想いは海を渡り2008年02月01日 02時12分06秒

日頃、ギャンブルはやらないと思っている私ですが。
パチンコも麻雀も競馬も競輪も競艇も。
博打も花札もロシアンルーレットも。
ギャンブル映画は好きですけどね。

でもよく考えると映画って結構ギャンブル要素があると思います。
同じ値段で90分だったり4時間以上の大作だったり。
無名俳優ばかりだったりオールスターキャストだったり。
あまりにつまらなく怒り心頭だったり、
いつまでも心に輝く素晴らしき作品だったり。
いわゆる、値段相応だということが少ないのです。

だから皆、批評や宣伝を気にしたりして、
少しでも勝率をあげようとするのではないでしょうか。

作る側もウン十億円かけて散々な目にあったり、
超低予算で一躍評判をあげたりするのですから、
発信側も受け側もかなりギャンブルしているのだと思いますよ。

しかしギャンブルとはいえ、映画を崇拝するほどではありませんが、
単に金を賭けた儲けた損した人生潰したよりは、
人間熟成の糧とできるような知的なギャンブルではないでしょうか。


さてそれではお休み前に「シルク」の話を。

<物語>
19世紀フランス。製糸産業に沸く村で良質の蚕を手に入れるため、
遥か遠く、日本の地で卵を買いつけ孵化する前に
村へと持ち帰る計画が立てられる。
実質的に日本への密入国となる危険な旅へ向かう者として、
若き軍人エルヴェに白羽の矢が立てられた。
結婚したばかりの美しき妻エレーヌを残し旅立った彼は、
日本の地で美しき日本女性と出会う。
彼女は権力者・原十兵衛の妻だったが、
蚕の卵を買いに行く限り彼女に会うことができる。
エレーヌを想いながらもエルヴェは日本への旅を続けるのだった。


時は19世紀、日本は当然鎖国の時代。
買い付けは日本国内の奥地へ行かねばならない。
西洋からすれば蛮族の地、そんな危険な旅を冒し、
フランスと日本の地を行き来するエルヴェと、
夫の心の移ろいを感じながらも長き月日も待ち続けるエレーヌ。
浮気だのという俗な感情では到底できない、
正に絹の糸のように純度の高い想いがテーマです。

隣の町とかそんなレベルではない、何ヶ月もかけ
日本で捕まれば悪くすれば死刑となるのに、
それでも行くのはただの浮気性には無理な話。
そこがこの話でエルヴェの弁護となりうる根拠ではないでしょうか。

西洋人からみた東洋人への神秘願望はあるものの、
それは水仙の花と緩やかな音楽とともに、
この映画の美しさを高めることとなっていると思います。
墓の周りに咲く水仙も含め自然の空気感が綺麗。

ただ、登場人物の感情の機微に重点を置くあまりに、
長期間に及ぶはずの危険な旅の行程が、
ものの見事に省略され、あっという間にフランス・日本間を
何往復もしてしまうところは拍子抜けしてしまいます。

日本までの旅の行程を演出を豊かに描き、
困難が主人公の成長と妻と想い人への愛を強くする、
そんなストーリーを期待していると肩透かしをくらってしまう、
見方により好みが分かれる作品です。
そういう意味では芸術映画としては良いものの、
大作というほどの風格には物足りないかもしれません。
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