町外れの幻想 ― 2007年05月03日 02時18分59秒

そんなわけでかなりサボっていました、ブログ更新。
気がつけばもう5月ではないですか。GWなんぞ関係ない職場ですけど。
その5月は鑑賞予定映画は少ないですが検定が再びある、
イベント多き月になっています。
そんな今日は時期を過ぎましたが「アルゼンチンババア」について。
<物語>
母が死んだ日、石屋職人の父、悟が失踪。
高校生みつこの日常は劇的に変化する。
しばらく経って町外れの遺跡のような古ビルで父は発見される。
そこは「アルゼンチンババア」と呼ばれる変わり者婆さんの家。
やっと会えたみつこだったが、父は何故か家に帰るのを拒否する。
そして、みつことババアの戦いは始まったのです。
よしもとばななの同名小説の映画化。
みつこ(掘北真希)の青春成長劇と見せかけて、
深い愛情ゆえの喪失感と戦う父(役所広司)が現実と向き合う物語。
ティーン向けよりも大人向けの映画だと思います。
わりと意地悪な展開で町の仲間が奥さんの墓石を持っていく、
当然、墓石を彫ることをこちらは期待するも、
でも悟は現実を受け入れずに墓石をすてようとする。
そんなお約束もひねくれもずらしていく展開が面白いです。
長い間ヒーロー然としていた役所広司は
最近くたびれた役が増えてきて先が面白そうです。
鈴木京香がババア役ということで話題になりましたが
これはそれほど違和感無し。
逃げ込んだアルゼンチンババアの家は現実逃避の場所。
曼荼羅作りも愛妻の死から逃げるためにすぎません。
例えば曼荼羅は仏教系なのに
食事時にはキリスト教式の祈りを捧げるなどの適当さ。
その女々しさに共感し愛しく感じてしまうのは私が老けたのでしょうか?
10代なら絶対に苛々していたと思いますよ。
ずっしりはこない、心湧き躍る興奮でもありませんが、
鑑賞後ちょっと良い感じになる一作。
ラストの青空の下のアルゼンチンビルの屋上で
みつこが「すーっ」と深呼吸する、
まさにそんな、季節の風と草の匂いを
気持ちよく感じることに近い感覚を得ました。
気がつけばもう5月ではないですか。GWなんぞ関係ない職場ですけど。
その5月は鑑賞予定映画は少ないですが検定が再びある、
イベント多き月になっています。
そんな今日は時期を過ぎましたが「アルゼンチンババア」について。
<物語>
母が死んだ日、石屋職人の父、悟が失踪。
高校生みつこの日常は劇的に変化する。
しばらく経って町外れの遺跡のような古ビルで父は発見される。
そこは「アルゼンチンババア」と呼ばれる変わり者婆さんの家。
やっと会えたみつこだったが、父は何故か家に帰るのを拒否する。
そして、みつことババアの戦いは始まったのです。
よしもとばななの同名小説の映画化。
みつこ(掘北真希)の青春成長劇と見せかけて、
深い愛情ゆえの喪失感と戦う父(役所広司)が現実と向き合う物語。
ティーン向けよりも大人向けの映画だと思います。
わりと意地悪な展開で町の仲間が奥さんの墓石を持っていく、
当然、墓石を彫ることをこちらは期待するも、
でも悟は現実を受け入れずに墓石をすてようとする。
そんなお約束もひねくれもずらしていく展開が面白いです。
長い間ヒーロー然としていた役所広司は
最近くたびれた役が増えてきて先が面白そうです。
鈴木京香がババア役ということで話題になりましたが
これはそれほど違和感無し。
逃げ込んだアルゼンチンババアの家は現実逃避の場所。
曼荼羅作りも愛妻の死から逃げるためにすぎません。
例えば曼荼羅は仏教系なのに
食事時にはキリスト教式の祈りを捧げるなどの適当さ。
その女々しさに共感し愛しく感じてしまうのは私が老けたのでしょうか?
10代なら絶対に苛々していたと思いますよ。
ずっしりはこない、心湧き躍る興奮でもありませんが、
鑑賞後ちょっと良い感じになる一作。
ラストの青空の下のアルゼンチンビルの屋上で
みつこが「すーっ」と深呼吸する、
まさにそんな、季節の風と草の匂いを
気持ちよく感じることに近い感覚を得ました。
太陽が燃えている限り ― 2007年05月06日 11時21分36秒

皆さんGWは満喫しましたか?
私はサービス業なので働いてました(多少の怨み節)。
サンクスの柏餅を見て子供の日を思い出したぐらいですから。
さてGW終了後に2連休が来ましたのでブログ更新。
もう更新怠け放題ですが名物として。
「ワイルドアームズ・アルターコード:F」やら
「かまいたちの夜x3」やらゲームに浮気していました。
そんなこんなで映画は「サンシャイン2057」です。
「28日後」「トレイン・スポッティング」の独特のカラーを放つ
ダニー・ボイル監督最新作SF映画です。
真田広之も出てますよ。
<物語>
西暦2050年、太陽が原因不明のエネルギー低下を示す。
地球の気温が低下し異常気象が起こり始め動植物の活動にも
ダメージが及び、当然ながら人類の危機が迫っていた。
人類は巨大な核爆弾を製造しそれを宇宙船で太陽に投下し、
太陽の核反応を促す、太陽の再生を計画。
しかし、その第一号宇宙船イカロス号は消息を絶つ。
そして7年後2057年。各国の精鋭を集めたイカロス2号が旅立つ。
真田広之を目当てに観に行くと中盤で出番が無くなり気が抜けます。
艦長とか責任ある地位を任せられるとアブナイです。
しかしながら仲間を救い彼らに使命を託し、
尚且つ太陽の神性に触れた男という上手いポジションです。
神性、というのは物語に登場する太陽がなんとも神秘的に描かれるため。
クルーの一人は既に太陽の魅力にとりつかれており、
皆で太陽を鑑賞するシーンも神に対面するような印象です。
後半に登場するもう一人もこの点に深く関わります。
SFの演出的には「専門家達が能力の見せ場無しに死ぬ」とか
「消息を絶った宇宙船の突然の帰還」とか、
どこかで見た感じのものが多いですが別のところで評価しましょう。
SF作品は科学的考証を煩くチェックされるものの、
どこかで大嘘をつかなければ作品として成り立ちません。
ダニー・ボイルの過去の作品「28日後」などもそうでした。
実際の研究者達に細かいリサーチをとった本作もです。
結局のところ太陽が蘇るか否かは「賭け」でしかない、
と早い段階で結論を出しています。
つまりそれだけ未だ謎多き宇宙であり巨大な力であるわけです。
SFを描こうとしたのではなく、太陽に対して生き物が感じる
畏怖や憧れを描こうとしたのではないでしょうか。
宇宙に対する神秘性が溢れる「2001年宇宙の旅」。
それを思わせるシーンがラストシーンにあります。
ミッションを完了し輝きを増す太陽、
その光が冷え切った地球を照らす朝を迎える、
平原に立つ3枚の石版?からは、あのモノリスを連想します。
ここだけを見ても作品が神秘的な雰囲気を持っていることを感じます。
共通のエネルギー・太陽を蘇らせるために
全ての核エネルギーを捨てた人類。
その未来が明るい朝を迎えるのかどうか。
なんとも啓示的であり皮肉的にも感じる締めくくりです。
私はサービス業なので働いてました(多少の怨み節)。
サンクスの柏餅を見て子供の日を思い出したぐらいですから。
さてGW終了後に2連休が来ましたのでブログ更新。
もう更新怠け放題ですが名物として。
「ワイルドアームズ・アルターコード:F」やら
「かまいたちの夜x3」やらゲームに浮気していました。
そんなこんなで映画は「サンシャイン2057」です。
「28日後」「トレイン・スポッティング」の独特のカラーを放つ
ダニー・ボイル監督最新作SF映画です。
真田広之も出てますよ。
<物語>
西暦2050年、太陽が原因不明のエネルギー低下を示す。
地球の気温が低下し異常気象が起こり始め動植物の活動にも
ダメージが及び、当然ながら人類の危機が迫っていた。
人類は巨大な核爆弾を製造しそれを宇宙船で太陽に投下し、
太陽の核反応を促す、太陽の再生を計画。
しかし、その第一号宇宙船イカロス号は消息を絶つ。
そして7年後2057年。各国の精鋭を集めたイカロス2号が旅立つ。
真田広之を目当てに観に行くと中盤で出番が無くなり気が抜けます。
艦長とか責任ある地位を任せられるとアブナイです。
しかしながら仲間を救い彼らに使命を託し、
尚且つ太陽の神性に触れた男という上手いポジションです。
神性、というのは物語に登場する太陽がなんとも神秘的に描かれるため。
クルーの一人は既に太陽の魅力にとりつかれており、
皆で太陽を鑑賞するシーンも神に対面するような印象です。
後半に登場するもう一人もこの点に深く関わります。
SFの演出的には「専門家達が能力の見せ場無しに死ぬ」とか
「消息を絶った宇宙船の突然の帰還」とか、
どこかで見た感じのものが多いですが別のところで評価しましょう。
SF作品は科学的考証を煩くチェックされるものの、
どこかで大嘘をつかなければ作品として成り立ちません。
ダニー・ボイルの過去の作品「28日後」などもそうでした。
実際の研究者達に細かいリサーチをとった本作もです。
結局のところ太陽が蘇るか否かは「賭け」でしかない、
と早い段階で結論を出しています。
つまりそれだけ未だ謎多き宇宙であり巨大な力であるわけです。
SFを描こうとしたのではなく、太陽に対して生き物が感じる
畏怖や憧れを描こうとしたのではないでしょうか。
宇宙に対する神秘性が溢れる「2001年宇宙の旅」。
それを思わせるシーンがラストシーンにあります。
ミッションを完了し輝きを増す太陽、
その光が冷え切った地球を照らす朝を迎える、
平原に立つ3枚の石版?からは、あのモノリスを連想します。
ここだけを見ても作品が神秘的な雰囲気を持っていることを感じます。
共通のエネルギー・太陽を蘇らせるために
全ての核エネルギーを捨てた人類。
その未来が明るい朝を迎えるのかどうか。
なんとも啓示的であり皮肉的にも感じる締めくくりです。
教養とユーモア ― 2007年05月07日 23時57分32秒

フランスは大統領選に沸いていますがイギリスも首相交代時期へ。
アメリカもいよいよブッシュの終わりを迎えてと、
いわゆる9.11通過時代の交代を感じます。
それにしても主要国でわざわざ時期が重なるのも面白い。
さてそれとは関係ありませんが本日は、第2次大戦の戦火の中の
イギリスの実話を描いた映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」。
ヘンダーソン夫人演じるは近年の007の上司「M」役でお馴染み
英のべテラン女優ジュディ・デンチ。
本作でアカデミー賞主演女優賞ノミネート。
<物語>
1937年イギリス。夫を亡くし遺産を相続したヘンダーソン夫人は
第二の人生として劇場経営を始める。
第二次世界大戦下に実在し、戦火に襲われても
決して閉館することのなかったウィンドミル劇場の誕生である。
支配人ヴァンダムの手腕の下で順調に始動するかに見えたが、
直ぐに他の劇場との競争で困難に陥る。
その時、ヘンダーソン夫人が提案した斬新な企画は、
イギリス初のヌードレビューショーであった。
ヌードを初公開した劇場の話といってもエッチな話ではありません。
それはヘンダーソン夫人の密かな思いを込めた贈り物だからであり、
またヌードをビーナス像の如く美しいものとして讃えているから。
その舞台のシーンは頻繁に挿入されますが
欠片もエッチなものではなく、また退屈でもありません。
舞台ではもう一つ他に当時の戦況に対する思いを感じられます。
兵隊さんへの励ましが戦意高揚に見えるも、そこにも贈り物の意味が。
女性の美しさを知ることなく死んでいく若者達。
裏を返せば戦争に向う若者への「行くな」と言いたい哀しい想いです。
実現のために奔走するヘンダーソン夫人の性格が実に痛快。
いきなり未亡人から始まるのでどんな人生を送ってきたかは
わかりませんが、裁縫や婦人会ではできない性分、
自家用機で自在に空路を飛び回る、
厳しい検事を話術とユーモアで巧みに説得してしまうなど、
「彼女のように年をとりたい!」と思うには十分です。
戦友ヴァンダム氏と文句を言い合いながらもダンスを踊るラストは
教養と分別と余裕や経験が丁度良い関係を生む、
恋愛や友情とも表せない、大人同士の素敵なシーンです。
表現が難しいですが、こんなパートナー同士になりたいと思います。
近年は古き時代を舞台にした「ドリームガールズ」や
「ザ・プロデューサーズ」などがヒットしましたが、
古き善きミュージカル映画の魂もクラシック映画の独特の風格も
一番継承したのはこの作品ではないかと思うくらい
鑑賞後の印象は昔の作品に近いものがあります。
なんとも言えない上質の雰囲気に浸ってみてはいかが。
アメリカもいよいよブッシュの終わりを迎えてと、
いわゆる9.11通過時代の交代を感じます。
それにしても主要国でわざわざ時期が重なるのも面白い。
さてそれとは関係ありませんが本日は、第2次大戦の戦火の中の
イギリスの実話を描いた映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」。
ヘンダーソン夫人演じるは近年の007の上司「M」役でお馴染み
英のべテラン女優ジュディ・デンチ。
本作でアカデミー賞主演女優賞ノミネート。
<物語>
1937年イギリス。夫を亡くし遺産を相続したヘンダーソン夫人は
第二の人生として劇場経営を始める。
第二次世界大戦下に実在し、戦火に襲われても
決して閉館することのなかったウィンドミル劇場の誕生である。
支配人ヴァンダムの手腕の下で順調に始動するかに見えたが、
直ぐに他の劇場との競争で困難に陥る。
その時、ヘンダーソン夫人が提案した斬新な企画は、
イギリス初のヌードレビューショーであった。
ヌードを初公開した劇場の話といってもエッチな話ではありません。
それはヘンダーソン夫人の密かな思いを込めた贈り物だからであり、
またヌードをビーナス像の如く美しいものとして讃えているから。
その舞台のシーンは頻繁に挿入されますが
欠片もエッチなものではなく、また退屈でもありません。
舞台ではもう一つ他に当時の戦況に対する思いを感じられます。
兵隊さんへの励ましが戦意高揚に見えるも、そこにも贈り物の意味が。
女性の美しさを知ることなく死んでいく若者達。
裏を返せば戦争に向う若者への「行くな」と言いたい哀しい想いです。
実現のために奔走するヘンダーソン夫人の性格が実に痛快。
いきなり未亡人から始まるのでどんな人生を送ってきたかは
わかりませんが、裁縫や婦人会ではできない性分、
自家用機で自在に空路を飛び回る、
厳しい検事を話術とユーモアで巧みに説得してしまうなど、
「彼女のように年をとりたい!」と思うには十分です。
戦友ヴァンダム氏と文句を言い合いながらもダンスを踊るラストは
教養と分別と余裕や経験が丁度良い関係を生む、
恋愛や友情とも表せない、大人同士の素敵なシーンです。
表現が難しいですが、こんなパートナー同士になりたいと思います。
近年は古き時代を舞台にした「ドリームガールズ」や
「ザ・プロデューサーズ」などがヒットしましたが、
古き善きミュージカル映画の魂もクラシック映画の独特の風格も
一番継承したのはこの作品ではないかと思うくらい
鑑賞後の印象は昔の作品に近いものがあります。
なんとも言えない上質の雰囲気に浸ってみてはいかが。
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