一滴の辛味2008年06月01日 22時05分17秒

トム・ハンクス主演、ジュリア・ロバーツ共演
「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」を鑑賞。
共演のフィリップ・シーモア・ホフマンは
この作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされています。


<物語>
テキサス州出身の下院議員チャーリー・ウィルソンは、
酒と女と遊びが大好きでドラッグも(こっそり)やってしまう男。
そんな彼がアフガニスタンへのソ連侵攻に関心を示した。
アメリカ政府はソ連の侵攻を好ましく思わないが、
表立っての援助には積極的ではない。
しかし、軍の予算に意見する権限と、大富豪とのコネを持ち、
そして対ソ連の実行部隊との関係がある位置に立っていた
チャーリー・ウィルソンが動いた時、世界は動き始めた。


最初には少々嫌な予感もしたものです。
何しろ話の時代は1980年代初頭のソ連アフガニスタン侵攻。
アメリカが影でアフガンを支援しソ連を撤退させたが、
結果、その地域からテロ組織が生まれ、
ビン・ラディンを育てたと意見された戦争だからです。

まさか、この期に及んでアフガンへの恩を売ろうとしているのでは。
ブッシュ政権終末期だけに、などと内心ハラハラしていたものの、
最後は毒を吐いて終わったので変な安堵を感じたものです。

しかし事実、アメリカが支援しなければアフガンは最後には
ソ連に取り込まれただろうし、そうなれば
世界のパワーバランスは現在とは大きく異なっていたでしょう。
それは9・11テロが起きなかった代わりに、
別のおそろしいものを生んでいたかもしれません。
仮にチャーリーが唱えたアフガンの復興支援が直後から行われ、
ある程度の実を結んだとしても。

その論議は正に、ホフマン演じるCIA局員が全てを終えた後に、
チャーリーに話す「禅の話」と同じことでしょう。

だがしかし、良いと思っていることが思わぬ結果で返って来る、
また、その逆もあり得る、それは常に心に留めねばなりません。
そして、次はもっと上手くやる、と教訓にする心構えは必要です。
無論、次が無い重大な結果を招くこともあります。
ですが、それもまた禅問答となっていくのです。

映画の宣伝が緻密に仕掛けられたものかはわかりませんが、
いかにもコメディタッチのハートフルなヒューマンドラマと思うと、
かなり初めの方から騙される(良い方向に)ことに気づきます。
思えば最初から社会派一色で染め上げるよりも、
多くの観客に観やすくなっているかもしれません。
(そして最後に軽く突き落とされる快感)

冒頭のシーンとラストシーンを
チャーリーが表彰される同じシーンにして、
顛末を知らされる前と後では全く異なる印象とするのも
技がきいた演出となっていて考えさせられます。
この映画は様々な円環を描いています。

角笛は遥か海原へ2008年06月12日 00時26分00秒

職場の女の子のリクエストで
ひさびさに絵を描いてみました。
休筆してから約3年半ぶり。

しかもそのリクエストのお題が「ナルニア国物語」。
ガンダムとかの落書きはちょこちょこ描いて見せていましたが、
こりゃ本気にならねばと仕上げた絵が今日の画像です。
まー、本気と言ってもアマチュアですからご容赦を。

もしこの画像が突然消えたら、
ディ○ニーから訴えられたと思ってください。

ところで女の子を可愛く可愛く描こうとしていくと、
気がつくとほとんどメイクさん状態になっていますな(笑)。
それもオカマの。ちょっと薄めにピンクを塗ろうかしら、なんて。


映画の「ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛」
も既に鑑賞いたしました。

第1章と比べれば格段に印象はよくなっていました。
1章はディズニー映画の弱点である、
流血等を直接的に見せられないという制約にしばられたか、
戦闘描写もなんだか中途半端でモヤモヤしたものでしたし、
最初に登場する森の木々や氷の城等のセットに至るや、
もういかにも作り物という、この時代にこの大作に対して
なんとチープなと幻滅した次第でしたが、
これらをほぼ全て克服。

暴君と一騎打ちを繰り広げる英雄王ピーター、
背水の陣の覚悟で多勢を迎え撃つ新生ナルニア軍、
その他、夜襲の城攻め等の随所のアクションが
魅せるものに仕上がっています。

これは思うに「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズが、
最近のディズニーにしては珍しく、切った撃ったを
無理に逸らすことなく描き出し作品のヒットへ繫げたことを、
ディズニーも学んだのではないでしょうか。

そう言ったアクションだけではなく
4人兄弟の精神的成長とリンクしたドラマもまた印象深いです。
少年から大人になろうとする時に葛藤する想いと
全く同じ悩みを抱え、戦いに向かうピーターには強く共感しますし、
(青年の成長期はまさに全方向に対して日々戦いの思い)
雪の女王の誘惑を砕くのが、かつて弱さにつけこまれた
次男エドマンドであるのも「成長したなあ」と感心させられます。

かつて「スターウォーズ エピソード1」でLOVEが足りないなどと
言われていたことと思い出す程にこの作品もLOVEは不足だと
思いつつもスーザンとカスピアンの子供っぽい恋慕は初初しい。
そして誰より強く信じる心を持つのは末っ子のルーシー。
強い力は無くともアスランの復活を信じ続け、
遂にめぐり合うときは離れ離れの父子の再会にも似た感慨があります。

欲を言えば肝心のカスピアン王子の活躍が印象に残らず、
なんだか頼りなく見えるのが残念ですが、
彼の活躍は次作「第3章:朝びらき丸 東の海へ」で
描かれることでしょう。


今回は趣向を変えて映画のイラストにしてみました。
たまに絵にしてしまうのもいいかもしれませんな。
「まんが道」で満賀道雄がやっていたみたいに。

談志師匠2008年06月14日 01時11分46秒

6月13日は電力ホールで開かれた
「立川談志独演会」を鑑賞いたしました。

談志師匠の破天荒な芸風はもちろん好きですが、
志らく、ビートたけし、太田光等々、
私の好きな芸人の皆様の起源を辿る旅でもあります。

ガン告知からどれほど経ったでしょうか。
煙草は止めない、という宣言を聞いたのは遥か昔の様に思えます。
最近スクリーンでお姿を見たのは映画「歓喜の歌」。
師匠の活躍を見ていると、
人間の精神力の計り知れぬ強さを信じたくなります。

しかし、会場に行って見るとなんと
「談志師匠が体調不良のため、演目の変更となりました」
とのお知らせが。

本当は独演会ですから一人で3つ4つと披露する予定でしたが、
師匠は挨拶と最後の一席だけとなり、
弟子の立川談修、談笑の落語、
そして松本ヒロのパントマイムとの入替りとなりました。

さて、談修、談笑はともかくとして、松本ヒロとは何者か?
私は今日まで彼の存在を知りませんでした。
でも、今日でファンになりました。機会あれば見てください。
テレビでは観ることは今のところまず無いでしょうから、

なぜってネタが危険ですから。
放送禁止スレスレです。太田光をもちっと危険にしたぐらい。
タモリが昔、昭和天皇のマネをして方々から言われたようなネタです。
地方講演があったら是非行くことをお勧め。
談志師匠が推すわけがよく分かります。
とりあえず、WikiでもGoogleでも検索してください。


私としては色々な人の芸が楽しめる一門会となった方が
見聞として良い機会になったと肯定していますが、
談志師匠の掠れ声を聞いたときは、本当に心配になりました。

腿から下の感覚が全く無いと言いながらも
「もしかすると談志の最後に立ち会うかもしれませんよ」
「ドキュメンタリーとなるかもしれません」
と病状をも笑いとし、ジョークを連発すれば、
会場はドッカンドッカン笑いが起こります。
私も期待以上に笑わせていただきました。

ですが、私は奇妙な感覚に陥っていました。
もし、本気で最後かもしれないと思っているのならば、
最後の一席となるこの演目を選んだ理由は?
マシンガンのように繰り出すジョークの数々が、
一回でも多く笑わせたいと言う最後の抵抗なのか?
いや、でも談志師匠はそんなロマンチストなのだろうか?

「バカヤロウまだ殺すな」などと怒鳴られそうなことを考えていると、
なんだか、壇上にいる師匠がなんだか神々しい存在に見えました。
太田光が、落語のサゲに死の退き際を感じる、
というような話をチラリと言っていたのが思い起こされました。


羽田健太郎先生のコンサートに行った、
その年内に先生が逝去されたことも思い出しましたが、
談志師匠、絶対にまた仙台に来てください。
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