静流河深

終了間際のミニシアター映画、「フーリガン」を鑑賞。
主演は指輪物語のフロド君・イライジャ・ウッド。

友人の罪の濡れ衣を着せられハーバード大学を退学処分になった
ジャーナリスト志望の青年マットは
失意の中、ロンドンにいる姉夫婦の元へ渡る。
義兄の弟のピートに連れられサッカー観戦に行くが、
ピートはウェストハム・ユナイテッドのフーリガン・ファーム、
ＧＳＥのリーダー的存在であった。
彼と付き合うことでマットはサッカーの昂揚感と
フーリガンの危険な魅力に取りこまれて行く。


イライジャ・ウッドといえば若さ故のこともありますが、
大作のイメージも手伝ってアイドル的なイメージ。
しかし、本作を見ると実にハングリーな役者
ではないのか？と思わせてくれます。

全体の筋としてはボンボン青年が不良青年と出会って
危険な世界に惹き込まれタフに成長していく、
最後には元の世界に男として一回り大きくなって戻っていくというもの。

「武器は使わない」とかフーリガンにも自分達なりの
ルールがあるようですが、暴力を振るうことには変わりません。
ただ、暴力的ではあるもののその根底にあるものは
友情や結束や意地といった、理屈で説明できないこと、
グツグツとたぎる様な男の魂のようなものです。

「男には引くべき時と引かぬべき時がある」
という台詞は正しいか否かを越えた、まさに任侠の世界の言葉です。

しかし、かつてフーリガンのカリスマと呼ばれ現在は引退した
ピートの兄スティーブの存在は危険な魅力に警鐘を鳴らします。
かつて仲間を率い、間接的に相手の少年を殺した過去。
仲間やチームのためと言っても、力の暴走はいつかは哀しみを生む、
結局暴力は何も生むことはない。

フーリガン時代にスティーブの見た世界は、
家庭を持った後も自分の強さを形成したのではないでしょうか。
身体と魂でぶつかり合った男は何倍にも成長する、
同じことが帰国後のマットにも起こっているのだと思います。
それは陰の世界で哀しみを知り、陽の世界に戻ってきた
人間だけが感じうる強さではないでしょうか。