深く静かにえぐれ2006年02月19日 00時13分20秒

仕事帰りに「ミュンヘン」を観てまいりました。
なんといってもスピルバーグ監督ですからな。

とはいうものの。今回は宣伝活動がおとなしく、
巨匠の大作のわりには静かに公開されているように見えます。
前回の「宇宙戦争」を思い出せばその差は歴然としています。

そこに私はかえってスピルバーグの本気を感じます。
今回はエンターテイメントのお祭りではない、
確固たるメッセージと祈りを籠めた本当の映画であると。

何百年単位の民族間の争いと宗教対立。
他者が簡単に口を挟めるほど浅いものではありません。
しかし、暗殺者とテロリストの報復合戦の末端にあるものは
人と人の生命のやりとりのみであると思います。

やがて実行者も報復の影に怯える日々を送るように。
自業自得というのは簡単ですが、我々がその民族に国家に生まれ、
同胞を殺されたとき、国家を背負ってあるいは信念を貫いて、
どう向き合うでしょうか。
いえ、遠い国の出来事と考えるだけではいけないでしょう。
復讐、報復の糸は全ては一本に繋がるのですから。


静かに、深く心をえぐる映画です。
そしてこちらから読み解かなくてはならない映画であります。

コメント

_ 【視音摩缶】『ミュンヘン』 ― 2006年03月02日 21時29分33秒

【視音摩缶】『ミュンヘン』by96

スピルバーグ作品「シンドラーのリスト」「プライベートライアン」などより更に暗い映画だった。
日本人はユダヤ系の人々に、欧州の人々に比べて、偏見をもっていいないと言っていい。それは彼等を理解する、しないと言うより、身近かではないので判らないと言うところだろう。
教科書ならキリスト、ユダヤ教に始まり アウシュビッツがうかぶ。あとは映画やニュースで知るイスラエル国とアラブ諸国との諸問題など、ましてモサドを知ったのは大戦後の戦犯を追う機関として映画などで知った。
この映画では秘密機関モサドさえ抜けて、裏の報復者として殺人を続けていく 普通の男達の話なのである。
ミュンヘンオリンピックの黒い九月事件による悲劇に端を発し、国の忠誠の為に、同胞の為に、正義の為に殺人を重ねていく男たち。その先には……。
選んだ映画が、その日の気分には、重すぎたのだ。昔のフランス映画や東欧の暗く重い時代を題材にした映画を想い出してしまった。今回はこころが辛いよ。

【蛇足】個人的にはシアラン・ハインズのしぶさが好きである。ツゥームレイダー2にもでてたなぁ。

_ 河永 ― 2006年03月03日 00時12分37秒

96さん>
暗さの順なら「ミュンヘン」>「シンドラー」>「ライアン」だと思います。名の知られたスターが出演していないことも理由の一つかもしれません。
日本人は確かにユダヤ人差別や中東偏見に対して鈍感です。でも日本人は日本人で国内ではかつてアイヌや琉球、その他地域、朝鮮差別等があり、決して差別偏見に対して清い民族ではないと思います。乱暴ですが、そういうことを思い起こせば、多少なりとも他人事ではないと感じられないかと思います。

ところで、日本はそういうことに関心が薄い故に、様々な国・価値観の作品が入ってくると思います。これだけ西も東も多様な宗教圏のあちこちから作品を集められる国はそうそうないと思います。僕らはそれを最大限に利用できる恵まれた環境にいる気がします。

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