って俺サマ指数がアップしちゃうだろうけれども、
彼が子供達への愛情を持ち続ける限り大丈夫でしょう。
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