明日、あの日から2007年10月14日 22時46分48秒

どんどん寒くなっていくばかりで遂に毛布を出している次第。
今日は「月の砂漠」を流す灯油販売の車を見かけましたよ。

そんな秋はどうも昔の自分の空気を感じてしまい
センチメンタルやらノスタルジックやらな日々です。
加えてこの10月から年末までにかけて映画ラッシュが凄い。
もう切なくも心躍るも一緒くたで大変です。

そこへ今夜ご登場願うのは「ヒロシマナガサキ」。
日系3世のアメリカ人監督スティーブン・オカザキ氏が
広島・長崎の原爆投下の500人以上の被爆者の方達を取材し、
14人の被爆者と4人の米軍関係者の証言で構成、
アメリカ本土でTV放送もされた歴史的ドキュメンタリーです。


被爆した人達の証言とその様子を描かれた絵、
そして今も残る生々しい傷跡が原爆の力を物語ります。
恐怖ですらもない、人間の罪深さ愚かさと
それを受けてしまった哀しみ憐れみ、
全てのマイナスの衝撃がごちゃまぜに降りかかるようです。

にも関わらず被害を受けた人々の言葉は力に満ちています。
60年の時間の経過かその間の経験がさせるのか、
それとも元々あった力であったのか。
何れにせよ強さとともに失ったものは計り知れず
なぜこの人達だったのかと思います。
その衝撃に上映終了まで言葉がありませんでした。

私はこの「ヒロシマナガサキ」というタイトルの「ナガサキ」に注目します。
広島と同じく原爆の被害にあった長崎。
しかし私見ではありますが、原爆と言えばまず広島中心に語られ
長崎はその次という印象がないでしょうか。
広島は「ヒロシマ」と独立して語られますが、
長崎が「ナガサキ」として通じるという印象は薄いです。

「ヒロシマナガサキ」は邦題ですが、
原題は"WHITE LIGHT BLACK RAIN:
The Destruction of Hiroshima and Nagasaki"
であり、既にNagasakiが明記されています。

長崎原爆に焦点を当てたものは無いわけではなく
1988年の黒木和雄監督作品「TOMORROW 明日」や
黒澤明が脚色した「八月の狂詩曲」などがありますが、
これも時々広島の話と混同する方が見られます。

スティーブン・オカザキ監督はアメリカ人であり日本人の血も受ける
その微妙な立ち位置から広島・長崎を同じく見ることでき、
さらに相手への憎悪も自分の正当化もないまっさらな目で
ただひたすら原爆の残した傷跡と生存者の力強さを
焼き付けることができたのではないでしょうか。

この映画は世界が必ず見るべき作品であり、
歴史に名を刻むべき作品であります。
そして国からも忘れられようとしている彼らが
それでも倒されまいとしていることを忘れてはなりません。

冒頭に登場する東京の街は平和であります。
しかしこれは60年前の人々が求めた平和なのでしょうか?
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