マサイ 魂を継ぐ物語2006年04月21日 22時05分51秒

メジャーの後にはミニシアター。ミニシアターの後にはメジャー。
どちらにせよ、同じ値段で見られるのが良いところ。
本物のマサイ族の戦士に出演していただいた、
戦士達の冒険譚、「マサイ」でございます。

歴史的な干ばつに襲われたマサイたち。
村を危機から救うには伝説の獅子のたてがみをマサイの神に捧げるべし。
勇敢な戦士ティピリットは旅立ったが、彼は帰ることはなかった。
彼の魂を継ぎ村を救うため、長老達はまだ若い青年たちを送り出す。
ティピリットの弟戦士ロモトゥーンと親友の羊飼いメロノと仲間達は
広大な草原へ旅立ち、戦士として目覚めていく。


本物のマサイ族が演じているので衣装や化粧など
考証は限りなく本物に近いと思われます。
アフリカの神話的・寓話的な話で、
現地で語られている伝説が元になっているようですが、
それが語り部が語る遠い記憶や祭りや儀式として残るのみではなく、
実際に今、彼らが実践するものとして根付いているのが凄いです。

でも我々の世界とは別次元の地上の聖域ではなく。
先代の戦士から技術や魂を継いで行くメロノ青年の成長や、
7人の仲間たちの団結と絆は、我々も本来持っていたものですよね。
あー、凄い未知の世界だな、と思うことばかりではないと思うのです。

魂を繋いでいく物語ではないかと。
帰らぬ人になったティピリットや先代の戦士パパーイの意思を継ぎ、
勇敢な戦士に成長して命を燃やしたメロノの意思を
仲間たちが継いで伝説の獅子のたてがみを持ち帰った。
そういう、想いを受け継いでいくという話は
マサイだけにあるものではなく、多くの人間に共通するもの。
しかしマサイのその強い意思の力を見習うことが出来れば、
あるいは「生きる」ことが違った意味を持つのかもしれません。


ただ、映画として見たときに少々気張ってみた方が良いと思います。
まず、マサイの顔は見分けがつきません(笑)。
ちょっと前までクリス・タッカーとウィル・スミスでこんがらかっていた
私にはマサイの7人の顔はかなりハイレベルです。

そして次に、眠くなる危険のある景色であります(笑)。
だって、マサイと草原しか映っていませんもの。
延々砂漠しか見えない、ベルトリッチの「シェルタリング・スカイ」みたいな。
95分の短い尺とはいえ、絵的にはもう少し刺激が欲しいです。
せっかくマサイの戦士、という血が騒ぐ世界だというのに。


マサイ族というと、日本ではバラエティ番組などにもたまに登場し、
超有名な原住民という、メディアに露出しすぎた感もあります。
しかし、この映画を観るとメディアが入り込んだ原住民の中では
かなり昔の暮らしを守っている強い民族であると感じます。

もっとも、小学生の年代の子供達は学校に通い始めているそうで、
近いうちにTシャツ短パンを来たマサイ族も登場するのでしょうな。


誇り高きマサイの戦士たちに敬礼!

密林からの目覚め2006年04月21日 23時35分22秒

先日、博物館へ今月期待の展示、
「アンコール・ワット展」を鑑賞に行きました。


アンコール・ワットの仏像とレリーフが主体の展示で、
文献の類は皆無。ビジュアル的には非常に観やすいのでは。

アンコール・ワットとはカンボジアの遺跡でして、
この地域は仏教とヒンドゥー、もちろん土着の民間信仰も習合して
バラエティに富んだ世界になっているようです。

この地の人々は昔から、利益を与えてくれる神さまを
宗教の壁に囚われずにひろく受け入れてきたそうです。
さらに、国王を現人神として崇めたとあります。
それって、日本の感覚と似ていますよね。
日本と違うのは現在も信仰心は持っての上でということでしょうか。

ヒンドゥースタイルというと当然のごとく
シヴァ神、ビシュヌ神が登場しまして、通称踊る神々。
そのせいか特に手の造形がしなやかに優美に作られていると思います。
もう8本以上腕があると孔雀の羽のように綺麗な広がりですよ。

さらに仏像のほとんどが口元目元に笑みを浮かべており、
ある時期は冷たく、時には厳しく見える仏像も、
陽気なお祭りムードで親しみやすいです。
神々の戦いの図、でさえ踊っていますからね。
あと、ほとんどの材質が砂岩というのも柔らかい印象を与えています。

中でも面白い展示は、というより目がいってしまうのは。
やはりシヴァ神の一化身。リンガ像でしょうな。
デザインとしてかなり単純化されていますが、
どうみてもチ○ですから(笑)。
うーむ、遺跡出土品とあれば堂々と展示できますぞ。
前鋭芸術だとときには公開停止だというのに。

ところで、ここで陥る不思議な感覚は「踊りたい」という思い。
そりゃシヴァもヴィシュヌもハヌマンもガネーシャも
皆踊っているのですから刺激されるのも無理からぬこと。
踊るというのは元々人間の原始的な感覚を刺激しますから
だからこそ宗教世界でトランス状態に入り込むのに用いられるわけで。
とにかく博物館で踊りだしたいと思ったので、そそくさ出てきました(笑)。
これが本場のカンボジア寺院なら、多分踊っても誰も変に思いませんぞ。


特別展とは別の話ですが、第3展示室のコレクション展示も
同時に見ておきたい品々です。
これらは日本のものですが、いやもう、綺麗な蒔絵があるんですよ。
特に綺麗なものは金ではなく貝殻で描いたもの。
貝殻の裏の虹色に輝くキラキラしたものがありますでしょう。
あれで龍や鶴を彫こんでいるのです。
日本の職人技ここにあり、「ほー!!!」と感嘆いたしました。

観ていて踊りたくなる楽しい展示でした。
今月は他に「シルクロード展」「ガンダムアート展」を鑑賞予定です。
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