秘境に生きる2006年07月12日 23時40分16秒

今日の作品は中国奥地の秘境・ココシリで密猟者と戦う
有志の山岳パトロール隊の生き様を
実話を基にして描いた映画「ココシリ」です。


中国青海省チベット高原の秘境ココシリ。
山岳」パトロール隊の隊員がチベットカモシカの密猟者に殺されたという
事件を追うため、ジャーナリストのガイは単身現地に向う。
隊員達とともに原野を走り犯人を捕まえ、密猟の黒幕と毛皮の
取引ルートを暴こうとジャーナリスト魂に燃えていた彼を待っていたのは
自然の脅威と過酷な現実であった・・・・。

ココシリのデータ:
中国青海省チベット高原、海抜4700Mの無人地帯。
ここに生息するチベットカモシカの毛皮は高級毛織物「シャトゥーシュ」
の原料となるため、密猟が横行した。
20年の間に100万頭が1万頭に減少し、
有志の山岳パトロール隊が結成された。


巨大な黒幕を想像する私たちに、
事件の真相は意外な人々によって語られます。
金も物資も無い、人手も足りない中で戦い続けた隊員達と対面した
犯人達もまた同様の事情を抱えていたわけです。
そこは中国の果ての地であり、チベット高原という微妙な地区。
厳しい自然だけではなく、複雑に揺れ動く場所でもあります。
中国辺境での特に国境や自治区付近のことは言うまでもありませんが、
政府の方で早いうちにもっと援助があれば、と思わざるを得ません。

自然の中で生きることが全員を強くするわけではない、
自然の中に入り込んだ文明が小さな影響を与えて蝕んでいく。
砂嵐やブリザードの中に耐える彼らにさらに経済的困窮が被さる。
パトロール隊も密猟者も生きるために戦っているのです。


その厳しい現実の中で生き抜いている彼らの力の源。
ヒントのようなものがあちこちに散りばめられています。
原野に捨てられた、乱獲されたチベットカモシカの死体、
その全てを供養し祈りを捧げる隊員たち。
捕らえた犯人達をやむ得ず極寒の原野に放つときに贈る、
「御加護を」という不思議な言葉。
その端々に彼らの宗教観、大地と人間への敬意が感じられます。

正義などではなく先祖と神々くれた遺産を守るための無給の戦い。
それは文明と自然の戦いでもあるのかもしれません。

何か、ネイティブアメリカンの神話にも似た様な、
原始の人間ドラマにも感じられる作品なのです。
これが現地ロケだと言うのだから凄いです。
役者の演技でも監督の演出でもなく、
もはやそこに生きる人になっているくらいの力強さを感じました。
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