相手を受け止めること ― 2008年11月17日 23時34分44秒

人類が生きている限り未来永劫尽きることの無い悩みと言えば、
人間関係をおいて他にはないでしょう。
それも当初から嫌いであれば不干渉を決め込んだり
対抗・反抗意識を露にすれば方向性が定まっている分、
ある意味では悩まないものの、
むしろ、それまで良好だった関係が些細な誤解や感情のズレから
絡まりだした糸を解けば解こうとするほどに絡んでいく、
自分にはやましい気持ちは無いのに
相手に理解されずにもつれることの方が辛く苦しいことです。
パトリス・ルコントの新作映画「ぼくの大切なともだち」が、
DVDで完全受注5000本生産と聞いて、
Amazonの商品ページを開いてしばし逡巡しましたが、
おそらくもう少しで12月上旬にはレンタルされるかもしれないものの、
身につまされる教訓的な作品なのでやはり購入してしまいました。
物語の導入はこうです。
美術商のフランソワ(ダニエル・オートゥイユ)は
葬式の参列に行った後、自分の誕生パーティに行き、
その葬式に参列者が非常に少なかったことを憐れに話し始めた。
すると、その場に集まった全員から、
「お前に友達はいない。葬式にも誰も参列しないよ」と言われてしまう。
衝撃を受けたフランソワは10日以内に友達を連れてきてやると、
宣言するものの、いざ友人達に「友達だろう?」と聞くと、
「お前とはただの仕事仲間だ」と冷たい返事ばかり。
憤慨と落胆に苛まれるフランソワは乗り込んだタクシーの運転手の
ブリュノ(ダニー・ブーン)の人当たりのよさに羨望と親しみを感じ、
「友達の作り方を教えてくれ」とレッスンを頼むのだった。
当然、フランソワとブリュノが親交を深めていき、
本当の友達として歩み始めていくのですが、
この二人に対しては誰も他人事のように思えないのでは。
フランソワはいわゆる仕事ある程度の地位を築いた、
交友関係も良好だと本人は思っている人物。
しかし、その交友関係は「人脈」であり「仕事仲間」であって、
プライベートではあまり交流がない。
仕事から離れれば気づけば孤独であることが多い
少々自信過剰で自分中心で高みから見ている節があるものの、
特別に避けたり嫌悪されるべき人間というわけでもない。
ブリュノは人当たりは良い。タクシー運転手は不特定多数の
人間と毎日密閉車内に同席し、相手を選べないから、
黙々と運転するマシンになるか、八方美人になるしかない。
ブリュノは生来の人柄もあって後者を選んだ。
タクシーを降りてもすれ違いの人にも笑みや冗談を絶やさない。
一見、非が見当たらない人物に見えます。
しかし、こういうオープンなタイプこそ実はNOとはっきり言えず、
上手い断り方もなく相手に流されるか、
明確な言葉もないままに相手を避けてはぐらかすなど、
いびつな関係をずるずる引きずってしまうことが多い。
対照的な二人に見えて、実はどちらも不器用な人間です。
しかも、二人は大抵の人が持っている側面を含んでいます。
人間関係を良好に築いていく方法に正解と呼べる
マニュアルが無い以上、彼らの生き方と現在を笑うことはできません。
だから相手と親しくなりたいならまずは
信じることを積み重ねていくしかありません。
後半にはフワンソワとブリュノが築きかけた友情が、
誤解と勘違い思い込みから脆くも崩れていきますが、
まだ二人の間にはか細い糸が残っていました。
失敗しかけてもその失敗の原因を骨身に染みて感じ、
壊れかけた関係を修復しようと必死にその糸を手繰ろうとする二人。
雨降って地固まる、とは真理をついた言葉だと思います。
酷い別れをした二人が電話越しに再会する場面に、
クイズ番組「Qui veut gagner des millions?」の
テレフォンが効果的に使用されています。
この番組は「クイズミリオネア」のオリジナル番組
イギリスの「Who Wants to Be a Millionaire?」のフランス版。
ライフラインのテレフォンでブリュノがかける相手がフランソワ。
フランソワのおかげで100万ユーロを手にするものの、
あっという間に大金はなくなってしまう。
実に教訓的。二人には金にも代え難い友情が残ったのです。
もう一人重要な人物として、知的なジュリー・ガイエ演じる
フランソワの共同経営者カトリーヌがいます。
「あなたに友達はいない」と言った一人である彼女が、
ブリュノとの友情を壊し落ち込んだフワンソワに、
ふと「あなたの友達になりたかった」と心情を吐露する。
実は彼女、彼らもまた迷い人だったのです。
この作品は友情に焦点を絞っているものの、
男や女の友情ばかりでなく、異性間の愛情、仕事の社交関係、
全ての人間関係において一石を投じるものがあります。
しかし、気持ちを確かめ合うことでさえも、
時には人間関係に亀裂を生じさせる難しさ。
だからこそ、せめて相手が投げかけた気持ちには
しっかり受け止めて答えを出すことを心がけていたい。
人間関係をおいて他にはないでしょう。
それも当初から嫌いであれば不干渉を決め込んだり
対抗・反抗意識を露にすれば方向性が定まっている分、
ある意味では悩まないものの、
むしろ、それまで良好だった関係が些細な誤解や感情のズレから
絡まりだした糸を解けば解こうとするほどに絡んでいく、
自分にはやましい気持ちは無いのに
相手に理解されずにもつれることの方が辛く苦しいことです。
パトリス・ルコントの新作映画「ぼくの大切なともだち」が、
DVDで完全受注5000本生産と聞いて、
Amazonの商品ページを開いてしばし逡巡しましたが、
おそらくもう少しで12月上旬にはレンタルされるかもしれないものの、
身につまされる教訓的な作品なのでやはり購入してしまいました。
物語の導入はこうです。
美術商のフランソワ(ダニエル・オートゥイユ)は
葬式の参列に行った後、自分の誕生パーティに行き、
その葬式に参列者が非常に少なかったことを憐れに話し始めた。
すると、その場に集まった全員から、
「お前に友達はいない。葬式にも誰も参列しないよ」と言われてしまう。
衝撃を受けたフランソワは10日以内に友達を連れてきてやると、
宣言するものの、いざ友人達に「友達だろう?」と聞くと、
「お前とはただの仕事仲間だ」と冷たい返事ばかり。
憤慨と落胆に苛まれるフランソワは乗り込んだタクシーの運転手の
ブリュノ(ダニー・ブーン)の人当たりのよさに羨望と親しみを感じ、
「友達の作り方を教えてくれ」とレッスンを頼むのだった。
当然、フランソワとブリュノが親交を深めていき、
本当の友達として歩み始めていくのですが、
この二人に対しては誰も他人事のように思えないのでは。
フランソワはいわゆる仕事ある程度の地位を築いた、
交友関係も良好だと本人は思っている人物。
しかし、その交友関係は「人脈」であり「仕事仲間」であって、
プライベートではあまり交流がない。
仕事から離れれば気づけば孤独であることが多い
少々自信過剰で自分中心で高みから見ている節があるものの、
特別に避けたり嫌悪されるべき人間というわけでもない。
ブリュノは人当たりは良い。タクシー運転手は不特定多数の
人間と毎日密閉車内に同席し、相手を選べないから、
黙々と運転するマシンになるか、八方美人になるしかない。
ブリュノは生来の人柄もあって後者を選んだ。
タクシーを降りてもすれ違いの人にも笑みや冗談を絶やさない。
一見、非が見当たらない人物に見えます。
しかし、こういうオープンなタイプこそ実はNOとはっきり言えず、
上手い断り方もなく相手に流されるか、
明確な言葉もないままに相手を避けてはぐらかすなど、
いびつな関係をずるずる引きずってしまうことが多い。
対照的な二人に見えて、実はどちらも不器用な人間です。
しかも、二人は大抵の人が持っている側面を含んでいます。
人間関係を良好に築いていく方法に正解と呼べる
マニュアルが無い以上、彼らの生き方と現在を笑うことはできません。
だから相手と親しくなりたいならまずは
信じることを積み重ねていくしかありません。
後半にはフワンソワとブリュノが築きかけた友情が、
誤解と勘違い思い込みから脆くも崩れていきますが、
まだ二人の間にはか細い糸が残っていました。
失敗しかけてもその失敗の原因を骨身に染みて感じ、
壊れかけた関係を修復しようと必死にその糸を手繰ろうとする二人。
雨降って地固まる、とは真理をついた言葉だと思います。
酷い別れをした二人が電話越しに再会する場面に、
クイズ番組「Qui veut gagner des millions?」の
テレフォンが効果的に使用されています。
この番組は「クイズミリオネア」のオリジナル番組
イギリスの「Who Wants to Be a Millionaire?」のフランス版。
ライフラインのテレフォンでブリュノがかける相手がフランソワ。
フランソワのおかげで100万ユーロを手にするものの、
あっという間に大金はなくなってしまう。
実に教訓的。二人には金にも代え難い友情が残ったのです。
もう一人重要な人物として、知的なジュリー・ガイエ演じる
フランソワの共同経営者カトリーヌがいます。
「あなたに友達はいない」と言った一人である彼女が、
ブリュノとの友情を壊し落ち込んだフワンソワに、
ふと「あなたの友達になりたかった」と心情を吐露する。
実は彼女、彼らもまた迷い人だったのです。
この作品は友情に焦点を絞っているものの、
男や女の友情ばかりでなく、異性間の愛情、仕事の社交関係、
全ての人間関係において一石を投じるものがあります。
しかし、気持ちを確かめ合うことでさえも、
時には人間関係に亀裂を生じさせる難しさ。
だからこそ、せめて相手が投げかけた気持ちには
しっかり受け止めて答えを出すことを心がけていたい。
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