奇跡の証明2007年06月04日 22時50分55秒

公開になるまで内容も知らずノーチェックでしたが、
キリスト教10の災いを扱いヒラリー・スワンク最新作、
これに惹かれて「リーピング」を鑑賞。

<物語>
小さな田舎町ヘイブンで一人の少年の不可解な死をきっかけに
川が真赤に染まり魚や蛙が死んでいく。
キリスト教「十の災い」が現実となったような事件が
村の中で連続して発生し一人の少女がサタンとして見做されていく。
事件の解明に乗り出した大学教授キャサリンは
かつて敬虔なキリスト教信者だったが家族を失う事件を機に信仰を捨て、
宗教の奇跡を科学によって説明づけることに使命を燃やしていた。


キリスト教十の災いを模す事件を解明し食い止めようとするものの、
それが起こらなければ話は進みませんし、
サタンの寄り代とは言え少女を殺しては倫理規定がクリアできないと、
ずるい方向から物語を先読みしてさてどんな話になるのか?

しかし、不気味に見守る少女とひたひたと迫る怪異と、
主人公の「奇跡は科学で証明できる」という信念ゆえに
後半で一気に解決してスッキリさせてくれるのかという期待と、
あるいは本物の神と悪魔の力に絶望するのだろうか
という思いから別の観点で先が読めませんでした。これは良し。

血の川に浮ぶ魚も蛙も、蝿も蛆もイナゴの大群も
生理的に訴える気持ち悪さでは効果てきめん。

「ローズマリーの赤ちゃん」のように芸術性を求めるのか、
はたまたサタンに銃一丁で立ち向う「エンド・オブ・デイズ」
のように問答無用の娯楽エンタテイメントか。
結果はやりたい放題演出して前半と後半で全く違う作品のように思える
「ジェヴォーダンの獣」や「サイレントヒル」の印象に近いです。

後半に一気に攻め立てる残りの災いの数々。
もう空から隕石まで降られたらどこぞのマジシャンと物理学者のように
まるっとさくっとずばっと怪傑、もとい解決もできません。
これはこれで良いです。ちょっと昔のようにアジアンホラーを真似て
無理なことをされるよりも良いです。

ヒラリー・スワンクは昔から顎が少々しゃくれ気味で
完璧美人まではあと一歩の惜しいルックスであります。
もっとも、そんなことを気にしていてはアカデミー主演女優賞を
二度も取れるはずがありませんな。
かつては強く信じた信仰と畏怖が蘇る様と
夫と子供を神に見捨てられたという思いに揺れる
主人公の感情がよく伝わってきます。
この感情のせめぎあいと真実か偽物かの予想が本作の楽しさです。

ツッコミは多いもののそこそこ楽しめる佳作ではないでしょうか。
オチはホラーならいつものアレなので驚きもないですが。
むしろ、やりたい放題のクライマックスで喝采した後に
何故いまさらこんな古典的な?という意表を突かれた驚きではあります。

東京タワー2007年06月05日 21時18分02秒

やっとこさ「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」を鑑賞。

原作はリリー・フランキーの自伝的小説。
幼い頃に職業もよく分からないオトンをおいて家を出て、
オカンの郷の炭鉱町で育てられたボクは、
デザイン学校入学と共に東京へ出る。
勉強せずに放蕩三昧の生活を送り借金塗れになったところで、
ようやくデザイナーやライターの仕事で生計を立てて行く。
やがて自分を支えてくれたオカンを東京へ呼ぶのだが、
オカンは喉頭がんを患い徐々にがんが進行するのだった。


映画に先行してTVで2時間ドラマ、連続ドラマが放送されたり
原作自体ベストセラーなので話の内容と結末は周知の通り。
あとはどう脚色し再構成しているかの違いです。
2時間ドラマは感情の揺さぶりが凄かったですし大泉洋が演じたボクも
都会に染まりきれない田舎者という感じで良かったです。
連続ドラマはほとんど観ませんでしたが、
速水もこみちでは人は良いものの少々イケメン過ぎてイメージが遠いです。

さて映画はボク・オダギリジョーとオカン・樹木希林。
ついでにオトンが小林薫。キャストは安心。
ところが脚本は松尾スズキと聞いて疑問を感じました。
直近の作品が「ユメ十夜」で漱石をこれでもかと換骨奪胎し、
アキバ用語とダンスで再構成するという離れ業でしたもので。
しかし少年時代と現在が交互に構成する以外は
見た目は普通なのでひと安心。

オカンに親孝行をする良い親子関係の話ではありません。
むしろボクの人生のほとんどはオカンに迷惑をかけっ放しです。
やっと東京に呼んだ頃には、いや呼ぶ前からガンは発病し、
軌道に乗り始めた頃にはガンとの闘病が始まります。
これは親孝行できない後悔とひどい男をじっと育てたことへの感謝の話。

劇中で「オカンは頑張ったよ」と何度か印象的に登場する台詞に
感謝の念も込めていますが、オカンは頑張ったのもう一つ先だと思います。
確かに今のオカン達は「頑張って」子供と家族を支えているでしょう。

しかし、頑張るとは目標を設定して努力したり、
自分のやりたいことを脇に置いて我慢したりを続けることです。
ですがこのオカンは、ボクを応援することが生き方そのものだと思います。
逆にボクを支えないオカンの人生はありえないのではないでしょうか。
それは頑張る頑張らない以前の、オカンがオカンたるゆえんです。

あれだけボクのために働いたのに
「東京に行ってもええんかねえ?」と遠慮がちなオカン。
無償の愛を受けているが故に本当に感謝しなくてはならないと思うのです。

自分のオカンはそんなに立派じゃないと早まるなかれ。
かつて家が食事があり自立しても戻る場所があれば有難うと思います。
これを観た男達は皆、感謝の前に自分を情けなく思うべし。

来たぞジャッキー!2007年06月09日 23時08分13秒

我等がジャッキー・チェン最新作「プロジェクトBB」を鑑賞。

<物語>
盗みの腕は一流だがお人よしのプロの泥棒3人組。
ある時でかいヤマがあると話に乗ると、
3000万ドルの身代金がかかった
大富豪の赤ちゃんを誘拐するはめになった。
しかし、仕事の途中で連絡役のリーダーが警察に捕まる。
釈放されるまでの間、赤ちゃんを預かることになった2人は
育児に追われるうちに次第に情が移っていく。


主役三人はジャッキー・チェン、ルイス・クー、
マイケル・ホイ(懐かしのMr.BOOであります!)。
加えてユン・ピョウ出演の懐かしの顔ぶれ。
それで「プロジェクトA」「プロジェクト・イーグル」かと思いきや、
「BB」は「ベビー」。赤ちゃんのこと。
憎めない悪者3人ではさすがに赤ちゃんを捨て置くことは出来ずに
不器用な育児に奮闘、やっぱり情が移って手放したくない!

「スリーメン&リトルベイビー」あるいは「赤ちゃんに乾杯!」
3人の微笑ましいワルならば「俺たちは天使じゃない」等等
良作も多い分野というお決まりかつ、安心できる話。

では単なる安全なところを狙ったかと言えば、
そこはジャッキーにマイケル・ホイにユン・ピョウで
香港国際警察(NEW)のベニー・チャンが監督で、
香港映画400%のノリで作っているので
アクションにコメディにパロディ満載。

「CGを使用したり赤ちゃんには安全を第一に考慮しました」
といわれても「オイオイ!赤ちゃん死んじゃうよ!」という映像ですし、
「品の無いコメディにはしたくなかった」との監督の言葉ですが、
どうやら香港ではオシメを投げつけてウンコ塗れになるのは
品の無いうちに入らないようでして(笑)。
でもアメリカの下ネタコメディに比べれば格段に微笑ましい。

何故かいつも若くて可愛いヒロインですが
今回の看護婦カオ・ユェンユェンもやはり可愛い。クラクラだ(死語)。
しかしやはり赤ちゃん、マシュー君にはかなわないです。
これを観て赤ちゃんが可愛くないと思う人は地獄に落ちるよ!
このベビー、生後6ヶ月ですがなんとこの作品で
香港電影金像奨(要はアカデミー賞クラス)の最優秀新人賞に
ノミネートというなんとも香港らしいエピソード付き。

贅沢は言いません。
こんなヒロインとベビーが人生で隣にいてくれれば。十分贅沢か。

「インファナル・アフェア」等の重厚な香港映画復活も好ましいですが、
今作の笑ってほっとしてホロっとしてスカットしても良き香港映画であり、
復活していって欲しい流れの一つでもあります。
これも映画への愛、ジャッキーからファンと子供達への愛。
これだよジャッキー!理屈無しに面白いよ!プロジェクトBB!
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