国分名演2007年06月12日 22時15分33秒

6月も中盤に差しかかり今の職場に出勤するのも実質2週間をきりました。
ああ早く6月終われば良いのに。

そんな中で国分太一主演の「しゃべれどもしゃべれども」を鑑賞。
落語を中心とした珍しい作品。佐藤多佳子の小説が原作。

<物語>
さっぱり客を笑わせることができない二つ目の落語家・今昔亭三つ葉。
ひょんなことから「話し方教室」を始めることになり、
集まった生徒は勝気な関西弁少年・村林優、
無愛想で口下手な美人・十河五月、
毒舌だが本番は上手く言葉が出ない野球解説者・湯河原太一の三人。
古典落語の「饅頭こわい」を教材に覚えてもらうことにするが、
くせ者三人は喧嘩も絶えず話し合うこともままならない。


ちなみに「二つ目」とは落語家の三階級の真ん中、
下は「前座」上は「真打」です。

しゃべれどもしゃべれどもの後にはもちろん、
「相手に伝わらない」が続きます。
三つ葉は寄席で幾らしゃべってもお客に伝わらず、
湯河原は普段はTVに向ってなら文句をペラペラ言うタイプ、
十河は失恋から周囲から距離を置くことにした女性。
この十河のキャラクター性はいわゆるツンデレなのですが、
意図せずとも少々時流に乗った感があるためもう少しイジッて欲しいです。

村林、はタイプが違う裏も表も喋り捲る機関銃のような少年ですが、
これは言葉が多いだけで相手に届いているかは二の次だったりします。

そんな彼らが後半はちょっとだけ相手に伝えられるようになりますが、
前後でどう違うかと言えば、十河や湯河原が示すように、
自分が傷つくことを恐れるか否かだと思います。
こう言えば相手がこう思う、めぐり巡って自分がこう思われる、
故に自分を守ろうとするために言葉にブレーキがかかる。
現在のコミュニケーション下手の多くはこのパターンです(経験談)。
だから三つ葉の酒の勢いに任せた「火焔太鼓」の大成功は
変な足枷を振り切った、いやむしろかけるのを忘れた故のもの。

この「火焔太鼓」を聞いていた十河は三つ葉の前で
好きな落語と言い切りいきなり「火焔太鼓」を披露します。
ハッとする三つ葉。粋な告白でありそれに気付くのも粋であります。

自分をあと少し恐れず偽らず真っ直ぐに出す、
一方でしゃべらなくともいい、呼吸での理解も知る。
言葉で伝える難しさと言葉以外で伝わるもの。
若い衆のもどかしさと微笑ましさ、奥ゆかしさとそして粋。
日本人のDNAを直撃する、妙に晴々とした気持ちになれる佳作。
欲を言えばラストをもっと捻って欲しかったのですが。

国分太一と伊東四朗の名落語。この芸立者振りは観ておきたいです。
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