鬼才達の集い ― 2008年11月10日 23時46分54秒

「TOKYO」を舞台にして3人の監督がそれぞれ1つの短編を手がけた
オムニバス映画「TOKYO!」についてのこと。
3人の監督とはミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ。
それぞれアメリカ・フランス・韓国の監督ながら、
世界の映画界でいずれ劣らぬ鬼才と讃えられる方々。
私はゴンドリー、カラックスの作品は名前を聞いているだけで、
作品そのものは鑑賞していませんが、変人ぶりは聞き及んでいます。
ポン・ジュノは「ほえる犬はかまない」「殺人の追憶」
「グエムル~漢江の怪物」を鑑賞し、いずれも秀作。
短編と言っても、長編の風格と重量感は十分すぎるほど。
「TOKYO!」の評価は微妙なものが多いものの、
あくまでもかなり高い次元でのクオリティの議論だと思います。
東京のアイコン的イメージを織り交ぜながらも、
フジヤマ・スシ・ゲイシャ時代の表面的な描写に終わらず、
東京の空気感とそこに生きる人の目線を捕らえているのが良い。
ゴンドリーは加瀬亮・藤谷文子を主演にこのカップルが
田舎から東京に出てきて夢を追いつつ、
金や仕事などままならない事情に悩みながら、
だんだん藤谷文子の居場所探しにシフトしていく青春劇。
日本の家はウサギ小屋だ、などとかつて外国人が言ったとか
そういうイメージがディフォルメされたユーモアがたっぷり。
数十年前なら「神田川」なんかの清貧物語だろうに、
現代の若者をふわふわ彷徨う迷い人のように捕らえていく。
藤谷文子が家や金の物質的な居場所から、
精神的定住の場を求めていくのはやはり現代のドラマ
藤谷文子に対して「僕の思い描いていた女の子だ!」と
「恋愛睡眠のすすめ」等のシュールで妄想ラブな
ゴンドリーは語ったとのことですが、
彼女があの宇宙最強のオヤジ、スティーブン・セガールの愛娘とは、
知ってのことだっただろうか?
カラックスの作品は「メルド」というタイトルの直後に「糞」と
大画面にでかでかと映し出すところからして挑発的。
あれだけ大きな「糞」という文字を見たことが未だかつて無い体験。
マンホールから謎の外国人・メルドが出てきて街の人々を襲う。
最初は物を壊したりちょっかい出す程度だったものを、
エスカレートして手榴弾をポンポン投げて大量死させる。
そして逮捕され裁判にかけられ、「人間が嫌いだからだ」と言い、
死刑宣告を受けてその時を待っている。
登場テーマがゴジラのテーマで、明らかに破壊者であります。
東京は破壊から再生を繰り返す都市だと、評する物語があります。
話は不条理ですが、ところ構わずどんどん物を壊し、
人間嫌いというメルドは、人を拒む東京の側面にも思えます。
嶋田久作や石橋蓮司が出ていますが、これくらい個性的でないと、
外国人は日本人の見分けがつかないとも言われ、納得もします。
ポン・ジュノの「シェイキング東京」を贔屓にしたい理由は、
もちろん監督のファンでもありますが出演が、
香川照之・蒼井優であるからに他なりません。
香川照之が10年間引き篭もった男を演じ、
その香川が家を飛び出して追っかけていく程の、
うら若きピザ屋の店員を蒼井優が演じる。
東京の裏側的な側面を社会問題として構えずにユーモアで描く。
香川照之を口説き落とすのに、
10年間引き篭もり続けてピザの配達員の足に覗く
ガータベルトのチラリズムに刺激されてついに家を飛び出す男、
「この役はあなたにしかできません」と言ったというポン・ジュノ。
蒼井優を捕まえて「彼女もきっとヘンタイ」と言い放ったという。
さらに、「グエムル」の怪物のモデルとしたという竹中直人を
出演させて演出したことは感慨深かったのだろうか?
簡潔にいくと、ゴンドリーには共感でき、カラックスには衝撃を受け、
ポン・ジュノ作品は一番贔屓したいところです。
不条理な内容ながら鑑賞後の印象は不思議とすっきり心地よい。
この作品に纏わる話、特にポン・ジュノ編においては、
香川照之がキネマ旬報誌上に好評連載中のエッセイ、
「日本魅録」において、企画・撮影現場・裏話、
果ては映画祭の顛末まで詳細に綴られています。
あまりに面白すぎる抱腹絶倒なエッセイなので、
機会があったら是非読んでいただきたい。
そういう話を知っていると映画の出来がどうのこうのよりも、
その映画が堪らなく愛しく思えてしまうのです。
オムニバス映画「TOKYO!」についてのこと。
3人の監督とはミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ。
それぞれアメリカ・フランス・韓国の監督ながら、
世界の映画界でいずれ劣らぬ鬼才と讃えられる方々。
私はゴンドリー、カラックスの作品は名前を聞いているだけで、
作品そのものは鑑賞していませんが、変人ぶりは聞き及んでいます。
ポン・ジュノは「ほえる犬はかまない」「殺人の追憶」
「グエムル~漢江の怪物」を鑑賞し、いずれも秀作。
短編と言っても、長編の風格と重量感は十分すぎるほど。
「TOKYO!」の評価は微妙なものが多いものの、
あくまでもかなり高い次元でのクオリティの議論だと思います。
東京のアイコン的イメージを織り交ぜながらも、
フジヤマ・スシ・ゲイシャ時代の表面的な描写に終わらず、
東京の空気感とそこに生きる人の目線を捕らえているのが良い。
ゴンドリーは加瀬亮・藤谷文子を主演にこのカップルが
田舎から東京に出てきて夢を追いつつ、
金や仕事などままならない事情に悩みながら、
だんだん藤谷文子の居場所探しにシフトしていく青春劇。
日本の家はウサギ小屋だ、などとかつて外国人が言ったとか
そういうイメージがディフォルメされたユーモアがたっぷり。
数十年前なら「神田川」なんかの清貧物語だろうに、
現代の若者をふわふわ彷徨う迷い人のように捕らえていく。
藤谷文子が家や金の物質的な居場所から、
精神的定住の場を求めていくのはやはり現代のドラマ
藤谷文子に対して「僕の思い描いていた女の子だ!」と
「恋愛睡眠のすすめ」等のシュールで妄想ラブな
ゴンドリーは語ったとのことですが、
彼女があの宇宙最強のオヤジ、スティーブン・セガールの愛娘とは、
知ってのことだっただろうか?
カラックスの作品は「メルド」というタイトルの直後に「糞」と
大画面にでかでかと映し出すところからして挑発的。
あれだけ大きな「糞」という文字を見たことが未だかつて無い体験。
マンホールから謎の外国人・メルドが出てきて街の人々を襲う。
最初は物を壊したりちょっかい出す程度だったものを、
エスカレートして手榴弾をポンポン投げて大量死させる。
そして逮捕され裁判にかけられ、「人間が嫌いだからだ」と言い、
死刑宣告を受けてその時を待っている。
登場テーマがゴジラのテーマで、明らかに破壊者であります。
東京は破壊から再生を繰り返す都市だと、評する物語があります。
話は不条理ですが、ところ構わずどんどん物を壊し、
人間嫌いというメルドは、人を拒む東京の側面にも思えます。
嶋田久作や石橋蓮司が出ていますが、これくらい個性的でないと、
外国人は日本人の見分けがつかないとも言われ、納得もします。
ポン・ジュノの「シェイキング東京」を贔屓にしたい理由は、
もちろん監督のファンでもありますが出演が、
香川照之・蒼井優であるからに他なりません。
香川照之が10年間引き篭もった男を演じ、
その香川が家を飛び出して追っかけていく程の、
うら若きピザ屋の店員を蒼井優が演じる。
東京の裏側的な側面を社会問題として構えずにユーモアで描く。
香川照之を口説き落とすのに、
10年間引き篭もり続けてピザの配達員の足に覗く
ガータベルトのチラリズムに刺激されてついに家を飛び出す男、
「この役はあなたにしかできません」と言ったというポン・ジュノ。
蒼井優を捕まえて「彼女もきっとヘンタイ」と言い放ったという。
さらに、「グエムル」の怪物のモデルとしたという竹中直人を
出演させて演出したことは感慨深かったのだろうか?
簡潔にいくと、ゴンドリーには共感でき、カラックスには衝撃を受け、
ポン・ジュノ作品は一番贔屓したいところです。
不条理な内容ながら鑑賞後の印象は不思議とすっきり心地よい。
この作品に纏わる話、特にポン・ジュノ編においては、
香川照之がキネマ旬報誌上に好評連載中のエッセイ、
「日本魅録」において、企画・撮影現場・裏話、
果ては映画祭の顛末まで詳細に綴られています。
あまりに面白すぎる抱腹絶倒なエッセイなので、
機会があったら是非読んでいただきたい。
そういう話を知っていると映画の出来がどうのこうのよりも、
その映画が堪らなく愛しく思えてしまうのです。
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