それがマルセイユだ・・・ 野沢那智さん追悼2010年11月01日 23時07分53秒

10月30日の結婚式から帰宅してネットを開くと飛び込んできたニュースが、
野沢那智さんの訃報であり大いに驚く。

2009年から体調が悪くなり今年の夏に肺がんが発覚して、
とのことだから本当に突然と言ってもいい。
72歳だったそうです。


野沢那智さんは大好きな声優さんでした。
舞台演出、俳優、ナレーションと活躍は広いのですが、
やはり僕がその技に多く出会ったのは声優としての野沢さん。

どの役が皆は好きだったのだろう。
アラン・ドロンやC3POは訃報記事でも取り上げられ、有名な役。
しかしながら、僕にとっては世代的にどちらもあまり触れていません。


僕の体験の中で聴いた野沢さんを中心にあげていくと、
アラン・ドロンは2001年のドロン復活作「アラン・ドロンの刑事物語」が
NHK総合の深夜に放送された際の吹替えで声を聞きました。
「そぉれがマルセイユだ」という最後の台詞が耳に残る。

洋画吹替では「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリス、
「ザ・シークレットサービス」「トゥルー・クライム」の
クリント・イーストウッドが最近でも放送されるし、
アル・パチーノの「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」を聞きました。
「ダイ・ハード4.0」も野沢さんが担当したヴァージョンがあるそうですが、
亡くなった日に土曜プレミアムで放送していた「ダイ・ハード4.0」は
野沢さんではないヴァージョンでした。

アニメではなんと言っても1982年に放送された寺沢武一原作のTVアニメ
「スペースコブラ」の主人公・コブラこそがベストだと思います。
コブラを知らない人はルパン三世でSFを想像して頂ければ大体良い。
大野雄二と羽田健太郎の音楽に乗せたコブラの野沢調子に誰もがシビレたはず。
コブラ スペースパイレート Blu-ray BOX
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そんな名調子の数々よりも僕にとって一番印象深い野沢さんは、
セガサターンで1997年に発売されたゲームソフト
「EVE ~burst error~」(イブ・バーストエラー)に登場したキャラクター、
甲野本部長に他なりません。
日本の秘密諜報機関と設定されている内閣調査室に所属するこの御仁は、
飄々とした性格のオカマっぽい語り口だが、いざと言うときに頭は切れる。
名言は真顔で言う「僕には妻も愛人もいるんだよぉ」。
ダンディを自称するこのキャラクターのユーモアに僕は惚れ込み、
以来、野沢さんと言えばこのキャラターが真っ先に思い浮かぶ。
余談ですが、後の「EVE」作品では甲野本部長は
かつてのアラン・ドロンの様な帽子とコートで登場する場面があったと思います。


オカマっぽいといえば野沢那智さんの声質・演じ方には独特の色気がある。
そこにエスプリのきいた台詞や、ウィットな会話が重なることで類まれな魅力になる。
「ザ・シークレットサービス」の以下の様な一幕が僕のお気に入り。
「奴にはケレン味がある」
「ケレン?」
「ウケを狙うってことだ」
「知ってるわ」
「そうか?オレは辞書で調べたぞ」


近年はもはや野沢さんがキャラを演じるというよりも
野沢さん自身がキャラとして確立してるという風でした。
そんなタイプは今は亡き山田康雄、塩沢兼人、
存命ならば玄田哲章、千葉繁、若本規夫、大塚明夫あたりでしょうか。
それは役柄と演じ手をイコールで結び、魂を吹込む存在となります。

そんな声優さんが今の若手陣にいるだろうか。
野沢さんの先輩は肝付兼太(スネ夫)、青野武(初代ピッコロ大魔王)。
名前を見て声を聞くと安心する声優さん達も随分年を重ねてしまいました。


野沢さんが代表を務めた専門学校に生前の写真があります。
僕にはこの顔がアル・パチーノに見える。

■PAC パフォーミング・アート・センター
 http://www.pac-ac.jp/profile.html


野沢さんは僕が憧れる喋り方をする人たちの一人であり、
少なからず目指したいと思っていることは間違いありません。

〈ANIMEX 1200シリーズ〉(16) スペースコブラ オリジナル・サウンドトラック
〈ANIMEX 1200シリーズ〉(16) スペースコブラ オリジナル・サウンドトラック

亡くなったこの日、僕はカラオケで「コブラ」を歌っていた。
そのときはもちろん訃報を知らなかったのですが、
今はあの熱唱を野沢さんに捧げたいと思います。

憧れの巨星、野沢さん。安らかなる眠りをお祈りいたします。
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