6月6日にUFOが2007年06月01日 23時07分04秒

6月の映画鑑賞予定ラインは
「監督、ばんざい!」「大日本人」「プロジェクトBB」「プレステージ」
「300」「今宵、フィツジェラルド劇場で」「約束の旅路」「ゾディアック」
「アポカリプト」「ママの遺したラブソング」「憑神」「輝ける女たち」
「フランシスコの2人の息子」「ダイ・ハード4.0」「ツォツィ」
「輝く夜明けに向って」「転校生」
「ボラット~栄光ナル、カザフスタン国家のためのアメリカ文化学習」

となっているのですが、ミニシアター系は例によって多いものの、
この中で万人向けと呼べるのはダイ・ハードと転校生ぐらいなもので、
あとは一癖二癖ある、観客を選ぶ作品が多い気がします。
別に私がそう狙ったのではなく公開作品全体的にそのようです。

先月5月の「スパイダーマン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」や
「ゲゲゲの鬼太郎」などの大作にしても安心感漂うラインナップとは
明らかに違いターゲットを絞っている感じです。
6月は一年のうち最も休日が少ない月と言って良いので、
その中でも観たいと思うコアターゲットを狙ったのでしょうか。
何かまんまと吊られた感があります。

特に毒の臭気を既に感じる「監督、ばんざい!」「大日本人」
そして「ボラット」が大本命。
また「約束の旅路」「ツォツィ」「輝く夜明けに向って」の
アフリカが舞台の作品も最近の秀作が見込めるところです。
「転校生」は大林宣彦先生のセルフリメイクなのですが、
これは最初は怪訝に思いましたが予告から漂う雰囲気が実に良いです。

さて、問題は休日をどのようにやりくりするかです。
それと7月から職場が変わりまして勤務時間も変わります。
24時間交代勤務から解放されて真夜中勤務が無くなるので、
ちょっとは余裕がでると思いたい。

光と影2007年06月02日 23時34分40秒

社会派ドラマ「オール・ザ・キングスメン」を鑑賞です。
原作はピュリツァー賞受賞の小説「すべて王の臣」。

<物語>
アメリカ・ルイジアナ州。実直な下級役人ウィリーは
腐敗政治に憤りを感じ貧民のために社会を変革したいと願っていた。
ある時、彼の糾弾した不正の元であった小学校の
欠陥工事が元で子供達が事故に遭う。
新聞記者のジャックが一連の流れを記事にすると、
ウィリーは一気に人気者になり州知事候補へと薦められる。
当初はそれも本命を勝たせるための票割り作戦だったのだが、
人気は留まるところを知らず遂には本当に州知事に就任する。
貧民出身の彼は富裕層との癒着と不正の決別を示した。
5年の月日が流れ、ウィリーは未だ情熱に燃えていた。
だが、以前と違うのは手段を選ばずスキャンダルに塗れていたことだった。


ウィリーにはモデルがいて、フランクリン・ルーズベルト時代に
ルイジアナ州知事であったヒューイ・P・ロングという人物です。
そのあたりは細かい話になるのでよいとして、
「善は悪からも生まれる」というキャッチも示すように
本作は理想に燃えた政治家がいかに腐敗していくか、
あるいは善いことを実現するために悪が介在するジレンマを描くものです。

政治家は話が上手いこともあってか一人の話をじっくり聞くと
国のこと人民のことを考え、熱い理想と闘志に燃えていると感じます。
しかし、それが多数の議員、多数の資金の流れに交わると
妥協、譲歩、ときには決裂、プラスマイナスの差額を考えたり
あるいは義理や人情によってルールからずれたりしていきます。

厳しい面が敵を作り、善が偽善と言われるようにもなります。
日本でも全ての人から諸手を挙げて歓迎された政治家はいないでしょう。
方向性が統一されぬ自由な社会は全ての声を叶えることはできず、
多数決では少数が切り捨てられ、
多くを救済しようとすると徐々に一貫性が無くなっていく。
政治家はそれを何とかバランスをとって全ての底を挙げていくものです。

ウィリーは民のためと思うことに手段を選ぶことを止めました。
やがて純粋な青年アダムと信念を異にしたことで彼の銃弾に倒れます。
アダムもまたボディガードに撃たれ、ウィリーとアダムの
床に流れた血が一つに融け合う最期は、
その理想と善意の起源は同じであることを象徴します。

我々は政治を糾弾する際に「何故そうなったか?」を考え、
ルール以外に非常に人間臭い視点からも検証する必要がないでしょうか。
それが戒めとするか同情するか、それもまた問です。

この一連のドラマは新聞記者ジャックの視点から見つめられます。
彼の立ち位置は近作の「ラストキング・オブ・スコットランド」の
アミン直属の青年医師に似ていると思いますが、
あの青年がアミンの本性に恐れ戦き主人を狂気の悪と見做したのに対し、
ジャックはウィリーが善人か悪人なのか分からないと言った風です。
ウィリーの葬儀で虚空を見つめ回想するジャックの目からは
「どこから道を間違えていったのだろう?」という問が感じられます。

ウィリー役のショーン・ペンの芸立者ぶりは今更言うこともありません。
今回注目はジャックを演じるジュード・ロウではないかと。
ジュード・ロウは出演も話題作が多く、悪くは無い役者ですが
どうも役柄の印象も薄く、演技力を感じることは少ない感触でした。
「アビエイター」「コールドマウンテン」「ロード・トゥ・パーティション」
これらでジュード・ロウの話にはあまりなりません。
「AI」のアンドロイドや「スターリングラード」のスナイパーは
印象的、というより他にスターがあまりいない。
「スカイキャプテン」は共演女優二人の個性に負けます。

そんなジュード・ロウの微妙なラインを逆手に取って持ち味にしたのか、
ウィリーの変貌や父親代わりの判事の死に心情が揺れても
感情の変化をあまり表に出さない静かな語り手を演じます。
前述のウィリーの葬儀での表情は彼の技が出た場面だと思います。

ケイト・ウィンスレットやアンソニー・ホプキンスら実力派も揃い
ずしりと重みのあるドラマが展開する、面白い作品なのに
仙台ではわずか一週間の上映であります。
他の公開作とのタイミングが悪いとは言え、憤っている次第です。

散る花の如く2007年06月03日 21時41分41秒

特攻隊の母と呼ばれた鳥濱トメさんの視点から特攻隊の青春を描く
「俺は、君のためにこそ死ににいく」を鑑賞。

<物語>
昭和19年、太平洋戦争で劣勢に陥った日本軍は
戦闘機に爆弾を搭載して敵空母に体当たりする特別攻撃隊を編成。
特攻隊基地の近くの鹿児島県・知覧にある
軍指定の食堂の女将、鳥濱トメさんは隊員達の母親的存在だった。
死ににいく若者達にせめてもの御馳走を用意し、
ある時は勢い余る若者達を取り締る軍から庇っていた。
そして帰らぬ人となっていく隊員達を見守るのだった。


石原慎太郎による製作総指揮・脚本作品、
良くも悪くも公平な評価は得られにくい作品です。
批評家先生達のの評は大半がバッサリ切り。
普段から政治家・石原慎太郎に否定的だったりすれば
正当な評価もできず感情的な酷い批評になります。
むしろかえってノンポリの方が良い目で評価できるでしょうか?

と思うのですが私もそれほど好きな映画でもないです。
無論、特攻隊員達やトメさんの生き方への敬意はあります。
日本人として忘れてはならない事実です。
ですが物語映画としてはよろしくない。
飾らず気取らずドキュメンタリーとして構成するべきではないでしょうか。

出来上がってきた話は思いがけずセンチメンタルで
ややロマンチシズム傾向の作品でした。
タイトルが示す通り国のため愛のため熱き心を持った若者達と、
一方で死んだ仲間達に申し訳ないと罪悪に苛まれる生残りの物語。

後に残るもののために命を賭ける自己犠牲の精神、
漫画や映画には激しく燃えるシチュエーションとして
男のロマンとして名シーンが多く生まれました。
それは私も好きな男の美学です、
本作の描き方は同様に一人一人の想いを描きます。

しかし、「男たちの大和」のような鬼気迫る熱気がありませんし、
では事実を淡々と伝えるにしては美化がされています。
要はどうも言いたいことの伝え方が中途半端なのです。
故に予備知識と予想以上のことを知る驚きがさほどありません。
ドキュメンタリーにすべき、というのは半端に歴史劇にするよりも
実在の墜落した機体や不発弾の方が物語よりも遥かに重いためです。

またこれは事実故に流されるまま逆らえぬままに
出撃した隊員も多くいるはずであり、
その人達全員を含めて二度とこんなことを繰り返さぬよう、
戦後、現在と歩んできたのではないでしょうか。

窪塚洋介クンが久々に多くのシーンに出演しているのが唯一嬉しい。
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