漆黒の羽が舞う街で ~マックス・ペイン2009年05月04日 23時18分01秒

マーク・ウォールバーグ主演のアクション映画
マックス・ペイン」についてのこと。


アメリカで発売された同名の3Dアクションシューティングゲーム
いわゆる洋ゲーの映画化とのことですが、
私はゲームは遊んでいませんので
純粋にアクション映画として楽しみました。
単純化して言えば主人公の復讐劇です。


主人公・マックス・ペイン(マーク・ウォールバーグ)は
警官だったが、自宅で妻と子供を悪漢達に殺される。
その時、犯人達は射殺されるがマックスは一人が逃げたと主張。
懸命な捜査にも関わらず事件は迷宮入りしてしまう。

その後、相棒とのコンビも上手く行かなくなるなど、
なんやかんやあってマックスは資料科に飛ばされる。

しかし、マックスはただ腐っていたわけではありません。
独自にイヌ(情報屋)を使い、真の犯人を捜査。
そして妻を殺した犯人と同じと見られる殺人が発生し、
その裏に謎のドラッグと巨悪が関わっていることが分かって来る。

このドラッグというのは軍が極秘に研究を進めた、
精神と肉体を活性化させる"無敵の兵士達"を作るという薬。
ただし例によって副作用が酷くて開発を中止。
そしてまた例によってそれを利用しようとする者が・・・。
マックスの妻は仕事によってその闇の計画を知ることにより・・・。


それほど目新しい設定は無く、薬の開発を進めていたのも、
現在は巨大な製薬会社である点などは、
やや「バイオハザード」のアンブレラ社等を彷彿させます。
それでも雪や堕天使の幻影を用いた演出は捨てがたいです。

冒頭、マックスが氷の水中に飛び込み、
自分の死を悟るような台詞を言います。
街のシーンはその多くが夜で、雪が舞っています。
この雪がただ空から地面へ降り注ぐのではなく、
大量の鳥の羽が舞うように静かに宙を舞い幻想的にすら映ります。

その深海の底の様な街を復讐を背負ったマックスが黒いコートで歩く。
アジアや欧州のノワール映画の情感とまではいかないものの、
これが十分に、実にかっこいい。
映像は黒と白のコントラストを強調したもので、
「シンシティ」に雰囲気が近いものの、
あれほどまでにマンガではありません。

また、この鳥の羽のようにも見える雪が、
人物が殺される直前に現れる漆黒の堕天使の羽にも見えます。
この映画、その雪や鳥の羽(のようなもの)、あるいは書類や、
ガラス、破砕物の破片など、色々なものが、"舞う"。
物を舞わせることに美学を見出しているように思えます。


真の悪を知ったマックスが罠に嵌り、氷の水中に飛び込む。
ここが冒頭の氷の水中シーンに繋がります。
もはやこれまでかと諦めかけた瞬間、脳裏に浮んだのは妻の顔。
かっと見開き、彼は氷の上に這い上がる。
水の中で何らかの覚醒を見るのは「ジャンパー」や
「ボーン・アルティメイタム」でも用いられていますが流行か?

そして、凍える寒さの中、誰の助けもない状況で
マックスが選んだ手段、それは敵のアジトで手に入れた"薬"。
薬の大量摂取と復讐心によってのみ起ち上がったマックス。
宙を舞う大量の雪が今、復讐の火の粉となって空を紅く染め上げ
その咆哮に呼応するように堕天使達が舞う。
マックスは地獄の門もこじ開けた、裁きを下す死神となる。
この場面の高まるカタルシス!

薬の副作用によって暴走しかける精神を、
復讐の達成に執着する一念でかろうじて制御し、
高層ビルの屋上へ銃を乱射しながら駆け上がるマックス。

この展開から行くと、最後は廃人になるかと思いますが、
光の中から妻が現れ、彼を現実に呼び戻し、
そして、初めて太陽が雲間から覗く安堵のラスト。


途中、同じ映画とは思えないほどに、チープなシーンが
挿入される場面がありますが、それは忘れることにして。
エンドクレジット後、共闘したモナが差し出す新聞、
そこにはあの製薬会社の株が急騰したという記事が。
にこやかに微笑むもう一人の黒幕の写真。

やるんでしょ?と言わんばかりのモナの微笑。
そりゃ、次回作やって欲しい!


第一の被害者ナターシャを演じるオルガ・キュリレンコ
(「007/慰めの報酬」のボンドガール)、
強化兵士のルピノ役のアマウリー・ノラスコ
(「プリズン・ブレイク」のスクレ)など、脇役も光る。
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