信用はどこへ消えた? 「クルード ~アマゾンの原油流出パニック~」2011年01月14日 23時53分14秒

現在も続く原油流出訴訟を記録した
「クルード ~アマゾンの原油流出パニック~」
についてのこと。


■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 http://www.mikoukai.net/009_crude.html
原題:Crude
2009年 アメリカ (105分)
2009年サンダンス映画祭出展作品 審査員賞ノミネート作品
監督:ジョー・バリンジャー


原油はアラブだけに存在するものではありません。
小国にも石油資源はあり、石油会社は海外へ進出してどんどん掘っていく。

南米エクアドルのアマゾンで操業していた企業・テキサコ。
現在は石油メジャー会社のシェブロンと合併している。
シェブロンは世界第6位の売上高を誇ると言われる世界的大企業。
ちなみに、日本が米海軍に供給する燃料はシェプロンからのものとのこと。

このテキサコが問題だった。
産出区域は森林の中にあり、森を拓いてパイプラインを通していくが、
これだけで現地に住み続けているコファン族人々の
生活と飲料水・食料の場を侵蝕した上、土壌と河川の汚染があった。
原油が施設から洩れて黒いタールの土と水を作り出していった。
原因は利益優先のための粗末な設備と管理体制だという。

1960年代にエクアドル政府の油井開発計画によって始められ、
テキサコが進出してきて6ヶ月後には汚染が始まったといいます。
その水を飲んだことによって、癌や皮膚病を患うことになった人々、
病気にかかり死んだ幼い子供が何人もおり、深刻な被害を被っている。

1993年、住民達はテキサコに対して訴訟を起こす。
2001年にテキサコと合併したシェブロンが訴訟を引継ぎ、現在に至る。

しかし、シェブロン側の弁護士と科学者は、設備は一般的な問題の無いもの、
開発は政府との協力関係で行われたもの、生活に影響が出るレベルではない、
病気が発生しているのは衛生上の問題など他の要因が考えられる、
確かに汚染されているがそれが我々がやったという証拠は?
などと、謝罪の言葉も被害の補償も行ってはいない。

映画の撮影された時点で14年戦い続けているという弁護士のパブロ氏。
彼は現地の住民の一人で、被害を受けているときから法律の勉強を重ね、
この訴訟のために弁護士となったのだということだ。
さらに、パブロ氏はテキサコで働いていた経験があり、会社の裏を知っている。
もう一人、ニューヨークのスティーブン弁護士はアメリカでの仕事を担い、
エクアドル住民の代表として、またパブロ氏のサポートも務める。
巨大企業に立ち向かう彼らの姿勢は、ゴリアテに立向かうダビデと呼ばれている。

14年、相当な年月です。環境訴訟は想像以上に長い時間を要すると言われ、
日本における訴訟もそうですが、それでも戦い続ける理由、
そこには祖先から受け継いだ美しい故郷を取戻したい、
被害にあった故人達の無念を晴らしたい、様々な思いが籠められていると思います。
そして戦い続けている間も人々は苦しみを強いられている。

消耗していく事態を動かす2つの要素がパブロ氏達に味方します。
まず1つは、2007年のエクアドルの新大統領への政権交代。
進歩的なコレア大統領は現地の汚染を視察し、事実の深刻さを肌で感じる。
責任の一端は国営のペトロエクアドルと政府にもありとして転嫁したシェブロンは
そのやり方が裏目に出て大統領から批難を受けることになる。
(シェブロンは何故我々だけを訴えるのだと言うが、そこがおかしい。
それは既に自分達に責任があることを認めてからの発言であるべきでしょう。)

もう1つはマスコミの力を味方につけたこと。
アメリカのメジャー雑誌ヴァニティ・フェア誌が、
パブロ氏の姿勢を好意的に取り上げて特集を組み、訴訟への注目は一気に拡大。
ここでも、パブロとスティーブンは金目当てで訴訟を起していると
メディアを悪用して中傷的批難を行ったシェプロン・テキサコは、
そのメディアの持つ善の側面に手痛い仕打ちを受けることになった。

さらに多くの人の目に触れる問題となったことで、
ポリスのスティングの妻であるトルーディ・スタイラーによって
環境保護団体レインフォレスト・ファウンデーションの協力を得られることに。
彼女の真摯な姿勢は追い風となり世論が味方を始めていく。
これまでの悩みだった住民の飲料水の確保も助けられる様になりました。

訴訟は未だに続いていますが、戦っているそのタイミング、
関わった人々によって大きく左右されるということがよく分かります。

既に証拠が出すぎているこの期に及んでもシェブロンは
見苦しくも恥も感じずに和解金を下げようと画策しているらしい。
最大級企業としての誇りと自信を持つのならば、
信用こそが第一、信用こそが利益だということは見えないのか。
石油は必要です。しかしそのために苦しむ人がいてはならない。
我々の生活を支えているものだけに胸が苦しくなります。

涼しい顔で否定し責任を逃れようとするシェプロンの弁護士と科学者達に、
ならばこの水を飲めと流し込んでやりたいものです。
そしてこう叫びたい。「来てくれ!イエスメン!」
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