映画史に刻もう(裏でも) ― 2008年08月11日 01時04分54秒

いよいよ8月11日を持って、三十路になろうとしています。
早いものよね。遠い未来のことだと思っていたのに。
でも、数日前から開き直るようになってきました。
あと行動パターンが、やりたいことから直ぐにやり始める傾向に。
そうやって段々心境が変化していくのよね。
あと5年後はどうなるのか。
とりあえず一人身は卒業したいものね。
さて本日はDVDの話。
先月だか先々月だか一度お勧めのDVDとして話題にした
「ウィッカーマン(1973年版)」が発売となり、手元に届きました。
物語を乱暴にまとめてしまうと、
敬虔なキリスト教徒の警部が少女の行方不明事件の捜査のために
ケルト族の信仰が根付くスコットランドの孤島へやってきて、
キリスト教とは全く違う価値観の住民達に惑わされ、
やっと行方不明の少女を救出するが、実は一連の事件は
警部を自分らの信仰の生贄にするための罠だった、
という筋であります。
ウィッカーマンとはその生贄を供えて火で燃やす巨大な人形で、
パッケージに現れている人形がそれです。
話の筋もさることながら、本作の魅力は
全体から受ける異質な印象に他なりません。
秋から冬に撮影されたこともあってか寂しさ溢れる島の寒村、
ミュージカルとも言えるゆったりと奇妙な村人の描写と
のどかな中で生理的な不安を呼び起す音楽。そしてエロティック。
因習、狂気、等のキーワードから似たものを探そうとするも、
横溝&市川崑の金田一作品のような華麗さではなく、
スティーブン・キングの描く狂気のような鋭さでもなく、
やはり本作で味わえる感覚は本作でしか味わえないと思います。
是非鑑賞していただきたい。購入する価値は十分にあり。
なお、ニコラス・ケイジ主演でリメイクはされていますが、
あれでガックリした人も是非鑑賞していただきたい。
映画には作品の内容以外にそれに纏わる話も手伝って
作品の魅力を増幅させている、いわば伝説を持っているものがあり、
このウィッカーマンもそれに該当すると言えます。
とにかく今回のDVD化は映画史に刻めと言っても良い朗報。
何しろこの作品、鑑賞すること自体が非常に困難だったのです。
それも1973年の完成当初から。
貴重な日本公開当時のパンフレットを元に追うと、
- イギリスで監督のロビン・ハーディーの下で制作が開始、
当初の製作会社が編集作業中にEMIに買収され責任者が変わり、
最初の完成形となる102分版が完成(以後、完全版と呼ばれる)。
その後、アメリカ・カナダでの配給権を交渉された
大御所ロジャー・コーマンの助言(スタッフによると不本意のようだ)
により、さらに短くした88分版が完成。これが最初の劇場公開版。
102分版は日の目を見ないかと思われたものの、
当時の配給元ワーナーの宣伝ミス等で88分版が興行的失敗。
すると、監督のハーディーが巻き返しを図るために、
1974年頃、配給権がニューオリンズの小さな会社に移ると
102分の完全版が存在すると伝える。
しかし、既に102分版は行方不明となっており大捜索が始まり、
その果てにコーマンのニューワールド・ピクチャーにて発見。
ここに102分版ディレクターズカットが完成する。
一方、長らくイギリス本土ではビデオもTV放映も88分版だったが、
1988年、アメリカで102分版の存在を確認、これをTV放映する。
しかし、アメリカのコピーは経緯は不明だが95分しかなかったため、
BBCは88分版に、95分版にしか無かったシーンを挿入する。
だが今度は編集のミスか、完成が92分となってしまったという。-
この88分、92分、95分、102分というバージョン違いの数と、
宗教的事情から物議を醸しだすに十分な内容、
またスプラッタ映画が人気を博し始めた当時の流行などから、
ホラー映画(一応は)、ウィッカーマンに対する評価は割れて混乱し、
いつしか廃盤ビデオがほぼ唯一の鑑賞手段と
いっていいものになったと言います。
精神的な恐怖、民族・宗教裏付けが一般にも評価される現在なら、
30数年前よりももう少し広く受け入れられるかもしれません。
日本で劇場未公開作品として発売されたビデオは
資料で確認する限り最短の81分版(廃盤)。
1998年になり88分版がやっと日本の劇場で公開。
その後、2003年に特別完全版と銘打った99分版が発売(即完売)。
私は2002年の暮れ頃に劇場の特別上映会で88分版を観ました。
なお、文献によっては88分版が87分版となっていたり、
EMI編集による102分版が99分版となる等、記録上も混乱しています。
さらに、102分版は当初の20分をカットしているとのことで、
スタッフが望んだ122分が正真正銘の完全版かもしれません。
ただ、私は残念ながら未見ですが
102分版や99分版よりも、88分版の方が面白いという意見が多いです。
そして今回のDVDはその88分版です。
完全版が初回公開版より面白いとは限らないものですが、
102分版では警部と村人双方の信仰が長く描かれているとのことで、
バックボーン資料として鑑賞しておきたいものです。
(パンフ等の資料から2006年のニコラス・ケイジ版リメイクは
102分版をベースにしている様です。)
今回も完全版ではありませんでしたが、
88分版は原点であり、上記の様な数奇な運命を辿りながらも
あったら見ておけという幻の作品として語り継がれ、
クリストファー・リーをして自身の最高の役柄と言わしめた、
これが1800円という安価なDVDで手に入ると言うのは
それだけで事件と言っていいものだと思うのです。
どこを切ってもミステリアス満載であるものの、ウィッカーマンを
ホラーとジャンル分けするのはやや苦しい。
かといってミステリー・サスペンスとも言い切れません。
ダニー・ボイル監督の「28日後・・・」を
ホラーと言い切れないのにも似ています。
(ちなみにダニー・ボイルの「シャロウ・グレイブ」に
ウィッカーマンのラストシーンが挿入されています。)
この作品の魅力は語っても語りつくせないし、
文章で表現しようとしてももどかしいばかりです。
とにかく観て欲しい。それが全てです。
早いものよね。遠い未来のことだと思っていたのに。
でも、数日前から開き直るようになってきました。
あと行動パターンが、やりたいことから直ぐにやり始める傾向に。
そうやって段々心境が変化していくのよね。
あと5年後はどうなるのか。
とりあえず一人身は卒業したいものね。
さて本日はDVDの話。
先月だか先々月だか一度お勧めのDVDとして話題にした
「ウィッカーマン(1973年版)」が発売となり、手元に届きました。
物語を乱暴にまとめてしまうと、
敬虔なキリスト教徒の警部が少女の行方不明事件の捜査のために
ケルト族の信仰が根付くスコットランドの孤島へやってきて、
キリスト教とは全く違う価値観の住民達に惑わされ、
やっと行方不明の少女を救出するが、実は一連の事件は
警部を自分らの信仰の生贄にするための罠だった、
という筋であります。
ウィッカーマンとはその生贄を供えて火で燃やす巨大な人形で、
パッケージに現れている人形がそれです。
話の筋もさることながら、本作の魅力は
全体から受ける異質な印象に他なりません。
秋から冬に撮影されたこともあってか寂しさ溢れる島の寒村、
ミュージカルとも言えるゆったりと奇妙な村人の描写と
のどかな中で生理的な不安を呼び起す音楽。そしてエロティック。
因習、狂気、等のキーワードから似たものを探そうとするも、
横溝&市川崑の金田一作品のような華麗さではなく、
スティーブン・キングの描く狂気のような鋭さでもなく、
やはり本作で味わえる感覚は本作でしか味わえないと思います。
是非鑑賞していただきたい。購入する価値は十分にあり。
なお、ニコラス・ケイジ主演でリメイクはされていますが、
あれでガックリした人も是非鑑賞していただきたい。
映画には作品の内容以外にそれに纏わる話も手伝って
作品の魅力を増幅させている、いわば伝説を持っているものがあり、
このウィッカーマンもそれに該当すると言えます。
とにかく今回のDVD化は映画史に刻めと言っても良い朗報。
何しろこの作品、鑑賞すること自体が非常に困難だったのです。
それも1973年の完成当初から。
貴重な日本公開当時のパンフレットを元に追うと、
- イギリスで監督のロビン・ハーディーの下で制作が開始、
当初の製作会社が編集作業中にEMIに買収され責任者が変わり、
最初の完成形となる102分版が完成(以後、完全版と呼ばれる)。
その後、アメリカ・カナダでの配給権を交渉された
大御所ロジャー・コーマンの助言(スタッフによると不本意のようだ)
により、さらに短くした88分版が完成。これが最初の劇場公開版。
102分版は日の目を見ないかと思われたものの、
当時の配給元ワーナーの宣伝ミス等で88分版が興行的失敗。
すると、監督のハーディーが巻き返しを図るために、
1974年頃、配給権がニューオリンズの小さな会社に移ると
102分の完全版が存在すると伝える。
しかし、既に102分版は行方不明となっており大捜索が始まり、
その果てにコーマンのニューワールド・ピクチャーにて発見。
ここに102分版ディレクターズカットが完成する。
一方、長らくイギリス本土ではビデオもTV放映も88分版だったが、
1988年、アメリカで102分版の存在を確認、これをTV放映する。
しかし、アメリカのコピーは経緯は不明だが95分しかなかったため、
BBCは88分版に、95分版にしか無かったシーンを挿入する。
だが今度は編集のミスか、完成が92分となってしまったという。-
この88分、92分、95分、102分というバージョン違いの数と、
宗教的事情から物議を醸しだすに十分な内容、
またスプラッタ映画が人気を博し始めた当時の流行などから、
ホラー映画(一応は)、ウィッカーマンに対する評価は割れて混乱し、
いつしか廃盤ビデオがほぼ唯一の鑑賞手段と
いっていいものになったと言います。
精神的な恐怖、民族・宗教裏付けが一般にも評価される現在なら、
30数年前よりももう少し広く受け入れられるかもしれません。
日本で劇場未公開作品として発売されたビデオは
資料で確認する限り最短の81分版(廃盤)。
1998年になり88分版がやっと日本の劇場で公開。
その後、2003年に特別完全版と銘打った99分版が発売(即完売)。
私は2002年の暮れ頃に劇場の特別上映会で88分版を観ました。
なお、文献によっては88分版が87分版となっていたり、
EMI編集による102分版が99分版となる等、記録上も混乱しています。
さらに、102分版は当初の20分をカットしているとのことで、
スタッフが望んだ122分が正真正銘の完全版かもしれません。
ただ、私は残念ながら未見ですが
102分版や99分版よりも、88分版の方が面白いという意見が多いです。
そして今回のDVDはその88分版です。
完全版が初回公開版より面白いとは限らないものですが、
102分版では警部と村人双方の信仰が長く描かれているとのことで、
バックボーン資料として鑑賞しておきたいものです。
(パンフ等の資料から2006年のニコラス・ケイジ版リメイクは
102分版をベースにしている様です。)
今回も完全版ではありませんでしたが、
88分版は原点であり、上記の様な数奇な運命を辿りながらも
あったら見ておけという幻の作品として語り継がれ、
クリストファー・リーをして自身の最高の役柄と言わしめた、
これが1800円という安価なDVDで手に入ると言うのは
それだけで事件と言っていいものだと思うのです。
どこを切ってもミステリアス満載であるものの、ウィッカーマンを
ホラーとジャンル分けするのはやや苦しい。
かといってミステリー・サスペンスとも言い切れません。
ダニー・ボイル監督の「28日後・・・」を
ホラーと言い切れないのにも似ています。
(ちなみにダニー・ボイルの「シャロウ・グレイブ」に
ウィッカーマンのラストシーンが挿入されています。)
この作品の魅力は語っても語りつくせないし、
文章で表現しようとしてももどかしいばかりです。
とにかく観て欲しい。それが全てです。
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