閑話休題2010年01月08日 07時24分09秒

今日は一昨日と昨日のベスト10に入らなかった映画の話を
する予定でしたが、明日に延ばして閑話休題をとります。

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映画というのは不思議なものです。

今こうしている間にも、世界のどこかでは映画を撮るために
あらゆる格闘が繰り広げられています。
スピルバーグが、ブラット・ピッドが、イーストウッドが、
あるいはキロアスタミが、ケン・ローチが、ソクーロフが。
もしかするとビクトル・エリセも。

僕らが日々を過ごしている間に木村大作や浅野忠信が
剣岳で命がけで映画のために奮闘をし、
評価がどうであれ渡辺謙が純粋な情熱を燃やしている。

その映画はバラバラに勝手に作られるのではなく、
相互に関係し、影響を与え、遺伝子を受け継いでいきます。
黒澤明が「用心棒」を完成させ、それを勝手に拝借した
「荒野の用心棒で」イーストウッドがスターになる。
そして僕はイーストウッドの名を、彼が演じるガンマンが好きな
スピルバーグ&ロバート・ゼメキス等が手掛けた
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の中で知ることになる。

全ての映画がそうではないけれども、映画には作り手の思いや、
人生と経験が注ぎ込まれ映画の血やDNAとなっています。
さらにイーストウッドにご登場願うなら、
「グラン・トリノ」はあの時点のイーストウッドにしか撮れず、
「ダーティハリー」の頃には撮れなかったはず。
イーストウッドの試みがどうかは知らないけれども、
そこに僕らは彼のそれまでの歩みを感じ取ることはできます。
(一昨日、反抗と言ったものの、敬愛もまたしているのです。)

そんな映画が海を渡り、あるいは国内で製作され、
また数十年前に作られた映画が時を越えても存在し、
世界の中では極小の点に過ぎない僕等の町の映画館で公開され、
鑑賞した何人かの心に"何か"を感じさせるのは
考えてみれば不思議なことではないでしょうか。

何かを感じた瞬間、僕等は彼らから渡されるものがあり、
また一部の人には人生に影響を与えていきます。
それは本当に一部の奇跡に過ぎないけれども、
他ではちょっと見られない可能性があります。
世界を映し、人間を映し、心を映し、歴史を映し・・・。
1対1の関係性ではなく多岐に渡る関係性が生まれるのも
映画の持っている可能性だと思います。

僕の中にもあなたの中にも、尊敬する監督、脚本家、音楽家、
愛してやまない俳優の僅かな息吹が宿っています。

何より、そんな映画をきっかけに僕等は色々な人と巡り合い、
僕等の日常も、人の輪も広がって行きます。

・・・・・

ブログも長く続けていると不思議なことがあります。

2005年の10月から続けてきたこのブログ。
当初は映画のブログにするつもりは無く、
題材がないからと半ば仕方ない感じで書き始めたのが、
いつのまにかかなりの量を積み重ねることになりました。

映画を頻繁に観始めたのは2000年前後。
最初は今日の前置きで書いたことなど考えもしなかったし、
ヴェンダースもジャームッシュも眠くて分からなかった。
貪るように鑑賞していた熱も数年で落ち着いてきて、
もうそろそろこの辺でいいかなと思うこともありました。

ブログも同様、何のために書いているのか、
誰に向けて書いているのかも見えず、
ただ漫然と"こなす"日々が続くこともあり、
また全く気が乗らずにしばらくの間、放置することも。

振り返れば恥ずかしいことも酷いこともいっぱい書いていて、
こっそり削除したいところだけど、僕自身の恥と酷い面を
否定することはできないので敢えてそのままにしています。

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地道に続けて現在。
続けてきたことは無駄ではなかったと感じています。
映画を観続けてきたことも、映画と関わるこれからのことも、
意味があることだと確信を持っています。

もしかしてもうただ消費するだけで無駄ではないか、
このまま先に進んでいっていいのか。
そう不安や疑問を抱く時、いや正しい大丈夫と背中を押す、
ほんのささやかだけど力をくれる"何か"が起こってきました。
誰かの言葉であったりタイミングの一致であったり。

このブログを読んでもほとんどの人は何も感じず、
一笑に付されることになるでしょうけども、
僅かでも一人でも多くの人が何かを感じてくれているのならば、
僕のやってきたことは意味があったのだと感じています。
それらも僕を突き動かした映画のおかげだと感じます

例えその反応が目に見えなくとも、ただ感じてくれていれば、
それだけで僕らの存在は意味があり、孤独ではありません。

それが分かった今、不安は感じません。
やるべきと感じたことをやっていきます。
障害はあるでしょうが、乗り越えるべきと思えば
必要以上に恐れることはないでしょう。


どこかでこのブログを読んでくれている誰かへ
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