「戦え!イクサー1」と渡辺宙明のお仕事2010年09月30日 23時57分56秒

戦え!!イクサー1 コンプリートコレクション<通常版> [DVD]
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スーパーロボット大戦L 特典 「スーパーロボット大戦L」オリジナルマルチケース付き
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「スーパーロボット大戦L」の予習のために「戦え!イクサー1」を観る。
もとは阿乱霊原作の漫画ですが、今回観たのは1985年~1987年に発売された
全3巻のOVA版および、再構築された特別完全篇です。

地球を襲う宇宙からの侵略者クトゥルフに立ち向かう女戦士型人造人間イクサー1と、
彼女と精神が同調する地球の少女・渚のダブルヒロインを主人公におくSFアニメ。
ロボットアニメに区分されることもありますが、改めて観て、
作品全体でのロボットの活躍は少なく、またメカアクションも特に惹かれるものもなく、
どちらかといえば、人間体同士の戦いが重視されています。

EMOTION the Best 破邪大星ダンガイオー [DVD]
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本作の平野俊弘監督が同時期に手掛けた「破邪大星ダンガイオー」と比べると、
キャラクターの背景や目立った個性も無く、人類への警告めいたものや
深層深遠を覗く物語でもないため、ストーリーは平坦にあっさりしています。
そのあたりは可も無く不可も無いロリコン漫画というところです。
しかしながら、それ故に全てが終わり記憶がリセットされた渚を、
木漏れ日の影から母の様に見守るイクサー1と儚げな渚のラストカットが印象的で、
美少女漫画としては面目躍如と言った面もあると思われます。


ここで素晴らしい仕事をしているのは作曲家・渡辺宙明氏です。
この方は1950年代にデビューし映画音楽を手掛けながら、
1970年代からはアニメ・特撮の中で特にヒーロー&ロボット物のジャンルの
主題歌を数多く手掛けて活躍したアニメ作曲界の大先生です。

本作は明らかにロボが美少女の添え物であり、「マジンガーZ」から
「宇宙刑事シリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」などなどを手掛けた渡辺先生の
ディスコグラフィと比べ当時のアニメ主題歌アイドル化路線に寄ったものです。
実際、「永遠のイクサー1」を歌った柿沢美貴はアイドルとして出ました。

(余談ですが、柿沢美貴はその後、イベント企画会社の社長になったそうです。)


しかし当時、男向けアニメでも流行したアイドル調主題歌でありながら、
そんな中にあっても渡辺節は健在です。ただし、自分の世界に引き寄せすぎず、
表向きアイドル曲調を残しながら、でも聞かせる巧さ。

渡辺先生の曲調はマンネリズムの大成だと思います。マンネリというと
マイナスイメージが付き纏いますが、幾つかの例においてはそれこそが強力な武器で、
壮大なる伝説を作り上げる秘密であり、皆から愛される秘訣なのであります。

大体のクリエイターにはクセがあるとは言え、多くは新境地を模索し、
同じ様に聞こえる作曲を控えよう、あるいは間を十分に開けようとしますが、
渡辺先生は全く逃げません。一度作った曲からパーツを抜き出し、
他の曲にアレンジを加えて組み込み、さらなる進化を生もうとします。

アイドルだろうとポップスだろうと軍歌応援歌調だろうとも、
渡辺節の印を刻み芯を崩さないこだわり。
だからネタ切れに陥らずにむしろマルチに対応していきます。

「永遠のイクサー1」に関して言えば、同時期に手掛けた
ロボットTVアニメ「マシンロボ クロノスの大逆襲」の
挿入歌「戦え!バイカンフー」と共有する音があります。
さらに「マシンロボ」の曲調は1982年の「宇宙刑事ギャバン」の
幾つかの挿入歌からの発展が見受けられます。

近年の渡辺先生の仕事、2003年の「神魂合体ゴーダンナー!!」の各歌では、
1970年代への大回帰と見えながらも、そっくりそのままの70年代ではなく、
80年代~90年代を駆け抜けた上での2000年代の1970年代として完成しています。
そのパーツには「グレートマジンガー」が組み込まれ、
また「人造人間キカイダー」を思い起こすことも可能です。

80年代のロボアニメ原典回帰「光速電神アルベガス」
90年代のロボアニメ原典回帰「ゲッターロボ號」など、
ヒーロー&ロボットの原典回帰には渡辺先生の仕事がありました。
しかしその度、時流を取り込み、回帰ではなく進化してきた、
スパイラルなドリルの歩みを続けているのです。

このような、自作品のパーツを研磨や剪定をしながら堂々使用するのは、
他にはTHE ALFEEあたりでしょうか?

長く長く活躍するには新機軸を生み出し続ける引出しの多さではなく、
数個の引出しを巧みに衣替えし核の部分を崩さないことかもしれません。
色々やっても、其々に一貫した姿勢が無いと点と点は線で結ばれません。
マンネリズムは長く愛される者にこそ微笑むのです。
御年85歳の現在も、現在放送中の「天装戦隊ゴセイジャー」の挿入歌を担当。
時代はまだまだ渡辺節を求め続けています。
放送35周年記念 人造人間キカイダー/キカイダー01 MUSIC-BOX
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神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON オリジナル・サウンドトラック
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