酸いも甘いも楽しき哉 ― 2008年08月28日 23時51分47秒

「純喫茶磯辺」を鑑賞したらば、
今年の劇場鑑賞映画は150本を達成致しました。
去年は7月あたりでペースが落ちたのに、
今年は未だに月20本前後をキープ。
「崖の上のポニョ」でスクリーン数を割かれて
他の作品が公開されないかという心配は杞憂でありました。
9月も21本鑑賞予定なので10月には去年の記録を更新予定です。
なんてことを考えていたら去年のブログで、
来年は記録を狙いません。なんてことを言ってしまっている。
でも確かに別に狙っているわけでもなく、
観たいものを片っ端から観たらそうなっている、というだけ。
「観たい映画が全然無い」とか「迷ったら観に行かない」
などというマイナス思考ならぬマイナス嗜好を耳にしますが、
どうもそういう方々とはアンテナの感度が違ってしまっている様です。
無論、観たい映画=面白かった映画と必ずしもそうなるわけでは
無いけれども、やはり、求めよさらば与えられんの精神か、
毒か薬かは食って確かめよの原始人戦法か、
とりあえず失敗したらばしたらでそれさえもネタとして楽しむ、
映画を観るという行為と行動自体を好むタランティーノ頭でいれば
大抵の映画は楽しくなるのではないだろうか。
枕が実に長くなってしまいましたが、
「純喫茶磯辺」は新人監督・吉田恵輔と個性派キャストが
商店街の喫茶店を舞台に繰り広げる佳作。
《物語》
工事現場作業監督の磯辺裕次郎(宮迫博之)は、
妻と離婚して娘・咲子(仲里依紗)と慎ましく暮らしていたが、
突然死んだ父の遺産が転がり込んで退職して中年ニートに。
喫茶店のマスターに憧れて「純喫茶磯辺」を開店するが、
センスも商才も接客経験も無いため閑古鳥が鳴く。
そこへアルバイトに入った素子(麻生久美子)を目当てに
常連客が集まりだし、裕次郎は年甲斐なく恋に目覚め・・・。
麻生久美子の自己破壊が素晴らしい。
綺麗な顔してあの子もやるもんだネ、っとズルい女で
メイド喫茶もどきの制服を天然的に着こなし、
遂に酒の勢いで性癖をカミングアウトするヘンタイぷりに天晴れ。
初めてその名を意識したのは窪塚洋介が天草四郎を演じた
「魔界転生」が最初でしたが、単に綺麗な女優という以上のものは
ありませんでしたし、それ以前に出演していた作品を観ても、
賞を取った作品もあるものの、やはり印象は変わりませんでした。
「時効警察」で弾けたものの、「ハーフェズ ペルシャの詩」で
海外進出した際にはやはり正統派女優で売るのか、
と冷めた想いがありましたが、是非この磯辺を忘れないで欲しい。
女優はいかにヘンタイをモノにするかで価値が決まる。
なお、ヘンタイとは別に性異常者や犯罪者のことではなく、
一般の常識概念で造られる自己のイメージを率先して破壊し、
さらにそのエキセントリックな行為にアンビバレンスな
快感と自己の成長を感じること。
男優ならば田口トモロヲを筆頭に香川照之、阿部サダヲ等。
近年これを開眼して益々箔がついたのが木村佳乃嬢様。
「全然大丈夫」「寝ずの番」のヘンタイぶりが
女優どころか人間的な魅力までも引き出してますます好きです。
人間だれしも大なり小なりヘンタイなのです。
この作品に出る曲者達も皆ヘンタイ。
でもよく観ると、ここにもそこにもあそこにもいるようなプチヘンタイ達。
そこが普通に笑って泣けるサプリメントの様な
泡沫的人情話と一線を画するところ。
セリフを一言も発せず存在感だけでアピールする
ミッキー・カーチス御大だってダンディ気取りのナルシズムヘンタイ。
まあ、中には本当にロリコン盗撮変態も登場するのですが、
そんな本当の変態にはキッチリ落とし前をつける。
店の金はくすねる、澄ました顔で店のチラシをマックのゴミ箱に捨てる、
そんな意識的な悪女の面を持つ素子は、
無意識的にも他人の領域にずけずけと入り込み引っ掻き回し
挙句にバツが悪そうに店を去って行く。
これが最後の最後まで呆れる女なのですが、
それなりに汚れ仕事をこなしていた事に端と気づき、
謝ろうとする咲子と、それでも追いかけようとする裕次郎、
その姿勢が人間と思い出の本質ではないでしょうか。
最初はダサイ・ウザイとツンツンしているだけだった咲子の、
「こんな店無くなってよかった」と喜びも寂しさも入り混じった、
複雑な涙を流すラストには、良い思い出も悪い思い出も、
全てを受け入れた成長が窺えます。
素子への想いの発露はその象徴なのだと思います。
人生の充実度はバカの数で決まるかもしれない。
安全ルートを歩くスレた態度は本当に未成熟な精神にしかならない。
「大人だって恋いしたいと思っているんだよ」という
裕次郎の別れた妻の言葉は、
もっともっとバカを真剣に貫きたいという渇望に聞こえる。
今年の劇場鑑賞映画は150本を達成致しました。
去年は7月あたりでペースが落ちたのに、
今年は未だに月20本前後をキープ。
「崖の上のポニョ」でスクリーン数を割かれて
他の作品が公開されないかという心配は杞憂でありました。
9月も21本鑑賞予定なので10月には去年の記録を更新予定です。
なんてことを考えていたら去年のブログで、
来年は記録を狙いません。なんてことを言ってしまっている。
でも確かに別に狙っているわけでもなく、
観たいものを片っ端から観たらそうなっている、というだけ。
「観たい映画が全然無い」とか「迷ったら観に行かない」
などというマイナス思考ならぬマイナス嗜好を耳にしますが、
どうもそういう方々とはアンテナの感度が違ってしまっている様です。
無論、観たい映画=面白かった映画と必ずしもそうなるわけでは
無いけれども、やはり、求めよさらば与えられんの精神か、
毒か薬かは食って確かめよの原始人戦法か、
とりあえず失敗したらばしたらでそれさえもネタとして楽しむ、
映画を観るという行為と行動自体を好むタランティーノ頭でいれば
大抵の映画は楽しくなるのではないだろうか。
枕が実に長くなってしまいましたが、
「純喫茶磯辺」は新人監督・吉田恵輔と個性派キャストが
商店街の喫茶店を舞台に繰り広げる佳作。
《物語》
工事現場作業監督の磯辺裕次郎(宮迫博之)は、
妻と離婚して娘・咲子(仲里依紗)と慎ましく暮らしていたが、
突然死んだ父の遺産が転がり込んで退職して中年ニートに。
喫茶店のマスターに憧れて「純喫茶磯辺」を開店するが、
センスも商才も接客経験も無いため閑古鳥が鳴く。
そこへアルバイトに入った素子(麻生久美子)を目当てに
常連客が集まりだし、裕次郎は年甲斐なく恋に目覚め・・・。
麻生久美子の自己破壊が素晴らしい。
綺麗な顔してあの子もやるもんだネ、っとズルい女で
メイド喫茶もどきの制服を天然的に着こなし、
遂に酒の勢いで性癖をカミングアウトするヘンタイぷりに天晴れ。
初めてその名を意識したのは窪塚洋介が天草四郎を演じた
「魔界転生」が最初でしたが、単に綺麗な女優という以上のものは
ありませんでしたし、それ以前に出演していた作品を観ても、
賞を取った作品もあるものの、やはり印象は変わりませんでした。
「時効警察」で弾けたものの、「ハーフェズ ペルシャの詩」で
海外進出した際にはやはり正統派女優で売るのか、
と冷めた想いがありましたが、是非この磯辺を忘れないで欲しい。
女優はいかにヘンタイをモノにするかで価値が決まる。
なお、ヘンタイとは別に性異常者や犯罪者のことではなく、
一般の常識概念で造られる自己のイメージを率先して破壊し、
さらにそのエキセントリックな行為にアンビバレンスな
快感と自己の成長を感じること。
男優ならば田口トモロヲを筆頭に香川照之、阿部サダヲ等。
近年これを開眼して益々箔がついたのが木村佳乃嬢様。
「全然大丈夫」「寝ずの番」のヘンタイぶりが
女優どころか人間的な魅力までも引き出してますます好きです。
人間だれしも大なり小なりヘンタイなのです。
この作品に出る曲者達も皆ヘンタイ。
でもよく観ると、ここにもそこにもあそこにもいるようなプチヘンタイ達。
そこが普通に笑って泣けるサプリメントの様な
泡沫的人情話と一線を画するところ。
セリフを一言も発せず存在感だけでアピールする
ミッキー・カーチス御大だってダンディ気取りのナルシズムヘンタイ。
まあ、中には本当にロリコン盗撮変態も登場するのですが、
そんな本当の変態にはキッチリ落とし前をつける。
店の金はくすねる、澄ました顔で店のチラシをマックのゴミ箱に捨てる、
そんな意識的な悪女の面を持つ素子は、
無意識的にも他人の領域にずけずけと入り込み引っ掻き回し
挙句にバツが悪そうに店を去って行く。
これが最後の最後まで呆れる女なのですが、
それなりに汚れ仕事をこなしていた事に端と気づき、
謝ろうとする咲子と、それでも追いかけようとする裕次郎、
その姿勢が人間と思い出の本質ではないでしょうか。
最初はダサイ・ウザイとツンツンしているだけだった咲子の、
「こんな店無くなってよかった」と喜びも寂しさも入り混じった、
複雑な涙を流すラストには、良い思い出も悪い思い出も、
全てを受け入れた成長が窺えます。
素子への想いの発露はその象徴なのだと思います。
人生の充実度はバカの数で決まるかもしれない。
安全ルートを歩くスレた態度は本当に未成熟な精神にしかならない。
「大人だって恋いしたいと思っているんだよ」という
裕次郎の別れた妻の言葉は、
もっともっとバカを真剣に貫きたいという渇望に聞こえる。
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