唯一無二の男2008年09月16日 23時56分01秒

夕方に変わった雲が出ていました。
まるで光線が通過したような穴が開いています。


さて、火曜日はDVDレンタルの日。
毎週3~4本借りていましたが、
ブルース・リー没後35年なので彼の主演映画を3本借りていました。
「ドラゴンへの道」「ドラゴン怒りの鉄拳」「死亡遊戯」の3本。

先日、J&Jが共演した「ドラゴンキングダム」でも
ブルース・リーへのオマージュが観られており、
ジャッキーとジェットのアクションに痺れたばかりですが、
やはりブルース・リーのアクションは改めて凄いと思いました。

今の若い人にはカンフーの達人と思われているでしょうが、
もちっと細かくするとブルース・リーの格闘術は
截拳道(ジークンドー)と呼ばれる彼が創始した格闘術。
幼い頃から少林拳を学んでいましたが、
それに空手やボクシング等を取込んで編出したもの。
「死亡遊戯」では爪先でピョコピョコ跳ねながら間合いを取っており、
蹴りの形がテコンドーやサバットを思わせます。
まあ、その辺については格闘マニアほど詳しくないのでこの辺に。

様々な格闘技を取込みつつも型として完成させており、
ジャッキーのようなごった煮無国籍流でもなく、
リー・リンチェイ(ジェット・リー)の少林拳主軸でもない、
独特のアクションを持っています。

また、映画としてのアクションの見せ方の研究にも余念がなく、
拳を繰り出す直前の「間」等は、熱心に見ていた「座頭市」や
黒澤時代劇からヒントを得ていたといいます。
截拳道には日本の武道と精神も取り入れたといいますが、
そういう話を聞くと親しみと尊敬がわくと言うものです。

凄いのはアクションに籠められた感情の迸りで、
筋肉と怪鳥音(アチョーという奇声)よりも、
怒りや哀しみを背負った者の気迫がこちらを捕えます。
今、自分の身ひとつでそれを表現できる役者は少ないと思います。
あるいは、凝った映像処理のせいで、
役者自身の演技なのか監督の演出の技なのかが
見えにくいという状況にもあるのだと思います。
(もちろん、理想は役者とスタッフが生む相乗効果ですが)

もう一つ。その怒りと哀しみに関係することですが、
基本的にブルース・リーの主要な主演映画には
戦い終わって虚しさ残る、という考えが根底にあるように見えます。

「ドラゴン危機一発」「燃えよドラゴン」で戦いの後は静かに去り
「ドラゴンへの道」「ドラゴン怒りの鉄拳」でも
最初は無闇に戦わないという基本があります。
それが、相手の非道に我慢の限界がきた時に
火山のように爆発する効果を生みます。
活人剣ならぬ活人拳とでも言えましょうか。

今のアクション映画はドラマを深く見せる、
アクションを視覚的未体験ゾーンへ誘うことを主とし、
CG全盛から身体を張った生身のスタントアクションの見直し期ですが、
アクションとドラマを同時に見せることが未だ少ないと思います。

「死亡遊戯」はブルース・リーの死により制作中止となっていたものを、
残っていた十数分のアクションシーンに追加撮影と
過去映像の流用で継ぎ接ぎした、今見ると荒の多い作品ですが、
その僅か十数分は、まさに死に挑む様なブルース・リーの
渾身の一撃、魂の燃焼が見えます。

没後35年という節目にあなたも唯一無二の男を観てみてはいかが。
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