これまでがあり、これからがある。 ~ホルテンさんのはじめての冒険 ― 2009年04月09日 22時46分31秒

2008年度のアカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表作品
「ホルテンさんのはじめての冒険」についてのこと。
<物語>
列車の運転士になってこの道40年のホルテンさん。
定年を明日に控えた彼の生活はいたって平凡、
決まった時間に出勤して決まった仕事をして、
線路沿いのアパートに帰り小鳥と暮らしている。
ところがいよいよ最終の勤務日前夜、
規則正しい日々に小さな事件が発生していく。
長い長いトンネルを抜ければ雪国だった。
そんなありきたりの言葉を素直に連想するくらいに、
冒頭はトンネルから大雪原に抜ける列車の運行から。
ホルテンさんの運転する列車はノルウェーの首都オスロと
ベルゲンの間のベルゲン急行。
日本に暮らす我々にとっては例え北海道に住んでも、
この風景からファンタジックな映画に呑み込まれる。
北欧の、雪と曇り空の童話のイメージが
そのままこの映画の中にあります。
変化のない日々を送ってきた壮年の人間が、
ふとしたきっかけからいつもと違う日常を歩み始め、
今まで気づかなかった、直ぐそこにあった幸福に気づく、
そんな展開が予想される導入部ですが、
この映画が一味違うのは、今その時だからこそ
感じることのできるもの、を大事に描いていること。
冒険とは自分の知らない未知を拓くという面と、
今まで培った自分自身の持てる力の全てをもってして、
その未知にぶつかった時にどんな想いが生まれるか、
それを試みるものでもあると思います。
冒険の半ばでホルテンさんは煙草屋に入ります。
男の店主が女店主になっていることに気づくホルテンさん。
実は主人が亡くなり奥さんが引き継いでいるらしい。
でもそれも、近々続けられなくなる様子。
奥さんはご主人からホルテンさんは
一番古くからの馴染みの客だとを聞いており、
パイプを買換えるホルテンさんに主人のお気に入りを勧める。
この短いやりとりの間に、ホルテンさんの平坦な人生が
他人の人生との接点を慎ましくも持っていること、
その想い出が人から人へ語り継がれ受け継がれることが、
雪降る町の小さな灯火のように
暖かなファンタジーとして輝いています。
お気に入りの店に通い続けているからこその思い出。
仮にホルテンさんが若い頃から冒険心旺盛で
あちこちに飛び回っていたら、全く違うことを感じたはず。
静かに降り積もる雪の様に、黙々と日々を過ごした
ホルテンさんしか感じ入ることができないことがあるはず。
人生は全てはタイミングと経験。
回り道でも変化がなくとも
それがなければ辿り着けない場所がある。
得なかった代わりに得るものがある。
人生が続く限り終着駅ではありません。
冒険の終わりにホルテンさんには新しい家族ができます。
めぐり合う時期は人生の後半であっても、
幸福は来たるべき時に来るもの。
それはこれまでの人生がくれた贈り物なのでしょう。
家族の一人の犬が妙に印象深い演技をするかと思えば、
思ったとおり、2008年のカンヌ映画祭において
パルム・ドッグ賞を受賞していました。
(グランプリの"パルムドール"にかけたシャレの賞)
ホルテンさんは煙草はパイプ派。
夜の雪の街で吹かすパイプの煙と皺の刻まれた表情が
冒険の束の間、感慨に耽る佇まいとともに、
ここ最近の映画でみた中で一番印象深い喫煙シーン。
煙草は吸わないけれども
佇まいで語れる人間になりたいものです。
「ホルテンさんのはじめての冒険」についてのこと。
<物語>
列車の運転士になってこの道40年のホルテンさん。
定年を明日に控えた彼の生活はいたって平凡、
決まった時間に出勤して決まった仕事をして、
線路沿いのアパートに帰り小鳥と暮らしている。
ところがいよいよ最終の勤務日前夜、
規則正しい日々に小さな事件が発生していく。
長い長いトンネルを抜ければ雪国だった。
そんなありきたりの言葉を素直に連想するくらいに、
冒頭はトンネルから大雪原に抜ける列車の運行から。
ホルテンさんの運転する列車はノルウェーの首都オスロと
ベルゲンの間のベルゲン急行。
日本に暮らす我々にとっては例え北海道に住んでも、
この風景からファンタジックな映画に呑み込まれる。
北欧の、雪と曇り空の童話のイメージが
そのままこの映画の中にあります。
変化のない日々を送ってきた壮年の人間が、
ふとしたきっかけからいつもと違う日常を歩み始め、
今まで気づかなかった、直ぐそこにあった幸福に気づく、
そんな展開が予想される導入部ですが、
この映画が一味違うのは、今その時だからこそ
感じることのできるもの、を大事に描いていること。
冒険とは自分の知らない未知を拓くという面と、
今まで培った自分自身の持てる力の全てをもってして、
その未知にぶつかった時にどんな想いが生まれるか、
それを試みるものでもあると思います。
冒険の半ばでホルテンさんは煙草屋に入ります。
男の店主が女店主になっていることに気づくホルテンさん。
実は主人が亡くなり奥さんが引き継いでいるらしい。
でもそれも、近々続けられなくなる様子。
奥さんはご主人からホルテンさんは
一番古くからの馴染みの客だとを聞いており、
パイプを買換えるホルテンさんに主人のお気に入りを勧める。
この短いやりとりの間に、ホルテンさんの平坦な人生が
他人の人生との接点を慎ましくも持っていること、
その想い出が人から人へ語り継がれ受け継がれることが、
雪降る町の小さな灯火のように
暖かなファンタジーとして輝いています。
お気に入りの店に通い続けているからこその思い出。
仮にホルテンさんが若い頃から冒険心旺盛で
あちこちに飛び回っていたら、全く違うことを感じたはず。
静かに降り積もる雪の様に、黙々と日々を過ごした
ホルテンさんしか感じ入ることができないことがあるはず。
人生は全てはタイミングと経験。
回り道でも変化がなくとも
それがなければ辿り着けない場所がある。
得なかった代わりに得るものがある。
人生が続く限り終着駅ではありません。
冒険の終わりにホルテンさんには新しい家族ができます。
めぐり合う時期は人生の後半であっても、
幸福は来たるべき時に来るもの。
それはこれまでの人生がくれた贈り物なのでしょう。
家族の一人の犬が妙に印象深い演技をするかと思えば、
思ったとおり、2008年のカンヌ映画祭において
パルム・ドッグ賞を受賞していました。
(グランプリの"パルムドール"にかけたシャレの賞)
ホルテンさんは煙草はパイプ派。
夜の雪の街で吹かすパイプの煙と皺の刻まれた表情が
冒険の束の間、感慨に耽る佇まいとともに、
ここ最近の映画でみた中で一番印象深い喫煙シーン。
煙草は吸わないけれども
佇まいで語れる人間になりたいものです。
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